Vol.1050 21年2月13日 週刊あんばい一本勝負 No.1042

突然、腰痛でダウン

2月6日 一足先に春が来たような陽気。冬季間に数度しかないといっていい青空だ。寝室の窓を全開にし、電灯,欄干、テレビ裏、すべてにハタキがけ。いつも思うのだが雪国の人間は謙虚だ。たかが青空ひとつで「人生はバラ色」とまで思ってしまう。安上がりと言えばそうだし、ストイックすぎると言われればそうかもしれない。ちょっぴり寒さに震えながら、かすかな陽光のぬくもりを感じているだけで、じゅうぶんに幸せだ。

2月7日 起きたのは11時を回っていた。家に誰もいないので、シャチョー室で昨日作っておいたカレーライス。腹もくちくなると、もう今日やることはなにもない。ベートーヴェンのピアノ協奏曲5番「皇帝」を高音量で聴く。フルトヴェングラー指揮のモノーラル録音盤で、すごい迫力だ。指揮者の善し悪しなど理解できる音楽力はないが、この迫力と粒立つような音質は私のようなオンチにもわかる。

2月8日 健康診断。予想通り、血圧は高いわ、体重はリミットオーバーだわ、まるでいいところがない。いつものように過剰にほめられたのは骨密度だけ。自粛をいいことに辞めていた体重を計ること、昼のリンゴダイエットも再開することに決めた。

2月9日 今日からしおらしく摂生に努めることにした。少なくとも半年間は続けて目標をクリアーできるように、無理のないダイエット計画を立てている。体重計にも乗らず、食事制限をしなくても、なんとなく経験で「基準値」内をキープしていると思い込んでしまったのだ。とんでもない思い上がりだった。

2月10日 急に腰の痛みがひどくなった。幸いなことにギックリ腰やツライ腰痛とは無縁の生活を送ってきたが、最近ときどきこうした腰痛が突発的に襲ってくる。太りすぎと疲労によるものだ、たぶん。腰を使って身体の異変に警告を鳴らしてくれているのだ。

2月11日 森吉山の樹氷ハイキングを予定していたのだが腰痛のため断念。近所の整骨院に行ってきた。Sシェフにも相談すると、軽いストレッチを行うこと、と厳命された。体重過多と運動不足が原因なのは明々白々なので、運動不足が犯人であるのは間違いないようだ。

2月12日 腰痛シリーズ3日目。痛みがだいぶ治まってきた。今日の朝起きると痛みは前日の半分ほど。腰が悪いわけではなく身体の疲れや不調が象徴的に腰に出てしまうという症状だ。じっとしているよりは積極的に身体を動かしてストレッチすることが大事なのだが、怖くて身体がこわばってしまう。昨夜観た映画『ドラゴン・タトゥーの女』は実に面白かった。原作はスウェーデンの小説。同時に久しぶりにワイダの『灰とダイヤモンド』もみようとライブドアでチェック、送られてきたのはグレーという日本のロックバンドの同名の音楽CD。『灰とダイヤモンド』で検索してもワイダの映画ではなく邦楽のCDが出てきてしまう、この悲しい現実。
(あ)

No.1042

自転しながら公転する
(新潮社)
山本文緒

 豪雪のため夜中まで家の前で除雪作業が行われていた。ときどき稲光のする中、除雪車の轟音と、重機による揺れで心乱され落ち着かない夜。ずっと本書を読んでいた。関東周辺に暮らす30代の平凡な女と男のありふれた恋を描いた物語だ。この作品は間違いなく映画化されるだろうな、などと思いながら読み終わった。ちょっぴり立松和平の『遠雷』を思い出したが、こんな良い物語を読むと小説家の想像力に無条件に敬意を表したくなる。物語はプロローグとエピローグに仕掛けが施されている。どうやら連載中はこの仕掛けはなかったようで、単行本にする際に新たにこの両端の物語を付け加えたもののようだ。これもちょっと驚いた。最初と最後を付け加えることで物語に厚みが増し、深く時間を意識させる構成に成功しているように感じたからだ。最初と最後に物語の秘密というか、ダイナミズムが隠されている小説というのも珍しいのだが、関東周辺を舞台にした物語というのも、普段語られることのない「舞台性」が強くて興味引くのかもしれない。主人公の恋人のすし職人がなかなかの存在感だ。

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