Vol.415 08年8月30日 週刊あんばい一本勝負 No.411


夏休み・弘前にて

 今年の夏休みは土日を入れて3日間。ということは「1日だけの夏休み」ですね。笑っちゃいます。それでも少々欲張って弘前に2日間宿をとり、藤里駒ケ岳、八甲田、八幡平と山三昧の3日間にしようと張り切ったのですが、初日の藤駒は登山道が雨のため不通、八甲田はものすごいガスで視界不良で登山は無理、3日目の八幡平は、「もういいや」と投げやりになり、けっきょくはどこにも登らずに、虚しく3日間(正味一日)の夏休みを終えました。
 2日目の弘前でこんなことがありました。駅前ホテルの傍にあるカジュアルなイタリア食堂で、スパゲッティでも食べようと入ったのですが、白のグラスワインを頼んだら、若いウエイトレスに「食後にしますか、食前にしますか」と訊かれました。食後にワインを飲む人もいるんですか、と意地悪をしたら、悪びれることなく「はい、います」と突っ返されました。
 その後、スパゲッティをすすっていると店内の電気が突然消えました。すわ地震か、とうろたえたのですが、店員たちは落ち着いたもので、5,6人が行列をつくりながら、私の隣の家族連れのテーブルに来て、やおらケーキのロウソクに火をともし、ハッピバースデーツー何とかちゃん、と歌いはじめました。そのセレモニーの間、店内は真っ暗。が、その祝ってもらう家族も歌う店員たちも、他の客のことは一切無視、露ほども気にかけていません。そのセレモニーが終わって電気が点されても、客にはなんのお詫びもなく、フツーの日常業務に戻りました。あぜんぼーぜん、文句を言う気力さえ奪われてしまいました。
 ま、そんなこんなで、またしても8月は泡のごとく消えてしまいました。20日ごろからは朝夕の風がめっきり冷たくなり、長袖もそろそろ、といった気分にさえなりかけています。1日しか夏休みが取れなかったことからもわかるように、なにかれと小さな用事が立て込み、あわただしい1ヶ月でした。9月はもっとあわただしくなりそうです。夏を乗り切って油断したあたりに疲れで寝込んだりする人も多いのだそうです。皆様もご自愛ください。
(あ)

No.411

こんな日本でよかったね(バジリコ)
内田樹

 内田の断筆宣言にはガックリきたが、その後も本は相変わらず出まくっている。「断筆」というのは編集者からの依頼執筆を「断る」という意味で、本人のブログから勝手に本をつくることは含まれていない。本書もそうした本のひとつで、編集者が「教育、家族、国家」というトピックスでブログ日記から文章を選び、勝手に編集したもの。副題に「構造主義的日本論」とあり、この本を編むさいの切り口になっている。
 学生時代、私の本棚にはレヴィ・ストロースやロラン・バルト、フーコやラカンの本があふれていた。当時から構造主義に完全にはまっていたのだが、構造主義がどんなものなのか、実は本を読んでもさっぱり理解できなかった。それから30年、彗星のごとく同時代人・内田樹さんが登場、構造主義を私たちの言葉でわかりやすく解説してくれた。ここにきて初めていろんなことがよくわかるようになったのである。構造主義とは「自分の判断の客観性を過大評価しない」こと。言い換えれば「自分の眼にはウロコが入っている」ことを認識する「構え」だ。時間的に後から来たものがすべてを支配する「歴史主義」とは正反対の位置で、「私とは違う時間の中に生きている人に、世界はどのように見えているのか、私にはよくわからない」という謙抑的な知性が、その特徴だと言う。なるほどよくわかる。

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