Vol.962 19年5月25日 週刊あんばい一本勝負 No.954


本と散歩の日々から

5月18日 コンビニに車が突っ込んだ事件は全国区でオンエアーされた。毎日のように郵便を出すのに使っているコンビニなので不便だ。いまは散歩のときに郵便物をもって出て途中のポストで投函している。コンビニ再開のめどだが入り口付近がベニヤ板で覆われただけでまったく工事をしている気配がない。このまま廃業か、次のオーナー探しの最中なのだろうか。コンビニ業界の人手不足や経営実態は見た目よりずっとひどいようだ。

5月19日 山歩きのない週末。土日ともたっぷり朝寝。寝床で本を読む。朝に本を読むというのは何十年ぶりだろうか。本は夜と相性がいいとばかり思っていたが、朝の読書もなかなかのものだ。文字がバンバン頭に入ってくる。朝の読書タイムなんて言われると、むりやり義務で本を読まされているようで嫌だったが、「あさよみ」っていうと、なんだが夏休みのラジオ体操のようで、いいなあ。

5月20日 マグロは特別食べたいと思わない食品なのだが、月の中頃になるとSシェフが卸市場から「生マグロ」を一棹買ってきてくれる。一棹2千円ぐらい。この生マグロがめっぽううまい。一棹の生マグロをカミさんと半分ずつ分けて食べる。

5月21日 ずっと好天が続いたので雨もいい。雨を気にかけながら急ぎ足で散歩。途中、中古品屋さんにフラリと入ってしまった。デジカメ売り場で今使っているペンタックス・オプトの前の型が1600円で売っていた。ケータイのカメラが高性能になり、デジカメは衰退の一方だ。山用に使っている防水、耐震のデジカメはほとんど壊滅状態で、これからは新機種を購入することも難しい。1600円ならこの際、予備に買って置いてもいいかも、と購入。山のカメラは乱暴に扱うから丈夫さだけが命だ。

5月22日 新入社員は友人の結婚式で不在。カミさんもいないから、一人で留守番。ところで「日本語を所管する」文化庁が、ローマ字表記で名前を書く際、「性・名」の順が望ましいという呼びかけをしている。ローマ字表記ではどうしても外国の例に倣って名が先になるのが常道だ。うちの出版物の奥付の著作権者名(コピーライトなので横文字)は姓から名の順序で記載してある。しかし使用頻度の高いクレジットカードは会社の方針で名から姓が常識だ。パスポート表記が基準になっているためなのだろう。

5月23日 作家の阿部牧郎さんが亡くなった。面識はなかったが、好きな作家だった。『遥かなる凱旋』や『小説・秋田音頭』はどちらも2回読んでいるのだが、肝心の直木賞受賞作『それぞれの終楽章』を読んでいなかった。なんだか気になって昨日読んだ。大館や鹿角で過ごした少年時代を描いた「阿部版スタンバイミー」だ。50歳の時、同級生だった郷里の税理士の葬儀に訪れるところから物語は始まる。通夜の席で再会した同級生たちとの会話から作者は40年前の時間の中にもどっていく……のだが主人公の名前は「矢部宏」。どこかで聞いた名前だなあ、とおもったらベストセラー『知ってはいけない』の著者、矢部宏治さんと一字違いだった。矢部さんは友人だ。なんだかややこしい。

5月24日 『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』(晶文社)を読んでいる。実に面白い。確かテレビでこの人の存在を知り、ヘンな人だなあと思ったのだが、この本を書くために考えた職業……なのかなもしかして。というのも、ひきをきらない様々な依頼にこの「なにもしない人」は、交通費以外に報酬をもらわないからだ。もう一つ。客の依頼に応じて家族や恋人を演じる日本のレンタルサービス会社のドキュメンタリーをドイツの有名なヘルツォーク監督が劇映画化し、カンヌで上演中、というニュースが新聞に載っていた。こちらの依頼主は圧倒的にシングルマザーで夫や父親を演じる仕事なのだそうだ。なんだかすごい世の中になってきたなあ。
(あ)

No.954

シャレのち曇り
(PHP学芸文庫)
立川談四楼

  「声に出して笑える日本語」を偶然手にして面白かったので、続、続々と3冊シリーズを便所本(置き本)で読んでしまった。アナウンサーの致命的な言い間違いから、落語の世界の味わい深いセリフの解釈まで、著者が日ごろからコツコツとコレクションしている「失笑名言集」である。特に目新しいコレクションというわけではない。ないのだがやはり落語家、使いどころが絶妙だ。やはり話術の技なのだろう。そんなこんなですっかり「笑える」シリーズにはまったところで、著者は小説も書いているという。となれば立川談志の話なのだろう。遠目に見ていて、なかなか田舎者にはシンパシーを抱きにくい立川談志の?途を書いているというので読んだのが本書だ。談志本人というよりも落語協会脱退の顛末が書いていた。これが実に興味深い。筆者の真打昇進断念が談志の「脱退」の引き金を引いたことが書かれてあるからだ。この辺りになると小説というよりもノンフィクションで、周辺との人間関係や落語界の不可思議な世界観がこの本を読んでようやくリアリティをもって立ち上がってきた。そうか修業や子弟、師匠や兄弟子の関係ってこんなんだったのか。

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