Vol.410 08年7月26日 週刊あんばい一本勝負 No.406


体調不良・飛島の森・カモメの話

 この一週間、かなり体調が悪かった。疲れとか食当たりとか、夏バテとか飲みすぎとか、いろんな「要因」を考えてみたのだが(原因を考えるのが好きなのだ)、わからない。
 ショックだったのは楽しみにしている週末の山歩き(鳥海山・笙ヶ岳)に出かける車の中で気分が悪くなったこと。その不快感は山頂付近まで続き、やめるべきだったかなあ、と後悔が先にたった。下山時にはだいぶ気分がよくなったが、原因はわからない。数日後、今度は朝の起きぬけに吐き気。こんな経験もこれまでになかったことで、なにやら身体の中で不吉なことが起きているような……。よくよく考えてみたら、この症状は25年も前、十二指腸潰瘍で入院した時とそっくり同じ。そうか、潰瘍かも……。
 この半年あまり、やっかいな親族の問題で胃がキリキリする思いをしてきた。それに誘発され、仕事への情熱が失せたり、将来の不安といった ところまで悩みは被さってきてストレスの戦場のような精神状態になっていたのは事実だ。
 これが原因だったのか。原因がわかるといくぶん楽になった。楽にはなったが、胃カメラを飲むのはイヤだなあ。
 笙ヶ岳に登った後、ひとり別行動で酒田泊。翌朝早く飛島に渡った。海の飛島ばかりが観光的に喧伝されるが、飛島の森はけっこう奥深い。半日、海とは関係なく柏木山(57メートル)に登り、小物忌神社を訪ね、巨木の森を散策、島を2時間半かけて南北にゆっくり横断してきた。船には多くの観光客が乗っていたが、森の中では誰とも会わなかった。飛島の森はまちがいなく穴場。こんなに森が深いとは思わず油断して飲料水を持っていくのを忘れ、船着場にもどってきたらヘロヘロになったが、コンビニは無論、お店がほとんどないのもこの島の魅力だ。ふだん飲まないビールと飛魚で出汁をとったラーメンの昼食にも大満足。これで宿に帰って新鮮な魚で一杯やりたいところだが、そうも行かず最終便(2便しかない)で帰ってきた。
 その飛島の船着場で、ターミナルの床を掃除しているオバさんと親しくなり、話していたら面白い話を聞かせてくれた。あの宮城・岩手内陸地震の直後から、カモメの糞が急に粘っこくなって、洗っても落ちなくなった、というのだ。糞の量もいきなり増え、「地震を予知して、カモメの体調がヘンになったせいでは」とオバさんは言う。その粘っこくて大量の糞の異常現象は約一週間続き、今はピタリともとにもどったそうだ。このオバさんは船着場ターミナル掃除歴6年で「こんなことは初めて」だそうだ。う〜ん、面白い話だなあ。
(あ)
笙ヶ岳はニッコウキスゲ繚乱
飛島の森の中は廃車がゴロゴロ
飛島名物トビウオ出汁のラーメン

No.406

赤めだか(芙桑社)
立川談春

 旅行や山小屋泊まりのときは、ipodにいれた古典落語全集を聞くのが習慣のになってしまった。音楽よりも落語のほうが、環境の変わった状況で静かに眠りにはいれることがわかったからだ。落語の面白さまでわかったわけではないが、何度も聞いているといわく言いがたい味がある、というのはわかる。でもこちらも筋金入りの本本主義者。落語の良さを知るには「本を読むのが一番」という、どうしようもないタイプなのだが、本書はめっぽう面白かった。面白かったが、だからこの著者の落語CDを買おう、と思うほどの落語ファンではない。この本のあと師匠である立川談志の聞き書き自伝の本も出た。それも即購入し、こちらも抜群に面白かったが、やっぱり談志の落語CDを買おうとはしないのだから、どうしようもない。本当の落語ファンというには、ほど遠い。
 本書の面白さの一つは「話し言葉の(文字による)再現のうまさ」である。たとえば高田文夫がこんなふうに話かけてくる場面。「来ちゃったよ、馬鹿野郎。前座の会なんか観に来るのは初めてだよ。俺に歴史をつくらせやがって憎いねどうも。こっちの兄ちゃんは? 談春? フーン、しっかりやってくれよ、頼むよホント。お前ら何席ずつ演るの、二席ずつ? 災難だなァ。何が悲しくて前座の落語を四席も聴かなきゃならないんだ。俺そんなに悪いこと何かしたか」といった具合だ。文章がもう落語になっている。このへんが読みどころだ。

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