Vol.453 09年5月23日 週刊あんばい一本勝負 No.448


味噌と鳥海山とターニングポイント

パソコンの待ち受け画面に16日に登った鳥海山・七高山頂上での登頂写真を使っている。いい年をして「オイオイ」と自分に半畳も入れたくなるが、「やっと一皮むけた」という安ど感と、自分にとって大きな転換点という意味がある。

祓川ヒュッテから雪の斜面をアイゼンで登りはじめた。登り始め10分で、「こりゃ自分の力量ではムリ……」と不安がもたげた。アイゼンを付けて登るのは2回目、おまけに目の前に頂上が見える。ということはこの斜面を最後まで「直登」することを意味した。前日の寝不足とこれまでの経験上、「かならず足にケイレンがくる」ことを確信した。それでも、みんなの迷惑にならないよう「行けるところまで行こう」と決めた。みんなのペースからは大きく遅れることを了解してもらい、最後尾を休みを入れながら亀の歩みでついて行くことにした。幸いなことに直登なので、遅れても道に迷う恐れはない。こまめに水分を取り、ときおり味噌をなめ、自分の体力と対話しながら、ゆっくり、ゆっくり。

山に登りはじめて3年ほどになるが、ちょっとハードな山だと100パーセント、足にケイレンがくる。これが自分の最大の欠点であり課題でもある。いろんな人に相談してみたが、ストレッチや水分補給ぐらいしか妙案はない。先日、GWで一緒に山歩きした大阪の女性たちに、この「悩み」を打ち明けると、「水分補給の時に、失われた塩分も摂らなくちゃ」とアドバイスされた。水も糖分補給もたっぷり行っているが、そういえば塩分に関しては正直なところそれほど関心がなかった。そこで今回は「飴より味噌」を意識して心がけてみた。

頂上がまじかに見えはじめた最後の急登で、屈強な体力を誇る先輩2名がへたり込んだ。その横を亀の自分がゆっくりと追い越していく。頂上は風が強く、昼ご飯はだいぶ下った雪穴の中。メンバーの中で最も体力のないのが自分なので、いつも泣き言を言っているのだが、今回はケイレンの話題が他のメンバーの口から出た。ケイレンの予兆のように足がピクピクし出した、と何人かが言うのだ。「ケイレン・マニア」の自分の身体にはなんの異変も起きない。下りもみんなから10メートル以上離され、マイペースで無事帰還。最後まで足は悲鳴を上げることなく、下山後のストレッチを入念に行う余裕さえあった。

そうか塩分補給だったのか。他の人より汗っかきな自分は、とにかく水分補給だけはナーバスになっていた。が汗で失った塩分には無関心で、それがケイレンを引き起こす遠因になっていたのだ。それにしても山でなめる味噌は、ことのほか美味しかった。糖尿病になるほど「甘もの」は摂取していたが、それを3分の一に抑え梅干や味噌を意識して摂るようにしたのが功を奏したのだ。
(あ)

鳥海山山頂で(撮影は「弟子さん」)

No.448

劇場政治の誤算
(角川ワンテーマ21)
加藤紘一

 庄内地方に遊びに行くと道端にこの著者の選挙ポスターをよく見かけた。たぶんヴェルサーチだろう、カラフルなセーター姿のポスターをみて、その「自由さ」に驚いたことがある。右翼による放火事件の時の、あの冷静な対応にも感心した。本書は加藤の政治家としての立ち位置を飾らずに語っている。当たり前のことを当たり前のように語っている。政治家のぎらつく野心がどこにもない。大きないくつもの挫折を経て「当たり前の視点」に行きついたのだろう、たぶん。もし、こんな政治家が身近にいたら一心不乱に選挙応援に精だしていたかもな、と思わせるほどさりげなく正当な主張ばかりだ。これまでの歴代の政治家(主に首相)たちについて、好き嫌いはともかく、ほとんど興味は持てなかった。持てなかったが、何か人とは違った抜きんでたものがあるからリーダーになったのだろう、という肯定的な評価は持っていた。あの安倍や福田といった「投げ出し首相」に対してさえ、「激務で大変な仕事だったんだろうな」と同情すら覚えたほどだ。それが麻生首相の登場で一転、日本はついにこんなアホでもトップになれる国になった、という絶望というか諦観に変わった。アホの坂田という芸人がいたが、まさに「アホの麻生」だ。彼への危機感が加藤の本を読むきっかけになったのは間違いない。

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