Vol.929 18年10月6日 週刊あんばい一本勝負 No.921


台風・変調・スクラップ

9月29日 爪を切るサイクルが年々早くなっている。数年前まで確か2週間から3週間周期だったが、最近は10日に一遍だ。年とともに爪の伸び具合が気になるようになった。それと手から腕、足から腿にかけてバンソウコウが途切れることがなくなった。手足にどこか一カ所は必ずバンソウコウが貼ってある。皮膚とほとんど同化したバンソウコウまであって貼ってることを忘れてしまう。

9月30日 台風の襲来報道がかまびすしいが、「雨の森を歩きたい」という欲望を抑えきれずSシェフと二ツ井にある房住山へ。まともに登ると4時間以上往復にかかるので、下山口から山頂下の寺屋敷までの逆コースで約2時間半。雨は小ぶりでどしゃ降りはなし。気持ちのいい雨のハイキングになった。下山してシャチョー室宴会。A長老も参加してステーキ&ブイヤベース。台風は少しずつ秋田市から南東にズレて被害はなさそうだ。どう頑張っても人間は自然に勝てっこない。

10月1日 夜半に雨は降り続いたようだ。朝から「吹き返し」の風がうるさい。今日から10月。10月は1年のうちで一番好きな季節。引きこもりから脱し、書を捨てて、街に出ようと思っている。

10月2日 そういえば最近「便利屋」のチラシってほとんど見なくなった。一時は新聞折り込やポストにチラシがよく入っていた。窓のサンや網戸の修理、コンセント周りや大型家具の後ろの掃除、寝室や浴槽のダニカビ退治など、自分でやるのがちょっとおっくうなものは便利屋に頼みたい、と時々思う。でも便利屋という職種が今も健在なのか、よくわからない。便利屋が社会で必要とされる時代背景というのはあるのだろうか。今はその時ではない、ということだけは確かなようだ。

10月3日 今年は災難続き。特に体調は日替わり定食だ。食べるものや運動やストレスには人並み以上に気を付けているつもりなのに身体のどこにも異常がない日が珍しい。やはりどこかに変調をきたしているとしか考えられない。今日は近所のK医院に行き、最近の体調について相談してきた。いろいろ検査の結果、指摘されたのが「塩分の摂りすぎ」。最近、やたら濃い目の味付けを好むようになった。汗で失われるミネラルのことを慮って塩飴や濃い目のみそ汁をとることが、ほぼ習慣化していたからだ。猛省である。

10月4日 若い人と日常的に接する機会はほとんどない。だから最近の流行やトレンドにも疎い。若い人と話をすると、すぐに批判的で説教臭い方向に行きそうになる自分が嫌なのだ。もし今、20代の自分に会ったら、どんな態度で接するだろうか、とよく考える。間違いなく「ビンタを張る」か「無視」するか「出て行け!」と怒鳴っている。その絵をまざまざと思い描くことができる。こんなことを考えたのはSシェフから市内の大学の学園祭に誘われたから。昔の思いあがった高慢キチな自分自身に会いそうで、御誘いを断った。

10月5日 新聞切り抜きが日課だ。年に一度、そのスクラップの整理をする。いらないものを捨て、これからも必要と思われるものを残す。残したものをさらに「社会」「本」「秋田」「東北」「アウトドア」「農業」「食と酒」「事件」「ヒント」といった分類に仕分けしファイルに入れていく。捨てる切り抜きは段ボール箱ひと箱。切り抜きは切り取った時点でA5判の使用済みコピー紙裏にノリで貼るので、スクラップの大きさは統一がとれている。心配なのは切り抜き用に長年使っている「一枚刃カッター」の在庫がないことだ。ネットで探しても売っている形跡がない。北欧製のおしゃれなハッパ型のカッターだ。
(あ)

No.921

古賀史健がまとめた糸井重里のこと。
(ほぼ日文庫)
糸井+古賀

 何度も書いているのだが、私たちの同時代人として「糸井重里」は特別な存在だ。その糸井重里が普段はあまり語りが足らない、自分の出自や学生運動、コピーライター時代から影響を受けた人たちのことまでを、聞き書きした本である。のっけに「重里」という名前は司法書士だった父がスタンダールの『赤と黒』の主人公の名前ジュリアン・ソレルからとったものであることが打ち明けられる。さらに学生時代の全共闘運動に関しては「ブラック企業と同じだった」と断じる。理想を達するためには犠牲をいとわない。「命」を軽く扱おうとすると「ことば」は重くなる。「みっともないことが苦手」と糸井は言う。みっともないことだけはしたくない、というのが糸井の骨格だ。「ほぼ日」に関しては「たくさんの人でにぎわう自由な場所、遊び場を作りたかった」。損した得したという契約関係からは遊びが育たない。銀座のような賑わいを作ってしまえば、そこに自動販売機を置くだけで食べていくことはできる。これが「ほぼ日」だ。「俺が欲しい」「俺が読みたい」が原点だ。これはいい本だなあ。

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