Vol.423 08年10月25日 週刊あんばい一本勝負 No.419


欲の皮の突っ張ったジジ・ババたち

公官庁のある八橋周辺を久しぶりに歩いてきた。県庁や市役所の用事が済めばさっさと帰って来るだけのほとんど縁のない地域で、運動公園にあるグラウンド地域には入ったことすらなかった。今回、このあたりを歩いてみようと思ったのは友人が近くに事務所をかまえたため。友人と昔からある中華料理屋で昼食後、一人ブラブラ周辺を歩いてみたが、なぜか知らない街を歩いているような違和感がまとわりついてはなれない。広面や手形地域から外に出ないせいもあるが、それにしてもこの違和感はなんだろう。アッそうか、道をすれ違う人たちも食堂や喫茶店の客たち、ベンチで寛ぐ男たちが例外なくネクタイをした人ばかり。自分の住む広面地区ではほとんど見ることのできない人種たちの街なのだ、ここは。違和感の正体は「まるで東京に来てしまったような場違い感」といったあたりにあったようだ。

わが広面に帰ると、街を貫いている大動脈・横金線のロードサイドの空き店舗にジジ・ババたちが群がっていた。これもまたいつもの風景。空き店舗を利用したマルチ商法、健康食品説明会なるサギ商法に、それとしらずに群がる人々である。ジジ・ババたちを甘いエサで釣って、たぶん高額の商品を売りつけるのだろう。たっぷり商売すれば、ものの数週間で店舗はまた空き店舗に変わる。たいした被害額でもないため社会問題にはならないが、集団催眠状態で効きもしない薬や食べ物を買わせ、ジジ・ババが何の効果もないことを知る頃には店そのものが消えている。マルチ商法や健康食品サギが社会問題になるたび、被害者であるジジ・ババたちがかわいそう、とマスコミはあおるが、日々近所でのこうした光景を目撃していると、「ジジ・ババたちの欲の皮のほうがよっぽど問題」と半畳のひとつも入れたくなる。だまされるのは自業自得。世の中そんなに簡単に病気が治ったり、楽して健康が手に入ることなど、ありっこない。そんな夢のようなことを簡単に信じてしまうジジ・ババには、だまされるのが一番の薬かも、とまで腹立たしく思う昨今です。
(あ)

No.419

じいちゃんさま(リトルモア)
梅佳代

 梅佳代の写真集はゼッタイにおもしろい。まず外れない、とエバってみても、実際に出版されている写真集は、名作『うめめ』と『男子』と本書の3冊のみ。みんな持っている。ときどき精神状態が落ち込んでいるとき、これらの写真集のページを開くと落ち込みはかなり是正される。まるでお薬のような本である。前向きで明るい気分になり、確実に元気がもらえるのだから、ヘタな医者に掛かるよりずっといい。この写真家のパワーはどこから来るものだろうか、よくわからない。本書は、93歳になる自分のおじいちゃんのスナップを10年分編集したもの。一枚一枚の写真が特別優れているわけではない。なのに圧倒的に「梅パワー」や「じいちゃんオーラ」がこれでもかと立ち上ってくる。じいちゃんのキャラクターもさることながら、それを撮る孫の梅佳代カメラマンの、ユーモラスで温かい距離感のようなものが全編に漲っている。が、撮っている梅佳代には、そんなたいそうな思惑はまったくなさそう。面白い、と思ったことに無意識にシャッターを押している。この無心さが魅力なのか。このテーマを選んだ時点で、私たち読者は、梅佳代に負けている。オビには「このじいちゃんにして梅佳代アリ」とあるが、「この孫にして、このおじいちゃんアリ」といったほうがいいかも。題名にわざわざ「さま」をつけたのは、どうしてなのかな。

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