Vol.979 19年10月5日 週刊あんばい一本勝負 No.971


「夏バテ」でダウン!

9月28日 9月10日に出す予定の秋のDMを今回は1ヵ月遅らせた。消費税のためだ。9月中に予定通り出すと購読者から注文が返ってくるのは10月。駆け込み需要というのもなんとなくイヤだ。買う側からすれば8パーセント台のうちに買って置きたいのだろうが、今回はこちらのわがままを通すことにした。もうこの通信も年4回で10年以上続いているのだが印刷費や郵送経費が数十万かかる。オンラインにしてしまえば安くなるのだが、購読者の平均年齢は70歳前後。なかなかそう簡単にデジタル移行は難しい。いろいろと次の一手を考えているのだが妙案は出てこない。

9月29日 毎年、市内の古本屋さんに自舎刊行物を買うために出かける。その値段表示を見て激しく喜怒哀楽する。読者から何としても欲しいという要望のある本を買い、古本値段を見て増刷を決めたりする基準にもなる。昭和40年代あたりに出版された他社本の郷土資料も大量に買い込んでいる。当時は他社の本を読むなんていう余裕はなかった。今、手に取ってみると、「すごいなあ」と嘆息したり、「よくこれで本にしたよなあ」とガックリしたり。「秋田もの」の原稿依頼にはもれなくお応えします、というのが仕事の一部でもあるので「秋田」について一番詳しガイドになるのも仕事の一部だ。

9月30日 秋田でのクマ被害は日常的な域に達している。もう十日ほど前になるが、鹿角市の下校途中の中学生がクマに襲われた事件は記憶に新しい。この中学は高台の上にあり周囲を林に囲まれ、この林の階段途中でクマと鉢合わせした。覆いかぶさられて左耳をかまれたが軽症ですんだ。少年はすぐに頭を防御し、道にうずくまり、クマが触れてきた瞬間、大声で叫び声をあげた。その声に驚いてクマは退散した。これは県などが生徒に指導している「クマ対策」を見事に「実践」した結果だ。新聞は被害しか報じないが、実はこの中学生のとった「行動」こそ、もっとちゃんと報じられるべきなのだ。

10月1日 なんとなく身体が怠い。ある人のネット・エッセイで、この時期のだるさや食欲不振は「夏バテ」である、と書いていた。さらに朝晩の冷え込みが厳しくなり、「寒さ」も強烈に感じているのだが、明らかに新陳代謝が落ちているためだろう。

10月2日 「自己診断」が的中。まるで気持ちが仕事に乗らないばかりか気力が「仕事」を除外しおうとしている。今日は休み、と決めてさっさと床にもぐりこんだ。しきりとおしっこが出る。水分をさして取ってないのにおしっこばかり近い。一向に汗は出ない。食欲もまったくない。食べたいと思うものが何もないのだ。これは食いしん坊にとって一番の危険信号。2,3日何も食べなくても死にはしないから、まずはひたすらベッドにもうっている。

10月3日 寝床生活2日目。少し症状は治まりつつある。うっすら寝汗をかいた。食欲も少し。唐突にジャガイモの入った味噌汁が食べたくなり1杯飲んだら腹いっぱいに。窓から風を入れてみるが、西日だけが元気よく差し込んでくる。手元にある本は宮田珠巳『だいたい四国八十八ヶ所』(集英社文庫)。読みながらこれは2011年に本の雑誌社から単行本で出た時に読んでいると気が付いたが、もう前の記憶はほとんどない。年を取るとこんな時に便利だ。「お遍路旅」の問題は、とにかく健脚自慢のジジイたちが各札所や車、宿で手ぐすね引いて待ち受けていること。機会あれば自慢話を披露してくる。お遍路よりも、その自慢話を他者にしたいためにだけ、四国を歩いているジジイがたくさんいるのだそうだ。

10月4日 まだ頭はボーっとしているが昨夜は思い切って風呂にはいった。というのも今日は朝から男鹿のお寺さんで大事な打ち合わせ。白いシャツにジャケットを着ると、不調は後方に去っていく気分。午後からはまた寝ていようかと思ったが、やっぱりなんだかデスクの前にいると仕事をしてしまう。社会と隔絶して入院するだけで治る病気がたくさんあるという。私の病気もそのひとつかもしれないが、貧乏性が昂じた仕事依存症だ。
  
(あ)

No.971

穂高小屋レスキュー日記
(山と渓谷社)
宮田八郎

 山にはよく行くのだが「山小屋」はほとんど縁がない。登るのは主に県内の山だけなので、「避難小屋」しかないからだ。お盆期間中、本書だけでなくやまとけいこ『黒部源流山小屋暮らし』、吉玉サキ『山小屋ガールの癒されない日々』も読んだが、やっぱり本書が一頭地を抜いている。著者はあの漫画『岳』のモデルになった人物で、今年の4月にシーカヤック中に落命している。だからこの本が遺稿集になってしまったわけだ。先日、偶然目にした信濃毎日新聞の一面トップ記事が山小屋への荷揚げヘリの故障を報じるものだった。宮田さんの本はこのヘリによる山岳救助のすさまじい舞台裏を実に詳細に描いている。レスキューや物資輸送のヘリは民間会社による運営で、1回のフライトで50万円程度の費用がかかるのだそうだ。
 本書の成り立ちは、途中で行き詰って書き上げていなかった原稿を「山渓」の編集長である荻原浩司さんらが最終的に補筆、編集して編んだものだ。「小屋番をやって、レスキューやって、本業は詩的な山の映像作家で、不器用でウソの付けない、体育会系関西もんのおっさん」というのは奥さんの宮田像だ。なるほど、その姿が目の前に浮かんでくる。

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