Vol.421 08年10月11日 週刊あんばい一本勝負 No.417


なんとなく大きな山は越えられそう……です

もう1週間が過ぎたのか。早いのか、遅いのか、さっぱりわからない。
1週間前、紅葉真っ盛りの秋田駒ケ岳―乳頭山の縦走をした。約7時間の山歩きで、「もっと歩き続けていたい」と思うほど楽しかった。それがわずか1週間前の出来事なのに、もう遠い過去のことのように感じている自分がいる。

遊びはともかく、一日でこなせる仕事の量が、はっきりと減少している。10年前だったら半日でできたことが2日はたっぷりかかる。そのぶん仕事は丁寧になってはいるのだが、時間がかかりすぎはまちがいない。これは改善できるような問題ではないので、現実として認めていくしかない問題なのだろう。

今週末に「『本の雑誌』炎の営業日誌」(杉江由次著)ができてきて、どうにか大きな山はこえた感じ。もうひとつ塩野米松さんの長編小説『ふたつの川』が残っているが、これも山はこえて月末までには刊行できる予定だ。どちらも編集段階から入れ込んで製作してきたものなので、ここが終われば少しは気を抜いて、フラフラ遊びにいけるかも。

11月は今のところ、全国登山口情報会『東北登山口情報500』と深野捻生『栗駒山紀行』の大冊2本と、これもけっこう大部な大坂高昭『日めくり秋田歳時記』の出版を予定している。いずれもA5判やB5の大きな本でページ数も400ページ前後、値段もけっこうする。いろんなタイプの本を出しながら、これからの時代に対応できる本造りを模索しているところです。

そんなわけで中旬から大きな山を抜け、少し余裕ができる予定なので、山歩きだけでなく、知らない街をフラフラしたり、お世話になっている人といっぱいやったり、ひさしぶりに東京にも出てみたいと思っています。
(あ)

No.417

夏から夏へ(集英社)
佐藤多佳子

 北京オリンピックはほとんど興味がなかった。野球の星野監督ばかりが目立ち、そんな彼の言動に不信感があった。彼だけをスターにしようとする出来イベントは見たくなかった。だから結果的に野球がボロ負けしたのは、けっこうなカタルシスで、偏屈といわれるかもしれないが、溜飲は下がった。星野という人は運がよく時代のスターになっただけで、詩人のねじめ正一に言わせれば「野球より前に出る人」である。スポーツよりも人生談義や政治的発言、TVコマーシャルなどの出演のほうが似合っている。
 それはともかく北京オリンピックで唯一感動したのは陸上男子400メートルリレーだった。これだけは文句なしに大感動、涙が出そうになった。バトンのアンダーパスのスムースで美しい受け渡しにもドラマがあった。100走のチャンピオンがリレーでも勝てるわけではないのがバトンパスの技術の差でよくわかった。その4走の日本リレーメンバーの1年間を追ったのが本書。出版は北京オリンピックとほぼ同じ時期だから彼らの銅メダルの快挙は、この本では触れられていない。にもかかわらず、あえてこの時期にこの本を出したのは、北京の結果などどうでもいい、と言い切れる濃い中身が詰まっている自信からだろう。

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