Vol.417 08年9月13日 週刊あんばい一本勝負 No.413


夏バテ・新刊・ミニコミ雑誌

 なんとなくパッとしない1週間だった。ふりかえると。週末に登った真昼岳は途中からドシャ降りで引き返したし(里に下りたらピーカン)、仕事もずっと頭痛で、いまいち調子が出なかった。ま、こんな時もある。
 全般的に身体に疲れが溜まっているのは間違いない。夏バテっていうやつ。
 夜の散歩も1日おきで、さらに9月に入って急に蒸し暑くなり、散歩後に冷たい飲み物をとり続けたのも疲れを呼び込んだ要因。夜の散歩はipodで落語を聴いているので楽しみなのだが、それでも2日に1回に散歩を減らさざるを得なかった。身体が悲鳴をあげているのだ。それにしても「志の輔」の創作落語は面白い。「みどりの窓口」や「はんどたおる」なんて何度きいてもおかしい。枝雀は笑いのつぼがパターン化しているので、ちょっと飽きてくるが、立て板に水の大阪弁がくせになる。創作落語の面白さをこの2人ではじめて知った。
 新刊も2本できてきた。「秋田おそがけ新聞」と「村に生きる」、それと増刷も1点。「おそがけ」はうまくすれば大化けするかもしれない本だが、人気ブログの単行本化で、ブログの人気と単行本の売れ行きはなかなかリンクしないのも、これまでの経験から十分承知はしているのだ。「村に生きる」もうちでは珍しいマンガ本。著者は二冊の著作のある杉山夫妻なので、この点は自信があるのだが、これもまた漫画の読者についての予備知識が版元にほぼゼロ、というのが怖いところだ。両著ともその面白さには自信満々なのだが、それが売れ行きに結びつくのか付かないのか、難しいところだ。
 出版界に詳しい友人の話だと、この秋は業界にとってかなり厳しい季節になりそうだという。印刷所や書店、出版社や取次店など、かなりの数が倒産必至だそうだ。だんだん他人事ではなくなってくる感じ。
 そういえば、いっけん華やかで、売れてそうに見える秋田のタウン誌なんていうのも、実は広告が集まらず、部数は長期低迷で、経営者が裏でこっそり変わっていたりするケースも少なくないのだそうだ。いいときは県内の大手企業が傘下におさめ利用し、経営が思わしくなるとすぐに手放そうとし、水面下ではいろんなゴチャゴチャがあって、これもまた時代の先が見えてしまった斜陽若者メディアに分類されている産業だという。興味がなかったので知らなかったが、紙の広告媒体に未来がないのは当然だろうね。いやはや。
(あ)

No.413

食のほそみち(幻冬舎文庫)
酒井順子

 トイレに数冊の本を置いている。そのときの気分によって短編小説を読んだり、エッセイを拾い読み、雑学コラムの類も、いい。なかでもエッセイ集に手が伸びる確率が高いのだが、「トイレ本に最適だな」とおもっても、実際に置いて見ると、ほとんど読まない本も少なくない。トイレ本には東海林さだおのエッセイのような本が理想的なのだが、彼の本ばかり読んでるわけにもいかない。
 そこで酒井順子の登場である。東海林よりひねりがきいて、論理的で、文字も詰まっている。日常に題をとったエッセイが多いのに外れがほとんどない。多くの人が共感できるテーマを選んで、文章や内容に一工夫が施され、笑いのつぼははずさない。本書には「稲庭うどんのカルボナーラ風」というエッセイがある。秋田の温泉旅館で出てきた一品には、「私は単なる温泉旅館の料理人ではないのだ。料理に対して常に創意工夫を忘れない、こだわり派なおだ!」という料理人の気合というか自己主張が感じられるが、酒井はあっさりと「できればまったくスタンダードな、つゆをつけて食べる稲庭うどんを食べたかった」と嘆いてみせる。このへんの間合いが絶妙で、どこにでもある風景、誰もが遭遇する事件とはいえない事件、いつも食べているのに問題にされない食べ物や作法などを、鋭く切り取ってみせる。スタバなどで使われるアルバイトたちのマニュアル用語への洞察はうなってしまう。

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