Vol.896 18年2月17日 週刊あんばい一本勝負 No.888


映画に吹雪に「さいとう」さん

2月10日 急に寒気が緩んで、着るものに悩む。もう厚手のシャツとセーターが定番化していたのだが、何年も着ていなかった厚手のカーディガンを引っ張り出してみた。着たら実にぴったりしっくり。そうか今日のような日のための洋服だったんだ。天気や気温とのマッチングが分かるとファッションの汎用性は一気に広がる。服って面白い。

2月11日 今日は大滝山スノーハイキング。事務所でおにぎりをチンして味噌をつけて朝ごはん。すべての準備を整えていざ出陣、というところでSシェフから電話。雨のため中止とのこと。雨でびしょぬれになると風邪をひく。雪はいくら降っても吹雪いても防寒対策さえしていれば何の問題もない。でも雨はだめ。防ぎようがない。急に宙に浮いた形の「やる気」がどこにもたどり着けずフワフワ。

2月12日 山が中止になりやむなく始めた仕事(原稿読みとチェック)だったが、いつのまにか夢中に。今日はその続き。こんな風に来る日も休みの日も、だれに頼まれたわけでもないのに仕事をして、寿命を縮めて、死んでいくのだろう。自分のことなのに「かわいそうな人だ」と思ってしまう。

2月13日 酒田のある登山家の本を作っているのだが、編集委員に3名、デザイナーに1名の計4名が「さいとう」さんという名前だ。6,7名の会の中に4人の「さいとう」さんがいる。その他にも私のアドレス帳には常時連絡を取り合う4名の「さいとう」さんがいる。この8名の「さいとう」さんの「さい」の字が「齋」「齊」「斉」「斎」とそれぞれみんなバラバラ。庄内地方は「さいとう」さんの宝庫。

2月14日 東成瀬村の友人に「雪の状態を取材したい」とメールすると、「除雪はちゃんとされているが3メートルを超す積雪なので駐車スペースがない」との返事。「雪下ろしの仕事で死にそうだ」とも。秋田市に住んでいると雪が少ないので県内の豪雪地帯への配慮が薄い。除雪ブルが出動するような積雪は月に1度か2度、毎日雪と戦っている地域のことをついつい忘れてしまう。今日は市内も朝から猛然と雪が降る続いている。雪国で一番きついのはこの雪下ろし。無事に帰ってこられるか不安だが、近いうち村に行ってみるつもりだ。そういえばもう半世紀以上雪下ろしをしてない。

2月15日 昨夜は、檻に入れられた獣が泣き叫んでいるようなすさまじい風の咆哮に何度か目を覚ました。そこに真夜中の冬の雷が平手打ちのように追い打ち。ほとんど外阿鼻叫喚の地獄のような状態。朝起きると屋根の雪は吹き飛ばされ、道路はツルッツルのアイスバーン。わずか通勤時間30秒の距離を数分かけて慎重に転ばないように「這うように」歩いて、

2月16日 DVD映画は面白そうなものをライブドア(ぽすれん)でマイリストに入れておき、その日の気分で4本ずつセレクトして注文する。それでも半分は確実に外れ。でも先日は4本中3本が大当たり。C・イーストウッド監督の『インビクタス』は南アのマンデラ大統領とラクビ―チームの物語。ハリウッド物だが物語の造形が憎いほどうまい。『サムホエア』はコッポラの娘、F・コッポラ監督の作品。「ロスト・イン・トランスレーション」と同じ系列の映画スター漂流もの。この監督の作品は無条件で好き。最後は『メルー』。世界一の壁ヒマラヤ・メルー峰に挑戦する山岳ドキュメンタリー。監督のジミー・チンは登頂者でもあり撮影者、職業は「ナショナル・ジオグラフィ」の山岳カメラマン。ヒマラヤの山々の迫力ある映像や登山家の息遣いまで聞こえ緊張感は、自分も命がけで登って撮っているから当然だ。
(あ)

No.888

塩の大研究
(PHP)
財団法人塩事業センター

 若い人と一緒に山に登った時、山頂から見える海を見ながら「海ってなぜしょっぱいんですか」と訊かれた。恥ずかしながら答えられず、家に帰ってその由来を調べた。森や土中に含まれる微妙な塩分が雨で川に運ばれ海に流れ込む。その微量な塩分が何億年分もたまったものが海水だから、海はしょっぱい。「塩の基本中の基本」を子供向きに解説した本書には、不思議なことにその基本のキが書いていない。「海水には3パーセントの塩が溶けている」という前提から本書は始まってしまう。これは大きなミスリードだ。日本には岩塩鉱山や塩湖がない。塩は海水を煮詰めてつくるしかないのだ。雨が多くて湿度が高く天日製塩には向かない。独自の日本的製塩技術を開発するしか手がなかった。その結果、開発されたのが「イオン交換膜製塩法」だ。海水の中のナトリウムイオンと塩化物イオンを、電気を通したプラスマイナスの交換膜で各々集め、濃い塩水を作る。それを煮詰めて塩を作る方法だ。いま私たちの食卓に上る塩はこうして作られる。この仕組みを図絵で克明に理解できただけでも本書を読んだ価値はあった。

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