Vol.965 19年6月29日 週刊あんばい一本勝負 No.957


あわただしく旅の準備

6月8日 来週早々には海外に旅立つ。そのため週末は何も予定を入れていない。旅の準備をするためだがスーツケースはすでに成田に送ってある。だから物理的な準備というよりは、目的である取材コンテンツの確認作業が週末の主な仕事だ。取材する予定の場所や人物の事前確認や資料に目を通す。限られた時間で広大なエリアを駆け回らなければならないから効率的な選択が求められる。現地では躊躇していると時間はすぐに失われる。「もしか」のためにいろんな「代替案」も想定し、その準備も必要だ。取材というかインタビューが下手なので、あらかじめ想定問答集も作っている。いやはや現地に行く前にこれでは疲れて動けなくなりそうだ。

6月9日 内澤旬子著『ストーカーとの七〇〇日戦争』(文春)読了。ありふれた別れ話から突然ストーカーに豹変した男との二年間の戦いを描いたノンフィクション。一挙に読んでしまった。彼女の文章力がとにかくすごい。著者の身に起きた実話なのだが、ギリギリまで精神的に追い込まれても、最後は自らの「発信力」を武器にストーカに闘いを挑み、相手をぶちのめす。泣き寝入りするしかない女性たちに具体的な戦い方も、自分の失敗例とともに示されている。他人事とは思えない文章があった。「(高齢の)地方在住男性には、人との距離感やプライバシーの考え方が田舎特有の濃密さのまま、スマホやSNSなどの最新道具を使いこなしてしまう人が少なくない」という件。うちの本の読者でも、本を買ってやったというだけで信じられないほど威高に電話してくる人も少なくない。

6月10日 半そでシャツをきて仕事をするようになると、なぜか蕎麦が食べたくなる。でも秋田市にはまっとうな蕎麦屋さんがほとんどない。これは悪口ではなく蕎麦を食べる食習慣が「薄い」という意味だ。幸いにも、救荒作物として蕎麦を植えて収穫しなければならなかった農業環境がなかったのだ。コメのできそうな場所にはかなりの無理をしてもコメを作り、それがお金になった。大きな災害や凶作と無縁だったことも大きな要因だ。だから蕎麦とは縁がない土地なのが、ある意味、それは「豊かさ」というステータスでも当時はあった。閑話休題。最近、あのチェーン店の「南部家敷」の蕎麦が自分の好みにけっこうあっていることを発見した。毎日のように昼を食べに通っているのだが、まだ飽きない。もしかすれば夏の間は南部家敷通いは続く可能性もある。

6月11日 さてさて今日から約2週間、ブラジルに行ってきます。今日は東京泊。成田発のメキシコ航空に乗るので、秋田から直接というのは無理なので前日に東京入りする必要がある。乗れば乗ったでメキシコシティで6時間のトランジットがある。これもけっこう深刻な大問題だが、今日も東京に行っても何の予定があるわけでもない。友達とダラダラ酒を飲むのも気が進まない。いろいろ考えたら神保町の岩波ホールで話題の映画『ニューヨーク公共図書館エクス・リブリス』が上映中ではないか。問い合わせてみると夜の部だけ空席がある。というわけで今日は映画を観に東京に行く、という気分で出発なのである。これからの旅の顛末は、このコーナーで毎日レポートする予定。こうご期待。それでは行ってまいります。

6月12日〜6月26日 この間は長い日記になるのでHP上に別枠を設け『トメアスー紀行日記』(仮題)として別途コーナーを設けます。

6月27日 朝4時半起床。やはりどうしても目が覚めてしまう。昨日から外は雨、だから散歩できない。せめて昨日歩けていれば、時差ボケの解消度は格段に早くなったはず。散歩が自分の生活に占める大きさを痛感。今日からは地元紙に「アマゾンの秋田県人」(仮題)という短期連載のための原稿を書きはじめる予定。構想はもう出来上がっているのだが、なかなか最初の一文字がき出せないでグズグズ。書き出せば資料をみずともかけるのだが、そのスタート地点まで行けず周りをウロウロしている感じ。散歩をすれば頭の中がすっきり整理できる。でも今日も朝から雨。そうか、今気が付いたが秋田は梅雨だったんだ。大事には至らなかったが取材データを保存していたUSBを失くした(いまだに見つからない。荷物のどこかにあるのは間違いない)ショックをいまも引きづっている。毎日飲んでいる便通の漢方薬を飲むのも忘れていた。やはり日本での日常に戻り切れていない。昔はもっとリカバリーが早かったのに。早起きして得なことは毎朝、ブラジルに電話することだ。ブラジルのラインである「ワッツアップ」に入ったので隣町にかけたような通話状態で地球の反対側に簡単につながってしまう。ラインと同じ理屈のWi-Fiを使った無料電話アプリなのだが、こんな便利なものが世の中にあるとは知らなかった。ラインもやらないジジイにはチョーショックなのだが、本当に地球の反対側まで無料でつながっているのか、まだ半信半疑で電話をかけ続けるバカオヤジである。
(あ)

No.957

生きがいは愛しあうことだけ
(ちくま文庫)
早川義夫

 読み終わった文庫本(半分は読んでいないか)を友人たちに無料頒布しようと事務所のすみに展示。後生大事に持ってるよりも本は再利用してもらうほうがいい。ということで本を並べていると、もう一回読んでみたいなと思う本が数冊出てきた。そのうちの1冊が本書だ。買ったはいいが読んでいなかったのだ。カバーの写真がいい。本人が映した犬と黒白鳥の写真だ。前半は音楽家仲間たちの話。真ん中に恋愛論が入り、シメは読書日記や本の話だ。みんな面白い。前半部に出てくるミュージシャンの名前がほとんど初見でショックを受けた。HONZIに佐久間正英、北村早樹子、灰野敬二、原マスミ、山本精一、白波多カミン……誰一人として知らないのだ。でも文章を読んでいると彼らの音楽を聴きたくなってしまう。文章の力だろう。
 本書は名言の宝庫だ。「68年にあったものは今もあり、68年になかったものは今もありません」とか「笑いと感動とHしか興味はない」「本当のことしか伝わらない」といった、フツーの言葉の重さと深さがしみこむように、こちらに伝わってくる。

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