Vol.1052 21年2月27日 週刊あんばい一本勝負 No.1044

健診結果で目を覚ました

2月20日 近所で時々会う自転車に乗った老人に目礼をされるが、誰だかわからない。ヨレヨレのジャージの上下で絵にかいたような隠居老人だ。何度か会ううちに「あっ、町内会のエライさんだ」と思い出した。町内会ではいつもスーツにネクタイで、零細企業の社長さんのような格好をしていた。そうか、年寄りは身だしなみでこれほど印象が替わるのか。というわけで今日は土曜日。一人事務所仕事なのにセーターの下は真っ白なワイシャツ着用である。

2月21日 ネットが急につながらなくなった。あきらめて原稿書きに集中。『続秋田学入門』という本を書いているのだが、ネットが使えないのでワープロに集中、けっこうはかどった。夜の本がおもしろくて(再読の桐野夏生『夜の谷を行く』と森功『鬼才ー伝説の編集人齋藤十一』)、2冊まるまる2晩で読了。

2月22日 PCの調子が悪いまま3日目。プロに修復を依頼。チャチャチャと直してくれた。修理代はバカにできない金額だが、これで仕事ができるとなると、そこには代えがたい。

2月23日 山のない休日や祭日は朝ごはんを食べずに10時近くまで寝ている。前日の晩御飯は5時半と早いから、食べ終わると16時間以上も腹にものを入れていないことになる。昼は軽いリンゴカンテンだけ。悪夢の健診以来、休日毎にこの「半日断食」を繰り返している。そのおかげか健診日から2週間経過したところで3キロ体重が落ちた。この空腹こそ「最強の薬」という考え方は、若い人の間でも話題になっているらしく青木厚『「空腹」こそ最強のクスリ』という本まで出ている。

2月24日 角館の住宅地にクマが出没の記事と写真が載っていた。「まだ冬眠してないの?」という素朴な疑問が頭をもたげたが、記事は冬眠についてはまったく触れていない。冬の真っただ中に「冬眠しない(できない)のはなぜ?」という視点に軸足を置いた記事にするべきだったのでは。

2月25日 テレビで「ミソ味」のキリタンポのことが話題になっていた。キリタンポに何味があってもかまわない。でも発祥の地鹿角の人たちは複雑な心境だろう。キリタンポは鹿角でいわば冬の家庭料理。元々はマタギや鉱山で働く人の食習だったものを、地元産の独特の「しょうゆ」を味わうための家庭料理に昇華させたものだ。鹿角の人たちは「地元以外で食べるキリタンポはすべてまずい」と断言する。しょうゆの味が違うからだそうだ。「たまり」に近い濃くて甘くて芳醇な香りのするしょうゆだった。こうなるとミソ味のキリタンポは容認できないのではないだろうか。

2月26日 もう2月も終わり。今年はかなりの忙しさでバタバタの日々。これは健康診断の結果が大きい。「自分に残された時間は多くない」とリアルに感じてしまったせいだ。いつ仕上げてもいいやとダラダラ進まなかった「続・秋田学入門」の原稿を2週間ほどで集中して完成させ、3月に出る本や半年ぶりのDM通信のための編集準備などをルーチン作業の合間にほとんどやっつけてしまった。やればできることをコロナや年のせいにして先延ばししていただけなのだ。3月に入ってヒマになっても、今度は来年の「創業50年史」のための編集準備に入ろうと思っている。忙しいと余計なことを考えなくて済む。
(あ)

No.1044

放浪の天才画家 長谷川利行展
(毎日新聞社)

 今年はコロナ自粛ということもあったのだろうが、けっこう県内の展覧会を見て回った。でも心揺さぶられるような絵や展示、イベントは何ひとつなかった。幼稚でこけおどし、前宣伝だけ派手な展覧会ばかりだった。秋田に住んでいるので地元で世界的な芸術家の展覧会を観ることは不可能だ。たいていは東京までわざわざ観に出かけいく。印象に今も残っているのはクレーに始まってピカソ、バスキア、横尾忠則、長谷川利行、井上有一、田中一光、セバスチャン・サルガド等々だ。今もその時のカタログを見直すし、展覧会で受けた衝撃をまざまざと思いだすことができる。こんな思い出を身体の中に一杯詰め込んで消えていくのは幸せなことだし、活字とは違う絵画芸術の奥深さにもいまさらながら驚いてしまう。最近、ある絵ハガキで長谷川利行の絵を観て、20年近く前に見た展覧会のことを思い出した。無性にあの時の感動を呼び戻したくなって、古書で探し出したのが本書だ。展覧会用につくられたカタログなので定価はない。3500円ほどだったが、流通していないものなので安いものだ。もう印刷が薄れかけているし、半分がモノクロページで、展覧会の感動とは遠いのがちょっと当てが外れた。

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