Vol.495 10年4月3日 週刊あんばい一本勝負 No.489


書名で一発逆転、本はデリケート

3月も終わってしまったなあ。
新年度というのは役所用語なので何の関係もないのだけれど、内閣府の仕事のお手伝いもしていたので、その清算事務があり、女性舎員は毎日夜中まで仕事、
年度末が終わってホッとしているのは彼女だろう。お疲れさん。
ひとりが遅くまで仕事をしていると零細会社は引きずられて、みんなが遅くまで仕事をしてしまう。たまに早く終わって夜の散歩(1時間半!)から帰って事務所をのぞくと、まだ仕事中、散歩に行くのも罪悪感が…ということはないけれど、なんとなく申し訳ない気持ちで、お付き合いしたりする。

なんとなくそんな感じでバタバタしていたのだが、冷静に考えたら新刊はゼロ。「ミラクルガール」の増刷があっただけの、珍しい月だった。ということはこれだけ編集作業がたてこんでいたわけだから、6冊の新刊と増刷2点がすべて5月ゴールデンウイーク前の4月に集中するということか。
ウヒャァ〜こわいなあ。編集作業はワクワクする楽しさが伴なうのだが、新刊が出てしまうとあとはシビアな販売宣伝が主、これは楽しみというよりも苦しみが先行する仕事だ。このへんはあまり知られていない「零細出版社の真実」でもある。

春のDMもあったし、長野出張(飯綱山登山)や、伊奈かっぺいさんのラジオ出演もあったが、なんといっても印象に残るのは月末、ほぼ諦めかけていたある本の出版が書名変更で蘇ったこと。もう発売日も決まったので公表するが、これは「あきた4コマち」という4コマ漫画。舞台は秋田県内の女子高で4人のなかよしギャルと2名の美人教師の6人が、教室を舞台にドタバタの秋田弁ドラマを演じる物語。キャラクターのネーミングのセンスもいいし(全員が秋田の地名を組み合わせた名前)、テーマもストーリーも面白いのだが、このタイトルでは何のことかわからない。4コマ漫画と解説コラムの本なので定価は1000円内外に抑える必要がある。ある程度の部数が担保されなければ出版は不可能。1ヶ月間悩みぬいて、けっきょく部数のメドがたたず、出版を断念……と決めたとたん、『はじめての秋田弁』という書名が天から降ってきた。これだ、これならいけるッ、一発逆転で出版が決まり、後はものすごいスピードで編集作業が進行中である。こんなこともあるから、本って面白い。この画像は書店用のポップとして作ったものです。
(あ)

No.489

ブラジル史
(岩波書店)
アンドウ・ゼンパチ

 ブラジル・アマゾン旅行から帰ってきて、まっさきに読み始めたのが本書だ。これまで読んだブラジル関連図書と言えば、とりもなおさず「移民」に限定されていたのだが、これでは本を書く際、本質的な問題の掘り下げが浅いことに気がついたのだ。例えばブラジルの人たちは宗主国であるポルトガル人を、これでもか、と言うぐらい徹底的にバカにしてこき下ろす。これはなぜなのか。あるいはブラジルは混血天国と言われる。白人とインディオの混血が多く、そのため黒人も黄色人種も白人も、ほとんどなんの差別のない国と言われている。これには歴史的にどんな理由からなのか。移民関係の本では、こうした国の成り立ちに関わる最も重要なことがらが、ちっとも記されていない。ブラジルには八回も行っている私自身がそうなのだが、その歴史や自然、金やコーヒー、インディオ、現代政治、と言ったことに関して、実に無知だったことが、この本を読んでよくわかった。インドを目指していたポルトガル船団が「まちがって」ブラジルを「発見」してしまってから、この国はまだ5百年の歴史しか持っていない。しかしその5百年の中身が濃くて、スリリングで、世界史の登場人物としては極めて魅力的なキャラクターを持っている国なのである。

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