Vol.654 13年6月1日 週刊あんばい一本勝負 No.647


なんだかんだで、もう5月も終わった

5月25日 花巻で見た「いぐね」の風景が目に焼き付いている。仙北平野で何度か観ているはずだが、記憶に残っていない。花巻のいぐねは、狭い盆地に絵に描いたように屋敷林が点在し、日本の原風景そのものだ。水の入った田んぼがメルヘンのような風景を際立たせて、美しかった。昨今観た風景のナンバーワンだ。いぐねは「居久根」と漢字で当てる(当て字だよね)のだが、仙台弁の「いずい」(居心地が悪いといったニュアンス)を連想するせいか宮城方言では、と疑っていた。調べてみたが、語源について書かれたものは見当たらない。それと、なぜ秋田には「いぐね」が少ない(消えた)のかも考えた。田んぼの面積(広い)や収益性、作業効率を優先し、孤立よりも集落化を選んだ結果、というあたりが結論のような気もするが、どうなのだろう。

5月26日 県北にある真瀬岳に登る予定だったが、若い友人のS君に誘われ2人で鳥海山へ。前回は強風のために8合目小屋でリタイアした。8合目というと立派だが頂上まではその3倍か4倍のハードな急峻を登らなければならない。その悔しさが尾を引いていたので渡りに船。年に一回は秋田の最高峰であるこの山に登らないことには腹の虫がおさまらない。で、出かけたのだが「無風・青空・トラブルなし」という奇跡的な山行になった。何の問題もなく3時間半で山頂に立ち、あろうことか山頂では30分以上のんびりと写真撮影、昼食、おしゃべりを楽しんだ。こんな鳥海山って、アリ? まるで近所の300mクラスの里山散歩をした気分なのだ。そうか、こんな日もある。だから希望を捨てずに、これからの下り坂を生きていこう。 

5月27日 去年の7月頃からカクンと売り上げが落ちはじめ、1年たった今もその流れに歯止めはかからない。このまま未来永劫、本は売れなくなり、作家は職業として成立せず、出版社の旧来のビジネスモデル崩壊、とまで危機感をもっているのだが、業界からは断末魔の悲鳴らしきものは聞こえてこない。どうなっているんだろう。3・11後の影響はそれほど大きくないと高をくくっていたが、2年目にドドーンと「津波」はやってきた。でもこれって本当は3・11とは関係ない現象なのかもしれない。3・11があろうとなかろうと出版の未来の、起こるべくして起きている、歴史的な事実として受け止めるほうが今後の対策は講じやすい。自社ビルで借金なし、個人的にも家や教育ローンないし社員はみんな嘱託契約、なんていう出版社が、いったい日本にはどのくらいあるんだろうか。同業者たちの本音を聞いてみたい。

5月28日 一晩かかって衣替え。すっかり夏服モードに切り替えた。突然雹にふられ、冬服をあわてて引っ張り出したこともあったが、それも良し。体重は10キロ減だ。幸いなことに服を新調するまでには至っていない。見栄っ張りでちょっと小さめのサイズを着ていたから今がぴったりなのだ。さっそく昨日からは半袖で出社。昨日は暑かった。今週後半は東京出張なので、このときのために半袖を用意しなければならなかった。半袖初日は生ッ白い肌の露出が妙に気になる。ところが今年は、先の日曜の鳥海山登山で顔はほとんど三浦雄一郎状態。何の違和感もなくさっそうと半袖で昼の散歩に。街ではジロジロ顔を見られたのは日焼けのせいか。なにせカミさんまでが、下山したオレの顔を見て、ゲラゲラ笑ってた。

5月29日 小中学校時代に学校で習った知識というのは消えない。消えないどころか心根の奥深くにしっかり刷り込まれている。そうした「素養」が、あるとき本を読んでいて唐突に覆されることがある。今ではまったく通用しない「うその科学や歴史」だというのだ。これにはショックを受ける。最近では旧石器時代、我々の祖先といわれていたネアンデルタール人が実はホモサピエンスとは何の関係なかった、という事実だ。ネアン人たちが今に生きていてとして、人間とセックスはできても子供はできない、というのだ。黒人と黄色人種が結婚すれば子供が生まれる。人種として同じ「DNA」だから両者に差異はない。ところがネアン人とホモサピエンスは別の人種なので、子供は生まれない。そうなんだ。ときどき小中時代の先生たちを意味もなく殴りたくなることがある。

5月30日 正式の名前は何と言うのか忘れたが、「お掃除スリッパ」を買った。ド派手な黄緑のカエルさんのぬいぐるみのスリッパだ。フローリングの床はこまめに掃除するほうだが、コーティングまでは手が回らない。手が回らなければ足を回せばいい。履いてるだけで床がきれいになる、といおう「スリッパ」をネット通販(1000円)で買った。半分シャレなのだが、ときどき来客が足元を見て固まる。接客の時はき替えるようにしているのだが、この頃はそのまま出てしまう。そうバカにしたものでもない。けっこう床はきれいになるし、最近は光沢まで出てきたような、気がする。なんにせよカエルちゃんがメチャかわいい。問題は厚手で、足元がやたら暑いこと。これで夏場を乗り切れるかジブン。
(あ)

No647

50歳からは炭水化物をやめなさい
(大和書房)
藤田紘一郎

去年11月から一念発起、ダイエットをはじめた。健康診断でいろんな症状が指摘され、肺に影があるとまで言われたためだ(CT検査で異常なし)。医師に相談しても「まあ5キロ減量してから来てみてください」と小馬鹿にされた。いつも医師はまともに診断せずデブのせいにする。この悔しさもダイエットを決意した理由だ。もう半年になるが現在(4月末)10キロ減。過激で無理な減量をしているわけではない。昼の外食(ラーメンなど)をやめ、食後の甘ものもやめた。その途中でこの本に出会った。「人の体は50歳でメインエンジンが切り替わる。若い頃と同じような食生活は老化を加速させる」という著者の主張には納得。内容は今はやりの(医学的には認められていない)糖質制限ダイエットである。私たちの祖先の生物は無酸素や低温環境の中で「解糖エンジン」を働かせ、血管を伸ばし栄養をとって生き延びてきた。その生命力旺盛な細胞が「ガン細胞」だ。高糖質、低体温、低酸素でがん細胞は活発になる。がんの予防にはそうした「解糖エンジン」の働きを抑えることが重要だ、というのが著者の糖質制限の根拠だ。コレステロールについても興味深い記述がある。コレステロール値が低い人はうつ病になりやすいのだそうだ。これは東京都健康長寿医療センターが秋田県のある村で4年間(65歳以上の504人を対象に)調査した結果、わかったことである。飽和脂肪酸が怖いからと完全排除すれば、逆に長寿は遠ざかってしまう。どこまで信じるかは自由だが、「健康」が別の視点から見えてくる本だ。

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