Vol.1145 22年12月10日 週刊あんばい一本勝負 No.1137

事典か辞典か

12月3日 昨夜も「和食みなみ」で作家のSさんと飲み会。午前中に取材に来ていた地元紙の女性記者も一緒で、3人でのにぎやかな宴席1週間後にはモモヒキーズの忘年会もここ。その後に予定している家族飲みも同じ場所だ。もう20年以上通い続けている店だが、不思議なことに一度も「飽きた」と思ったことがない。遠方からのお客さんが来ると、普段は行ったことのない評判の店に連れていくことがたまにある。でもまあほとんどが評判倒れだ。けっきょくはこの店に戻ってきてしまう。

12月4日 大荒れの一日だったが雨のすき間をぬって夜の散歩。ところが路上はアイスバーンで歩行困難。今日は五城目の森山登山の予定だったが、昨日午前中にリーダーから電話があり「山中はアイスバーンのため危険なので中止にします」と連絡。山中ではアイゼンをはいて登ることもありで、それはそれで楽しい。でも下りが問題だ。素人技術でアイスバーンの急坂を降りるのはハードルが高いのだ。だからリーダーは常に「下り」最優先で考えて物事を決断しなければならない。

12月5日 「菅江真澄」の言葉や関連(人物・地理・書誌)事項を網羅した、いわゆる菅江真澄「辞典」なのだが、どちらかというと「事典」のニュアンスに近い。「辞典」は英語でdictionary。言葉や文字を並べてその意味や字句を解説すること。いっぽう「事典」は英語でencyclopedia。事柄(事物や事象を表す語)を集めて並べて解説し知識を身につけること、とある。う〜ん、どっちだろう。最後は著者が決めることだが、読者がどう判断するかも大切な判断材料だ。

12月6日 月はじめに税理士が来て経理チェックをする。もう40年以上一度も途切れることなく続く恒例行事だ。昨日がその日だったが担当の方から1枚の紙を手渡された。事務所名が替わりましたという通知だった。Aさんは後期高齢者になる直前で勇退、新しい人に会社を譲ったのだ。はじまりがあれば終わりもある。

12月7日 数年前、ピロリ菌を除去した。その副作用で逆流性食道炎になり、いまその薬を飲んでいる。大きな病院に定期的に薬をもらいに行くのが面倒になってきたので、最近、近所のK医院で薬をもらえるようにしてもらった。これが怪我の功名で、うまいぐあいに「かかりつけ医」ができたアンバイになった。先日、薬のついでにインフルワクチン注射をうってきた。薬で気になることがもうひとつ。最近テレビでしきりに「半夏厚朴湯」という漢方薬のCMが流れている。ノドのつかえや不安神経症に効くと謳っている。ノドの痛みと不安神経症の関係があまりに意外というか唐突で驚いた。

12月8日 このごろお気に入りの出版社は地図で有名な昭文社だ。「地図でスッと頭に入る世界」シリーズは、ほとんど持ってるし、同じく「図解でスッと頭に入る歴史」シリーズも同様だ。ひどい方向音痴で地図を読むのが苦手だから、この「世界」と「歴史」の両シリーズには本当にお世話になりっぱなしなのだ。このほかにも全国47都道府県の「トリセツ」シリーズというのもあい、地図例題の多さと正確さに脱帽するほかない。トリセツの副題は「地図で読み解く初耳秘話」だ。

12月9日 朝からシャチョー室を使って写真撮影。カメラマンは長い付き合いのKさん。作品はモノクロだが、切り絵なので白と黒の紙の間に微妙な隙間がある。これがかすかな影になって画像に映り込んでしまうのだ。大の男が3人、ああでもないこうでもないと、狭いシャチョー室で悪戦苦闘、夕方5時前にどうにか40数葉の作品を撮り終えた。夜は和食みなみでモモヒキーズの忘年会。撮影の解放感もあって少し飲みすぎてしまった。
(あ)

No.1137

目の見えない白鳥さんとアートを見にいく
(集英社インターナショナル)
川内有緒

 このところ「井上ひさし」の本に夢中でトイレの置き本も寝床用も外出用文庫もすべて彼の本だ。そのなかの一冊に「藪原検校」に関するエッセイがあり、昔から盲人に与えられた官位(検校)と、盲人と東北地方のつながりを初めて知った。本書は半年前に買ったまま読む気力がわかず、ツンドクのままだったが、この井上本のおかげで、「盲人」に目が覚めた。「一直線で正解にたどり着いてしまう解説(コミュニケーション)はつまらない」という、全盲で現代美術の好きな白鳥さんと、美術館巡りをするノンフィクション作家の対話の記録である。これは井上ひさしが導いてくれた「未知の世界」への始まりかもしれない。川内の本は昔から好きで、これまで4冊ほど読んでいる。本書を読む限り主役の白鳥さんはかなりの個性派だ。それは「優生思想」に関しての考え方にも表れている。ほとんどの人に優生思想はある。差別や優生思想は自分の中にある、というのが盲人・白鳥さんの正直な考えだ。さらによく巷で行われている視覚障害者の気持ちをわかるためにアイマスクを付けて街を歩くイベントにも懐疑的だ。人はただ寄り添うことしかできない。だから他人の頭の中に入り込めない。視覚障害者の気持ちになれたと思い込む時点でアウトだ、と断言している。かなりの点数の美術作品がカラーで観ることができるのも本書の特徴だ。

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