Vol.537 11年2月26日 週刊あんばい一本勝負 No.531


呼吸を整えて3月を迎える

ウロチョロしている間に2月は終わってしまいました。
何度もいいますが、ミジケーッ、という感じです。
長い付き合いのあった山形の印刷所の倒産からスタートし、バタバタゴンゴン、舎屋の電気やペンキ塗り、書架の組み立てやら資料廃棄の改修工事が続き、来客がやたら多く、山は房住山ひとつのみ。
さらに肝心の仕事は「ありがとう浦和レッズ」の増刷だけ。
新刊はただの1冊も出ていないのに、このあわただしさって……。

ということは3月が恐ろしい。すべてが先送りにされてしまったのです。
ついさっき、印刷所の社長と3月の進行工程の打ち合わせ。まともにいくと(いま鋭意作業中の本を順番に出して行くと、という意味です)3月中に7冊の本が出る計算になってしまう。こんななりゆき任せの本づくりを印刷所が許してくれるはずがありません。
「オイオイ3月って年度末だよ。印刷所が一番忙しい時期に、お前のところの本ばっかり、面倒見ていられんよ」
といわれるのはわかっていました。そこをなんとかと平身低頭、どうにか折衷案をとり、3月に5本だけ出してもらい、それ以外は4月回しということになりました。まずは一安心といったところです。

3月は春のダイレクト・メールの時期でもあります。愛読者のみなさんに年4回出している新刊案内通信です。
今回はこのほかに「執筆者アンケート」なる通信も出します。これまでお世話になった著者の方々を中心に「これから出す予定の本」をアンケートで答えてもらうもので年1回か、2年に1回のスペシヤル企画。うちのような零細地方出版社ではとても手の出ない企画も書かれているのですが、このアンケートで年間単位の出版企画の目安を立てることはできます。そういった意味ではけっこう重要なアンケートです。ましてや、うちは来年、創業40周年になります。今年から来年いっぱい、そのアニバーサリーを意識した本をつくっていく予定なので、なおさら今回のアンケートは力が入っています。

まあ、そんなわけで、2月はとりあえず「なかったこと」にしてもらい、正念場の3月にむけて呼吸を整えている昨今でした。
(あ)

No.531

苦役列車
(新潮社)
西村賢太

時流に乗り、売れている本はあまり読まない主義なのだが、なぜかこの本だけは、たまたま出張先の行きつけの書店に平積みされていた。帰りの新幹線の中ででも読もう、と定価も安かったので買ってしまったのだ。前日、息子と飲んでいて「あの作家、面白そうだね」と言っていたのも微妙に後頭部に残っていた。とにかく劣等感と猜疑心と反骨精神にあふれた、中上健二をもっと不良にしたような作家とは聞いていたのだが、まさか「中卒、逮捕歴あり」をキャッチフレーズ(?)にしている人物とは思っていなかった。若い港湾労働者の日常と友情を貧乏と怨嗟を軸に描いたものだが、なんとも読みにくい生硬い文章だった。最初はその文体に慣れるのに苦労したが、慣れると逆にすいすいと読めてしまった。この新しい芥川賞作家の話題の新刊には、実は受賞作以外にもう1作「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」という併作がある。こちらのほうも貧乏怨念小説に変わりはないが、全編腰痛で苦しむ主人公のモノローグで構成されている。2011年に入ってから腰痛に苦しめられ、それが人生で初の腰痛だったせいで腰痛のことばかり思い患っていた時期こともあり、この作品のほうに感情移入できた。

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