Vol.640 13年2月23日 週刊あんばい一本勝負 No.633


ようやく忙しくなってきたのに、毎日酒びたり

2月16日 昨夜は久しぶりに痛快な一夜だったなあ。ひとりで5時半から飲みはじめ、しっかり腹ごしらえしてから、秋大と教養大の学生コンパに参加、3次会は作家のSさんと二人、川反のバーでウイスキーをたらふく。帰宅は夜中の3時半、起きたのはお昼だった。でも二日酔いじゃない。そればかりか恐れていた体重も飲む前より減っていた。なんと10時間あまり、笑っておしゃべりして焼酎とウイスキーを1カ月分飲んだのに、これは不可解。日本酒やツマミを「糖質制限」をきどってとらなかったのが、よかったのだろうか。それにしても楽しい夜だった。最近ほとんどいいことがなかったので、ここからツキが変わってくれるといいなあ。

2月17日 秋田市上新城にある小又川大滝にスノーハイク。「ふるさと百景」にも選ばれた美しい鄙びた村里だ。林道を歩いているうちに青空が広がりだした。おかげで一級品の風景を堪能できた。一汗かいた後はSシェフの料理で「シャチョー室宴会」。今日のメイン料理はサムゲタン。こうした難しい韓国料理を事前の準備もなく簡単に作ってしまえるのがSシェフの真骨頂。ダイエット中の小生はひたすら焼酎で「糖質制限」。その傍らでSシェフらは勝手に冷蔵庫から「天の戸大吟醸」をとりだしグビグビ。10キロ減量に成功したら、お祝いにひとりで呑もうと隠していたやつだ。悔しい。少しは遠慮というものがないのだろうか。

2月18日 朝から巨大な除雪車が何台も事務所の前に集結、ゴミ出しに行くのも迂回しなければならない。まさに除雪車銀座。先週の中ごろから身辺が騒がしく仕事も忙しくなった。酒を飲む機会が増え、来客も増え、スケジュール表が埋まりだした。もう半年以上さえない状況が続いているから、少しは何かが好転し始めたのだろうか。ま、どう考えても楽天的になれるような時代環境ではないのだが、せめて身の回りだけは好奇心銀座になってほしいもんだ。あれ、今日はなんだか銀座って言葉が勝手に口を衝いて出るなあ。

2月19日 ここ2年ほど日本農業新聞に「読書日記」という連載を持たせてもらっているのだが、慣れからくる油断か、今月締め切り原稿で大チョンボ。毎回2冊の本を取り上げるのだが、以前に取り上げた本をまた載せてしまったのだ。原稿を編集部にメール送信して、別の原稿を書くために資料ファイルを開いたところで二度載せに気がついた。この間、約20分。あわてて書き直し再送信するまで約2時間、さすがに寒くて冷汗は出なかったものの、頭に血がのぼりっぱなしでカッカと熱かった。どうもこの手のミスが昔に比べて多くなった。年のせいにすれば話は簡単だが、これは「慣れ」と「油断」のほうの問題だ。山でも同じような忘れ物が増えている。でも慣れって年の功のことでもある。やっぱり年かなあ。

2月20日 あれよあれよというまに身辺が忙しくなってきた。いろんなことが数カ月分前倒しで、というか過去のヒマな分まとめて、押し寄せてきた感じ。でもこれも長く続かない。経験からその程度のことは学んでいる。一昨日はお金をいただいている原稿を2本書き虚脱状態のようになったので、なにも予定のなかった昨日は1泊で酒田市へ。仕事ではなく「逃避」だ。2軒ほどなじみの飲食店をまわり、ホテルで本を読んで寝るだけだが、それだけでもストレスは軽減、リフレッシュできた。山形は好天なのに秋田に入ったとたん7号線は猛吹雪。たまのドライブも気分転換にはいい。夕方からは横手市の「天の戸」の蔵開きに行く予定。

2月21日 昨日1日だけで酒田そして横手(浅舞)往復と、ずっと車に乗りっぱなしだ。浅舞(天の戸)からの帰りは吹雪で高速が閉鎖。下道を通り帰宅は夜12時近かった。酒蔵で、とびっきりのお酒をいただいたので、友人Fさんに運転を依頼したのが効を奏した。私のドライブ技術では立ち往生したに違いない。それほどの猛吹雪。今日の朝10時には出版依頼の人と事務所で打ち合わせがあったのだが見事に寝過ごした。おまけに約束まですっかり忘れていた。これはちょっとシャレにならない。もう二日酔いモードは卒業だ。しっかり仕事をしようぜジブン。

2月22日 国際教養大の中嶋学長が亡くなった。地元紙を1日遅れでしか読んでないため、知らなかった。地元紙ではトップではなく国体スキーの記事の1面下段の死亡記事。このあたりの価値観は秋田的だね。教養大を全国区の「文化遺産」にした学長の業績はもっと称えられていい。最近、国際教養大の学生たちと合コンしたりするのだが、先日は隣に座った20歳の娘が「早稲田と津田塾に合格しましたが、こっちを選びました」とこともなげに言う。偏差値や学歴の問題ではない。子供たちが自分の価値観で有名大学をけって秋田に来る、これはすごいこと。そういえば山仲間のY君は一橋を落ちて教養大を選んだ、って言ってたな。彼は今リトアニアに留学中で、近く「リトアニア日記」をこのHPで連載する予定だ。
(あ)

No633

世界が土曜の夜の夢なら
(角川書店)
斎藤環

この本にはまいったなあ。自分の心の内をのぞかれたような気持ちになった。「ヤンキ―は好きですか」と訊かれれば「嫌いです」と即答する。では、ヤンキ―って何? と問われれば、答えに窮していた。この本を読んで、うまく言語化できなかったものが、ストンと腑に落ちた。坂本龍馬、白洲次郎、金八先生、EXILE、ヨサコイソーラン、ラーメン屋の作務衣、地元、絆、母性、現実志向、相田みつお、光り物、アゲと気合、片岡鶴太郎……著者の列挙する「ヤンキ―的なもの」がほぼ100パーセント自分の嫌いなものと合致する。そうか、自分が嫌悪していたのは「ヤンキ―的なもの」だったのか。自民党はヤンキ―化している、とも言う。安倍総理は「ヤンキ―に憧れていたけどひ弱でなれなかった人」だそうだ。なるほどそういわれると納得。今ここに生きる、という限界、歴史的スパンで物事を考えるのが苦手、伝統を大事にするというがそれはフェイク、だって本当の伝統は勉強しないと理解できないから。気合とアゲアゲの乗りさえあればなんとかなる、というのがヤンキ―の基本精神。「不良になりそうな連中がソーラン節や祭りによって保守にロンダリングされる」回路を持っているのは日本だけ、と著者は言う。この10年ほど自分の心の中でもやもやしていたものが、この本1冊で見事に霧が晴れた。

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