Vol.1012 20年5月23日 週刊あんばい一本勝負 No.1004


めん類な日々

5月16日 料理のことを考えている。アイスキャンディ、ローストビーフ、カレーにカンテン、ぬか漬け、ヨーグルト、最近は昼ごはんに麺類ばかり。ラーメンはスープがやっかいと思って敬遠していたが、スーパーにラーメンスープが売っていた。これを買ってシナチクや麩、ゆで卵を入れれば完成だ。酒もあまり飲まなくなった。外に出ないし、相手もいない。ひとり呑みの欠点は話し相手がいないこと。会話がないと酒にもすぐ飽きる。新入社員は盛んにネット飲み会なるものを開いている。あんなもので楽しいのだろうか。

5月17日 TV番組のつまらなさは尋常でない。新しい番組制作がストップして過去の映像を使い回しているからなのだろう。昨夜は『イージーライダー』と『タクシードライバー』の名作2本立て。昔観たはずなのに実に新鮮でワクワクドキドキ。イージーライダーたちは麻薬を売った金で旅に出たこと、タクシードライバーは12歳の売春婦を救うために何人もの人を殺す話……肝心のこうしたあらすじすら覚えていなかった。

5月18日 またしてもこりずに「私のカレー作戦」を実行。ハウスの「バーモンドカレー(甘口)」を使って箱書きレシピ通りカレーを作る。その第2弾。第一弾はちょっと高級な市販ルーを使ったせいか、失敗。目指したのは少年時代に家で食べた「特別な味のしないカレー」。小麦粉っぽく、ウスターソースをかけて「うまい」と思うような味だ。カレーの欠点は年寄りの胃には重くて胸焼けすること。甘口カレーにはそれがまったくない。ワインのつまみにはぴったりかも。食事より酒の「あて」にいけそうだ。

5月19日 うちの本をオンラインで朗読したいので許可してほしい、という依頼。非営利、無報酬、無料なので問題はない、と依頼者は勝手に判断しているようだが、丁寧にお断りした。問題は活字文面をそっくりスキャンして画像化、仲間同士で読み合うという点だ。もし著者が生きていて「許可」したとしても、こちらの判断は変わらなかっただろう。版面がそのままコピーされるのは出版権に関わることで、出版社側に属する問題だからだ。苦労して編集・出版した努力など跡形もなく無効になるのがネットの世界だ。

5月20日 ウイングフィールド著『フロスト始末』(創元推理文庫)上下巻読了。少年少女が変質者によって殺されるだけの、まったく興味のない物語に付き合わされた十日間。いまだに「名作古典」への信仰があるから、評判になった物語を理解できないのは自分の感性やリテラシーのほうに問題がある、と思ってしまう悪癖だ。先日も同じミスを犯した。出版に関するエッセイ集を読んでいて途中で駄作(読むに値しない)だとわかったが、いやいや最後まで読み通してしまった。貧乏性なので本は最後まで読まなければ損、という下品さが災いしている。

5月21日 Sシェフがウドを持って訪ねてくれた。山ウドはウコギ科のタラノ木属の多年草。Sシェフは事務所の台所で、わずか30分ほどで4品のウド料理を作ってくれた。まずは茎の部分の御刺し身。これは酢水に入れて灰汁をとる。山の緑と土の滋味深い味が詰まっている。もう一品は同じ芯の部分を味味噌に漬け、一晩おいて食べる。穂先は柔らかく味も濃いのでテンプラかみそ汁の具。葉っぱの部分は一度湯がいて細かく切り塩昆布とともにご飯に混ぜ込む。あっという間に、武骨で土臭い山菜が涼やかで品のある高級料理に変貌した。

5月22日 昼食をカンテン・リンゴからめん類に替えた。インスタンではない。ラーメン、冷やし中華、ソーメン、うどん、そば、パスタにジャージャー麺と、その日の気分でメニューを選び、めんをゆでて調理する。それぞれ具材が違うのでソースやゆで卵、てんぷらやネギ,麩といった常備菜(?)も作り置き。うどんだけでも5種類ぐらいのヴァリエーションがあるから一通り食べても1カ月はメニューに困らない。一番の好物はジャージャー麺。これは甜面醤でつくるソースを大量に作り置き。あとはきゅうりを細切りするだけだ。一番面倒なのは冷やし中華。これは具材がいろいろ必要なのでけっこう大変だ。
(あ)

No.1004

それでも読書はやめられない
(NHK出版新書)
勢古浩爾

 このごろなんとなくNHK出版新書を読む機会が増えている。タイムリーでそそられる企画が多い。この著者の本はよく読む。でも「定年もの」はもういいかなと思っていたら今度は読書もの。サブタイトルがなかなか凝っている。「本読みの極意は〈守・破・離〉にあり」というもの。最近、近所のすし屋が新装オープン、その入り口看板に墨書で「守破離」とあった。調べてみたら茶道の言葉のようだ。芸道における成長の段階を意味する教えで、「規矩作法守りつくして破るともはな(離)るるとても本(もと)を忘るな」という利休からとられているようだ。著者の読書人生はこの守破離に似た道筋をたどったという。読書には一般的なルールはない。だから人を参考にしてもしょうがない。ああ面白かった、が一番の誉め言葉だ。このへんは私もまったく同じ。名作や名著、古典や文豪といった呪縛からも解き放たれている。だから「本を読まないと猿になる」だとか「バカにならないために本を読め」と粋がる柄谷行人や勘違い男の成毛眞などへの評価は厳しい。本は面白ければそれでいいのだ。この本で森博嗣のことを知った。今度は彼の本を読んでみよう。

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