Vol.912 18年6月9日 週刊あんばい一本勝負 No.904


3泊4日の休暇は遊佐町で

6月2日 ご近所の家が突然解体工事。エッどうしたの? そいえばご主人を最近見ていない。お酒の好きな職人さんで、一人暮らしのようだった。何があったのだろうか。今日は町内の公園草むしり。お隣のKさんに解体中の家のことを聞くと、がんで亡くなったという。別人のように痩せて1年ほどで命尽き、奥さんとはだいぶ前に離婚、一人息子がいたという。一人工務店のような仕事で町内会活動にも積極的。一度だけ近所の食堂で長くおしゃべりをしただけだが、印象に残る人だった。合掌。人の命は実にあっけない。

6月3日 原稿を仕上げる。しばらくは原稿のことを忘れたい。月曜から3泊4日で鳥海山周辺のトレッキング・ツアーに行く。朝からその準備でバタバタ。4日間の着る物や食べるもの用意をするだけで、けっこう時間がかる。

6月4日 昔に比べて電話が鳴る回数はめっきり減った。かかってくる電話の9割は書店からの在庫の問い合わせ、個人は品切れ本の注文である。友人や法人・団体からの連絡はほぼメールだ。ところで私はスマホを持っていない。外出時に持たされるPHSは近いうちに廃止。ローカル線はダメで無理やり新幹線(スマホ)に乗せられる気分だ。

6月5日 遊佐町の自然保養施設「しらい自然館」いる。ぬくもりのある木造の教育施設で鳥海山のふもとの森の中に建っている。今年も関西から友人二人が遊びに来るというので、お付き合い。今日は快晴、山形まで来たのに再び秋田に車で移動し桑ノ木台湿原をトレッキング。途中、赤ちゃんを胸に抱いた若い女性2人(計4名)とすれ違う。クマがウジャウジャいるのに大丈夫? と思ったが余計なお世話。トレッキングが終わって車で休んでいると、その赤ちゃん女性が車で運ばれてきた。やはりクマ出没が近くで確認され、危険なので車で搬送されてきたようだ。

6月6日 今日は遊佐町の二ノ滝トレッキング。軽い山登りだが距離は短い。気温は高いのに山の中に入ると肌寒い。この二ノ滝をひたすら登ると鳥海山畳河原へ。霊場と秘境探勝ルートである。午後からは二泊したしらい自然館を離れ酒田市のリッチ・ガーデンホテルへ。ホテルのレストランで打ち上げ。野菜料理中心のバイキングというのは珍しい。

6月7日 ホテル朝食もバイキング。今日も暑くなりそう。1時間半で秋田の事務所に到着。昼まで旅の後始末。午後からは通常に仕事。原稿のチェックをお願いしていた東成瀬村のTさんから克明に赤の入ったゲラが返ってきた。ありがたい。こうした人がいないと、いい気になって書いたものをそのまま発表してしまうところだった。勘違い、思い違い、明らかな誤謬、思い込み、基礎知識のなさが露呈。あ〜あ恥ずかしい。猛省。

6月8日 3泊4日の臨時休暇終了。朝のコーヒーをすすりながら、これからの仕事の優先順位を考える。この作業はけっこう楽しい至福の時間。東成瀬の原稿はほぼ終わったが、「むのたけじ」さんに関する長い原稿をある出版社から依頼された。自分が適任でないのはわかっているから断ればいいものを、「誰もいないので」といわれ、引き受けてしまった。
(あ)

No.904

高円寺古本酒場ものがたり
(晶文社)
狩野俊

 4月に出たばかりの『古本屋台』(作・久住昌之 画・久住卓也)が抜群に面白かった。夜中になると阿佐ヶ谷周辺に出没する焼酎の飲める古本屋台を舞台にした異色コミックだ。しかし「Q.B.B」なる兄弟ユニットの手にかかると、たいていの「小さなこと」は芸術の域に達するから、すごい才能だ。でも本当にこんな屋台の古本屋が都内のどこかにあるのだろうか。この漫画では何度か屋台がマスコミに取り上げられ、一過性の客が押しかけて迷惑する様子が描かれている。だからドキュメントの可能性も否定はできない。それでもいろいろ調べてみると、本書の存在に行き当たった。中央線・高円寺にある「古本酒場コクテイル」。これは本当に実在する。高円寺北口商店街の中にあり25人も入れば満席になる古本酒場だ。マスターはまだ30代、この本の著者だ。福島県出身で、昼は古本の買い出し、夜は酒場の店長になる。全体が「古書月報」の聞き書き記事と、日記と、書き下ろしの3つで構成されていて、なんとなくわかりずらいところも少なくないのだが、まあそれも味わいのうちだろう。

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