Vol.519 10年10月2日 週刊あんばい一本勝負 No.513


秋っていいですねえ。

10月ですねえ。「読書の秋」というぐらいですので、1年で一番忙しく、かつ好きな月です。が、前半はちょっくら外国へ行く予定があり、正直なところ、1年の一番いい時期に秋田を離れることに、忸怩たる思いもあります。

それにしても9月です。秋への助走季節として9月も好きな月だったのですが、今年の9月前半はほとんど夏。ものすごく損をした気分です。夏は夏なりの楽しさがあるのですが今年の夏はちょっとやり過ぎでしたね。いい加減にしろよ、と口に出してしまいたいほどの出しゃばり過ぎ感はいなめません。

しかし身体というのは正直ですね。9月半ば風に冷たさが出てくると、急に息を吹き返したようによみがえりました。不思議です。ちょうど「秋のDM 」送付時期でしたが、作業もスルスルとはかどり、同期するように新刊も毎週のように出来上がってきました。印刷所も夏バテだったのかな。

秋の新刊の目玉は2本です。
脳性マヒの中学教師、三戸学さんの『僕は結婚できますか?』と、同じく中学の音楽教師で、その職を捨ててちんどん屋を本職にしたカチューシャ安田さんの『教師をやめて、ちんどん屋になった!』。
どちらもじっくり時間をかけて今年後半の重点営業商品として売る予定です。メディアへのパブリシティも多くなると思います。

実はこの2人、お互いはまったく知らないのですが、ふしぎな共通点があります。どちらも潟上市在住、大学も山形大学卒なのです。
秋田大学に比べて山形大学というのは圧倒的にユニークで傑出した人物を輩出する大学ですね、秋田大学中退の私が言うのですから本当です。小舎の出版物には山大卒の著者がかなりの数いるのを見ても、それはわかります。

10月は、ようやく山にも登れそうです。あまりの暑さに敬遠していたのですが10月の山は1年で一番美しく、静謐で、この時期を逃すと1年間を無駄にしてしまいます。山の会がないときは一人でも出かけたくなるシーズンなのです。が、今年はクマが出そうな予感があり、一人歩きは控えようと勝手に決めています。山でクマと出逢うことはまったにない、というのは経験上わかるのですが、なんとなく心騒ぎがします。たぶんこの夏の暑さでクマの体調も狂っているのでは、という余計な心配をしているのです。物事にはすべて裏と表があります。あの美しい秋の山容の裏には、なにか恐ろしいものが隠れているはずです。
(あ)

No.513

いつもの毎日。――衣食住と仕事
(KKベストセラーズ)
松浦弥太郎
まったく経歴もわからず、平積みになっている書店で「タイトル」だけで買った本。40代後半の「暮しの手帖」編集長が書いた身辺雑記エッセイ、と知ったのは読み始めてからだ。「暮しの手帖」の編集長がこんなに若い人なのにも驚いたが経歴も面白い。高校中退後、渡米。帰国後、本屋さんや移動書店をはじめ執筆活動も行う、とある。そして既刊本には生き方や仕事術について書かれたものが多い。この若さで衣食住のこだわりについて語る、というのだから、まずはその勇気に敬意を表したい。中身はいたってテーマ同様シンプルで、毎日同じものを使う、これが気持ちいい、と言う一点。どこかで読んだことのあるような本だなあ、と読み終えるまで考え続けたが、わからないままだ。バブル全盛のころ、ハイレベルの高級男性誌が主張する「トラッドな貴族趣味風」の本という印象しか思い浮かばない。わが尊敬するドイツ文学者の池内紀さんなら、こんなふうに生活をブランド化して語ること事態に強い違和感を訴えそうな気がする。この著者が描くような生活を静かに実践している人は少なくないはずだ。著者の本をいろんな出版社が競って出そうとするのかなぜなのか、この本を読むだけではわからない。著者が世に出るきっかけになった本があるのだろうが、それも今度読んでみよう。

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