Vol.963 19年6月1日 週刊あんばい一本勝負 No.955


毎日がTシャツざんまい

5月25日 散歩の途中、横金線路上で猫が飛び出し、車にはねられる現場を目撃。やりきれない気分になってしまった。車に突っ込まれた近所のコンビニは今日から再開。プレゼントなどを入れる小箱を探して100円ショップやアクセサリー店をさまよっているが、これがない。ほとほと困ってしまった。毎日寒いような暑いような、よくわからない体感の日々が続いている。朝に長袖、昼に半そで、夜になるとまた長袖に着替える。

5月26日 2週間ぶりに山歩きは八塩山矢島口コース。ここでは必ずと言っていいほど小動物とあう。今日は成獣のカモシカ。登山道は最初から最後までフカフカの落ち葉道。行きは2時間30分、帰りもほぼ同じ時間かかる。コシアブラを採って(もらって)、今日の夕食は天ぷらとしゃれこんだ。

5月27日 何から手を付けていいのかわからない。混乱と焦燥と諦観が入り乱れ収拾ができない状態。ブラジルに旅行中、3点の新刊ができてくる。年4回しかない夏DM通信の時期とも旅は重なる。2社の新聞広告もこの時期。くわえて新聞の連載コラムも旅中に掲載される。これはもうどうしようもない。泣き言を言っても始まらない。

5月28日 魔がさしたとしか言いようがない。毎日のように本を買うアマゾンから「緊急の通知」がきて、「カードの利用承認が得られない」という。銀行口座などを再入力して返信してから、「あっ詐欺だ」と気が付いた。急いで新しいカードに作り直した。カード会社に問い合わせると、やはり怪しい決済依頼が外国(インドネシア)から来ているとのこと。本当に怖い。

5月29日 本も映画も「2度目」が多くなった。いいものは何度見て(読んで)もいい。茶木則雄『帰りたくない!』(知恵の森文庫)は達者な面白エッセイで色あせていない。台湾映画の『恋人たちの食卓」。料理映画として出色であるばかりでなく、ヒューマン・ドラマとしても完成度が高い。小津安二郎の『お茶漬けの味』も、初見のときは何が面白いのかよくわからなかったが、今はその味わいがじんわりとしみわたってくる。最近の本や映画は何となくつまらないものばかり。

5月30日 夏のDM通信の編集作業が終わった。年4回とはいえ年々編集はしんどくなっていく。今回で50号。ということは12年余続けてきたわけだ。今の形になる前も手作り感満載で出していたので、あれこれ20年出し続けている計算だ。誇れるような才能がないから、ひとつのことを細く長く、あきらめないで続けていこうと決めている。そのために続いているのだが、単に執念深いだけ、とヤユされることもある。

5月31日 Tシャツというのは、よくよく考えたらほとんど着ない。下着なのか、遊び着なのか、そのあたりの心理的なテイコ―があって着こなせなかった。今年に入ってTシャツを着るようになった。寒ければ長袖シャツをその上から羽織り、来客のときはジャケットにする。なんだか体が軽くなったような爽快感すらある。この手軽(下着がいらない)で身軽さ(重ね着できる)が若者たちとTシャツを結び付けていたわけだ。今年の夏はTシャツ三昧の日々になりそうだ。
(あ)

No.955

伝える人、永六輔
(集英社)
井上一夫

  永六輔の大ベストセラー、岩波新書の『大往生』をはじめとして、以後、『2度目の大往生』『職人』『芸人』『商人』『夫と妻』『親と子』『嫁と姑』『伝言』とつづくシリーズを担当した編集者のベストセラー作家との同志的回想記である。このシリーズ累計部数は400万部をこえるというのだから驚く。でも本書そのものはあまり読み応えのあるものではない。岩波書店というお行儀のいい編集者の、その想定内の範囲での回想録にしかなっていないからだ。そうぶん、いわれのない誹謗中傷や自己賛美もない。印象に残った永さんの言論では「君が代・日の丸」論をあげている。「日の丸」はもともと徳川幕府が咸臨丸でアメリカに渡るときに船印として揚げたもの。戊辰戦争で最後に敗れた函館・五稜郭の「賊軍」=幕府軍が掲げたのも日の丸だ。元々血塗られた歴史を持っている。「君が代」が歌いにくいのは雅楽だから。雅楽は中国の音楽で、その旋律に日本的な5・7・5をはめ込んだから無理がある。これはいかにも永さんらしい。過激な論争の前に永六輔的思考回路があれば、世の中はもっと楽しくなること請け合いだ。

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