Vol.498 10年4月24日 週刊あんばい一本勝負 No.492


誰かがバテると、急に元気になる

山歩きに夢中になりだして丸4年。この間、ほぼ週1回は何かしらの山や峠に出かけている。秋田市に拠点がある「あきた山の学校」(藤原優太郎代表)というサークルに籍を置いているのだが、学校行事がない時は一人で登ったり、県外の友人を誘って、東北各地の山行もできるようになった。山歩きがすっかり生活の一部になってしまった。

とはいうものの「山の学校」ではまだ新入生。もっとも新しいメンバー、新参者、初心者というのが小生の「立ち位置」である。
3年前、やっとひとり「後輩」ができた。小生以来の新人であるTさんは、年齢は数歳上の後輩だった。これでやっと新参者の肩書を下してもらえそうな雰囲気だったが、Tさんはそれほど出席率がいいわけでなく、あいもかわらず小生が最も下っ端の山行はつづいた。

2年前、もう一人、入校者があった。そのAさんもまた年上の後輩だった。
小生にとって2人目の後輩だが、この後輩、ただ者ではなかった。もう前期高齢者なのにスキーで鍛えたとてつもない強靭な足腰の持ち主で、学校でもトップクラスの体力を持つ「スーパー前期高齢者」だったのである。こうなると後輩というよりも見習うべきお手本新入生、といった感じで、Aさんのトレーニング法や装備を盗んでは勉強する、というびみょうな立場になってしまった。

なぜ、こんなに「後輩」にこだわるのか。それにはれっきとした理由がある。
山に登った人ならおわかりだろうが、自分よりヘタ(弱い)な人がいると、ガゼン元気が湧いてくるのが山登りである。逆に自分が一番ヘタレとわかると不安でバテ、ケガをしたりケイレンを起こす確率が高くなるスポーツなのである。「誰かがバテると、急に元気になる」ふしぎな駆け引きが横行する世界なのである。だから自分より体力の弱い後輩の存在は、山では何より心強い味方、なのである。

その唯一といっていい「味方」だったTさんが入院した。先日、もう一人の後輩であるAさんと2人、Tさんのお見舞いに行ってきた。後輩というもののAさんはスーパー前期高齢者なので別格、またしばらくは山歩きのビリッケツは小生、ということになってしまった。
Tさん、はやく現場復帰してよネ、後輩としてかわいがってあげるから。
(あ)

No.492

テクノカットにDCブランド
(太田出版)
みうらじゅん

たまたま先日「色即ぜねれーしょん」という映画を観た。本書の著者の青春時代を描いたものだ。マイブームとか仏像とか、わけのわからないコレクションやすっとボケた発言で「変な人」的イメージの強い著者だが、映画はまともで、見どころの多い、まじめなものだった。ちょっと意外な感じがしたのだが、この映画の続編にあたる本が出るというので、さっそく買ったのが本書だ。舞台は80年代の東京。新人類ブームに翻弄される売れないイラストレーターの日常が短い1話完結のエッセイでつづられている。自伝的エッセイなのだが、1本1本のエッセイは独立していて構成だ。私もこんなふうな構成の本が作りたいなあ、といつも思っていた。
本書の隠し味は「糸井重里」である。いまでは「ほぼ日イトイ新聞」で有名な社長兼コピーライター。本書では著者のターニングポイントになる重要な場面で、必ずといってていいほど登場し、著者の進路に大きな影響を与える役割を背負っている。ネットの「ほぼ日」紙上ではけっして人の悪口は言わないし、社員にはあくまでやさしく寛容な礼儀正しい、いまの糸井社長の姿からは想像できない、もうひとつのシャープで怖くて強引な時代の最先端を走る糸井重里の知られざる姿が描かれてる。

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