Vol.411 08年8月2日 週刊あんばい一本勝負 No.407


7月を振り返って

 なんだか、とんとん拍子に7月も終わってしまいました。「とんとん」なんていうと調子よさそうですが、なかなか、そうたやすく歳月は過ぎ去ってくれません。先日も秋田魁新報が夕刊廃止(10月から)を決めたようですが、このニュースに代表されるようにメディア産業(印刷・書店・出版・テレビなどひっくるめて)の衰退は目を覆いたくなるほどです。いずれ地元新聞社の経営危機なんていうのが、他のメディアからニュースとして流れてくる事態もありそうです。新聞やテレビのネックは、広告収入の減少と人件費の高さですから、2,3年後に半分まで給料が減ってしまった、なんていうこともありえない話ではありませんね。
 こちらも東北の大手印刷所系出版社がバタバタと倒産、とても他人事ではないのですが、大きな産業構造の地殻変動のただなかにいるのですから、この「災害」から一人悠然と逃れるなんて離れ業は難しいのかも知れません。政治や経済よりも、もっと大きな眼に見えない「流れ」、のような気がします。
 机に向かっていても希望のない未来を暗く想像をしがちなので、週末はこってりと山歩きに集中しています。先日はお隣・青森の岩木山に登ってきました(下山に9割のエレルギーを使う山なので、下山してきました、というほうがあたっています)。下山後、一人弘前で途中下車、夜は印刷所のKさんと蕎麦屋で一献。翌日は朝寝をして市内をブラブラ散策。津軽書房の高橋さんがご存命のころ、よく遊びに行っていた街ですが、亡くなってからはご無沙汰でした。昨夜とは別の美味しい蕎麦屋で昼酒を飲み、弘前公園でお昼寝して、電車にゆられて帰ってきました。このところ体調がよくなかったのですが、この弘前滞在中はなぜか身も心も晴れ晴れ、いい気持ちで過ごせました。街の空気があっていたのかもしれません。
 8月は「山の学校」は北アルプスに遠征します。小生は初心者なので、もちろん行きませんが一人でコツコツと秋田の山を楽しむつもり。中旬には「秋のDM出し」があり、ここまでは忙しそうですが、そのあとはまったくの白紙。もしポッカリ時間が空くようだったら、少し自分や会社の将来を見すえた、近未来設計図を描いてみようかな、など殊勝なことを考えています。
(あ)
岩木山の下りはきつい
弘前の一閑人という蕎麦屋で
弘前公園のババヘラは屋台

No.407

最後のおでん(寿郎社)
北大路公子

 ブログの世界には才能を持った人たちがひしめいている。たぶん。私はめぐり合ったことはないが、特に女性たちのブログには面白いものが多い、という人が多い。この本もブログから生まれた傑作。帯文にある「正編が売れなかったのに なぜか出たこの続編を 手にしたあなたは幸せ者。」というコピー。なかなか気がきいている。ちなみに正編は『枕もとに靴――ああ無情の泥酔日記』というもので、私もこちらは買っていない。書名的に「続」のほうがなんとなく面白そうだったから購入した。と同時に、なんとなくだが、この人はブレイクするのでは、という予感のようなものもあった。札幌発(著者版元も)なのでメジャーへの道はいっけん遠そうだが、この人材不足の出版界、才能ある女性コラムニストを必死でさがしている。すでに「サンデー毎日」でコラムの連載が始まり、角川書店の雑誌でも連載が決まっているようだ。版元では「ナンシー関なきあとの爆笑コラムニスト」として売り出したいようだが、それには少し毒が弱いかも。でもワタクシ的にはその「弱さ」が、好き。「泥酔」を売りものにしているのに、本書を読んでもそんなに酒癖が悪いようには感じられない。なんとなくホドホドで、けっこうセンスもいいし、斜めに構え具合も、つんのめるほどではない。それが弱点になる可能性もあるが、この1、2年が楽しみな、新人コラムニストであることは確かだ。

このページの初めに戻る↑


backnumber
●vol.407 7月5日号  ●vol.408 7月12日号  ●vol.409 7月19日号  ●vol.410 7月26日号 
上記以前の号はアドレス欄のURLの数字部分を直接ご変更下さい。

Topへ