Vol.1011 20年5月16日 週刊あんばい一本勝負 No.1003


観たい番組がないテレビ

5月9日 毎日必ず食べるものは何? 意外にもヨーグルトだった。納豆かなとも最初は思ったのだが、週1回はパン食で納豆は出ない。ヨーグルトが毎日食べるものなら、いっそ自分で作ってみようか。ヨーグルトメーカーというキカイが3000円くらいで買えた。思い付きで始めた「ぬか漬け」はまだ続いている。けっこう好評で食卓や酒のつまみに重宝している。この流れにのってヨーグルトもやってみようと鼻息が荒くなった。早くヨーグルトメーカー、届かないかなあ。。

5月10日 「今日の出来事」は毎日更新。さらにその1週間分を同じHP内の「週刊んだんだNEWS」に掲載する。その際「1本勝負」というブックレビューも書いている。このブックレビューが1000回を超えた。1年間50週で計算しても20年近く書き続けたことになる。昔はダメ本に合うと、これ幸いとばかり「辛口評論」を気取って悪口雑言を並べ立て、悦に入っていた。今考えるととても恥ずかしい。面白くなかった本の悪口を書いても後味が悪いだけだ。実は今週も読んだ本2冊の書評を断念した。期待した内容とは違って腹の立つことばかり、頭に来たが書かなければいいだけの話だが、公表したい気持ちもあるのが複雑だ。

5月11日 リーマン・ショックを描いた映画を観ていたら、「ヴァチカンがホテルになって、法王がボーイになったぐらいの驚き」というセリフ。ちょっと大げさだなあと思ったがアメリカ人にとればそれが実感なのだろう。コロナ禍に関して「放火犯(中国)が消防士のふりをしている」とアメリカ人が言うのはかうまい例えだ。コロナのどさくさにまぎれて審議の始まった検察庁法改正案に、須藤元気という人が「レフィリーに飯をおごって選手を優勝させようとしている」とツィートしていた。これもうまい。この国の首相は「金をばらまいて学級委員になろうとしている気の弱い駄々っ子みたい」なイメージがある。

5月12日 「不要不急」という意味の明瞭でない言葉に呪縛されて、なんだか自分の生活リズムが崩れてしまった。普段も自粛に近い生活なので、どうってことはないと思っていたが、その悪影響がジワジワと心身をむしばんでいた。身体のキレがなくなり重くなり、向上心が失せて、前向きな気持ちが減り続けている。1日が過ぎるのがあっという間だ。翌日には昨日何をしたのかまったく思い出せない。そろそろ気持ちを入れ替える時期かも。

5月13日 ヨーグルトメーカー到着、朝に試食したのだが初めてにしてはなかなかの味。でも家族にはなぜか無視された。さいきんテンプラ料理をする機会が増えたのだが、「サラダ油」ってなぜ「サラダ」なの? どうやらこれは、外国で生野菜に油をかけて食べることをしり、日本でも野菜に合う油を作りだしたのがはじまりのようだ。100年前の「日清サラダ油」である。今売られているスナック菓子の「サラダ味」は、「サラダ油を塗って」塩味をつけたスナックのことで野菜とは全く関係のない菓子だった。

5月14日 この2週間ほど活字に身が入らない。読む書く編む…全部ダメ、集中力が続かない。映画ばっかり見ているのだが、テーマは「ニューヨーク(ノンフィクション)もの」「ロードムービーもの」「グルメ系」の3つ。毎日1本平均観ていたのだが圧倒的に感動したのは『グリーンブック』。実話に基づいた黒人差別ロードムービーだ。白人と黒人の2人でアメリカ南部を車で旅をする。白人が粗野で無学で下品、黒人が金持ちで品性、知性満点で心優しい、というキャラクター設定がもうすでに面白い。主人公の黒人をアジア人に置き換えて考えると震えが来るほどのショッキングなコメディ映画なのだが、海外で活躍する日本人アーチストやアスリートたちは、こうした差別の壁と戦って成功した、というだけで尊敬に値する。

5月15日 毎朝、新聞のラテ欄をチェックして録画する。このコロナ禍で録画したい番組がすっかりなくなってしまった。もうテレビ依存はやめようと思うのだが、BSの国際ニュースをみていたら、アメリカやヨーロッパのコロナ状況を細やかに報じていた。国際的なニュースは切り取り方が斬新だ。フランスの製薬会社が開発したワクチンが資金提供を受けたアメリカ優先と発言したCEOにフランス人の抗議が殺到、なんて日本では報道されていない。エッセンシャルワーカーといわれる労働者の多くが社会の低所得者層であることにスポットを当てたNYのインタビューも実に見事。まだテレビの価値はありそうだ。
(あ)

No.1003

奇食珍食糞便録
(集英社新書)
椎名誠

 コロナ騒動で家に閉じこもり、うっとうしい日々が続いている。寝る前に読む本だけでも浮世離れした痛快無比でハチャメチャな本を読みたいなあと思って「未読ツンドク本」を漁ったら、本書が出てきた。買ったはいいが読んでなかった。これが予想外の面白さだった。1章が「世界糞便録」で、2章が「奇食珍食」の2部構成だが8割がたは「糞便」の話だ。これが実に面白い。中国の便所には個人個人の仕切りがなく、汚くて、不衛生、というのは有名な話だが、その理由まではしらなかった。これは毛沢東の文化大革命の影響なのだそうだ。個人所有の便所は贅沢なもの、便所の個室は壁に落書きされやすく政府批判が蔓延する、ドアがないと木材消費の節約になる……といった笑いたくなるような政治的理由で、なるべくしてなったのだそうだ。糞便とは関係ないが、驚いたのは地球上のすべての人類を合計した重さと、地球にいるすべてのアリを合計した重さは同じ、というエピソード。人間一人を50キロと計算すれば、アリ約5万匹の重さに相当する。だから地球上には360兆匹ぐらいのアリがいる。いやはや驚くことばかり、収穫の多い本だった。

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