Vol.484 09年12月26日 週刊あんばい一本勝負 No.479


師走のコンサート

珍しいことに立て続けにコンサートに出かけてしまった。
ひとつめは横手で開かれた塩田明子さんのクリスマスコンサート。郊外のイタリア・レストランの2階で飲み物付きの家族的なコンサートだった。ずっとライブの間も笑いが絶えず、構成も良くできていた。
塩田さんを知ったのは横手のB級グルメとして有名な「やきそば」のテーマソング「焼きソンバ」や、小生もよく飲みに行く横手の魚屋兼居酒屋「日本海」のお店を歌った「そして日本海」といったコミカルでポップなオリジナル曲に興味を持ち、ライブに行ってみよう、と出かけた次第。
2つ目は秋田市で行われたオペラ歌手・長谷川留美子さんの「私のこの歌 あの日、あの頃」。長谷川さんは東成瀬村出身のソプラノ歌手。これはたまたまカミさんのチケットをもらったので出かけたのだが、やっぱり生はいい。歌の力、言葉の強さ、を堪能してきた。それにしても湯沢や横手の県南部が輩出している有名なオペラ歌手たちは、どんな風土的背景によるものでしょうか。

実はここ20年、コンサートに足を運ぶことはほとんどなくなった。これじゃいけない、と何度も無理矢理に出かけた時期もあったのだが、人込みの中にいる苦痛に耐えられず、けっきょくは足が遠のいてしまった。
30年以上前は、自分自身がいろんなアーティストたちの公演やコンサートを主催する側だった。自分の20代から30代前半あたりまで、「企画屋」を自称し、音楽や映画、講演会からダンスパーティまで、プロモーション活動に専念していた時期もあった。
コンサートに足が向かなくなったのは、この時の経験とリンクしている。
自分たちが主催するコンサートでは客の入りやステージのトラブル、収支や打ち上げのことで頭がいっぱいで、コンサートそのものに集中したり楽しむことはほとんどなかった。
そういう立場を離れ、自分でお金を払ってコンサートに行っても、そうした昔の悪い思い出がよみがえり、いろんな細部が気になり、コンサートに集中できないのだ。
そんなこんなでコンサートに行くことをやめてしまったのかもしれない。

そんなわけで久しぶりのコンサートでした。たまにはこうしたライブを聴かないと本当に感性が錆びてしまいますね。
あまり良いことのなかった2009年でしたが、最後は楽しいコンサートを経験して、ちょっぴり救われた感じです。

てなわけで、これが今年最後のニュースになってしまいました。
よいお年を。

(あ)

No.479

したくないことはしない―植草甚一の青春
(新潮社)
津野海太郎

 もう数年も前に「植草ブーム」の背景を、植草本の仕掛人であった津野さんがインタビューに答えていた記事があった。「あたらしもの好きなのに、奥さんに靴下まではかせる昔堅気の人」「おいしいという店に連れて行ってもらったが、ちっともおいしくなかった」といった津野さん特有の愛情あふれる印象的なコメントだった。将来、植草さんの伝記が出るとすれば津野さんが書くんだろうな、とその時、確信した。それが的中、本書になった。私自身は植草さん個人にはほとんど興味ない。その昔一度だけ植草さんのすぐそばに「居た」ことがあった。植草甚一責任編集の雑誌「ワンダーランド」(のちの宝島)の編集現場を訪ねたことがあったのだ。植草さんは不在だったが、編集長の津野さんとエディトリアル・デザイナーの平野甲賀さんがいて、出来たばかりの雑誌をいただいた。その雑誌のレイアウトや内容の斬新さに目を見張った。かっこいいなあ、というのが第一印象だった。そうしたとっかかりもあったので、興味津々本書を読みだした。津野さんの抑制された筆致に引き込まれ、いつのまにか植草ワールドにはまり込んだ。植草本は全く読んでいないのだが、さっそくネットで注文してみようと思う。文章がうまい人って得だなあ。それにしても津野さんの文章は独特のリズムがあって、はまるなあ。

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