Vol.1140 22年11月5日 週刊あんばい一本勝負 No.1132

満天星がようやく赤くなった

10月29日 千秋公園を抜け市街地ど真ん中に出て駅前周辺を散策し帰ってくる。「文化創造館」の展示を覗いて、駅前の「オーパ」というショッピングセンター(?)に入った。地下に格安イタリアンのチェーン店が入ったというので見学。オーパの1階に食料雑貨店があり、珍味の類をゲット、ワインを見ていると若い女性従業員が「私、ソムリエの資格持ってます」と話しかけてきた。ドイツの辛口のワインが目玉商品のようで値段は3000円台。毎日飲むのは1500円台だから、ちょっと値段帯としては無理だが、なかなか説明のうまいソムリエで今度来たら買いそうだ。

10月30日 韓国映画は『パラサイト』が面白かったのでみるようになった。『弁護人』は80年代の軍事政権下で学生運動の弾圧を描いたもの。E・H・カーの「歴史とは何か」という本の読書会を開いた学生たちが共産主義者として逮捕され拷問を受け、それに異を唱えて立ち上がった弁護士の物語だ。そういえば朴正熙大統領が狙撃されたのは1974年だ。狙撃手は在日韓国人の文世光で、ピストルは大阪の交番から強奪されたもの。弾は大統領に当たらず隣の大統領夫人に命中、夫人は死亡した。この夫人の娘が先の大統領だった朴槿恵だ。獄中の人となった文世光の裁判調書はいまだ公開されていない。文世光は韓国語が書けず日本語による自筆で調書を書いていた、という。

10月31日 今日で10月も終わり。今年の日本シリーズは面白かった。普段、巨人戦しか見られない(見ない)環境にいるので、まるで巨人とは違う質の高い、緻密な野球を目の当たりにして、いまさらながらプロスポーツのレベルを見直した。逆に言えば巨人というのは本当にデタラメで傲慢でインチキな組織であることを再認識。

11月1日 庭の満天星がようやく色づき始めた。今年はめっぽう遅かった。庭師の話によれば「満天星だけでなく、庭の木全体がかなりくたびれています」ということ。40数年前に家を建てた時に植えたものばかりだから、もうかなりの樹齢の木々である。生き物には寿命がある。

11月2日 てっきり今日は旗日(文化の日)だと思い込んでいた。週末や祭日は朝ごはんを食べないので、夜寝る前、カミさんにそのことを告げると「なんで?」と怪訝な顔をされた。ここで初めて明日が平日だということを知ったのだから、あぶないあぶない。

11月3日 新聞などを切り抜いてスクラップするのが日常だが、液状のアラビック糊を使っている。この糊に対してはいつも不完全燃焼的な気分を持ち続けている。2,3日使わないとスポンジキャップの部分が乾燥して肝心の糊が出てこなくなるからだ。で、今日ふと思った。キャップの乾かない糊をつかえばいいのではないか、と。そこで固形のステック糊があることに気が付いた。いつものように気が付くのが遅いが、これなら少なくとも乾きのイライラから抜け出せそうだ。さっそく通販で注文した。

11月4日 一日のうち近所の医院と歯医者、2カ所をはしごした。ひとつは健康診断を受けている大病院の紹介だ。大病院から引き継いで逆流性食道炎のお薬をもらうためだ。もうひとつの歯医者は奥歯に不具合が生じたため急きょ予約を入れたもの。まあどちらも「行きつけ」だ。こうした「かかりつけ医」がいるというのは何とも心強い。それにしても70代に入って病院に通う頻度は確実に高くなった。
(あ)

No.1132

リバー
(集英社)
奥田英朗

 よりによってこの忙しい時期(9月)に奥田英朗の新刊だ。656ページ、厚さが4センチ、重さ700グラムの犯罪小説である。時間をやりくりし早めに寝床に入って読み進めることを3日間続けて読了。殺人事件やミステリー、刑事ものは苦手なのだが、奥田の本は例外だ。渡良瀬川の河川敷で相次いで女性の死体が発見される。十年前の未解決連続殺人事件と酷似した手口が街を凍らせていく。かつて容疑をかけられた男。取り調べを担当した元刑事。娘を殺され執念深く犯人捜しを続ける父親。若手新聞記者、一風変わった犯罪心理学者……人間の業と情を抉る無上の群像劇で、奥田得意のクライム・ノベルである。でも、今回はなんだか今ひとつ物語にすんなりと入りこめない苛立ちがあった。犯人が分かってから考えたのだが、誰かの何かの作品で前にも読んだような気がしたのだ。その理由はすぐに分かった。数日前に観た映画『怒り』だ。この内容(物語の構造)が奥田の本と似通っていたのだ。映画は吉田修一の作品を李相日監督が映画化した群像ミステリーだ。映画というメディアのせいもあるが、豪華な俳優陣によるオールスターキャストで、ある殺人事件の犯人を探る迷宮を描いている。あの映画の迫力に負けている。吉田修一に後れをとった、というのが正直な感想だ。次回作に期待したい。

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