Vol.1146 22年12月17日 週刊あんばい一本勝負 No.1138

もう「十大ニュース」の時期になったか

12月10日 盛岡出張。知り合いの方の写真展を見て、友人と会い、少し秋田以外の情報を得てくるつもりだ。新幹線に乗るのは本当に久しぶり。もうずっと「閉じこもり・ひきこもり」が常態化している。だから、外の世界が自分の思うような場所から勝手に変なところに移動しているのでは、という恐怖感さえある。

12月11日 雨だが今日は近場の岩谷山。1時間もかからず山頂まで行ける山だ。下りてから麓にある温泉ユフォーレで食事をして、今年最後の山は終わり。靴納めだ。それにしても昨日の盛岡はいろいろと刺激的で、ぐったりと疲れて帰ってきた。最後は古本屋を回っていつものように「自舎本」を7、8冊買い集め、それが荷物になってしまったが誤算だったなあ。

12月12日 師走の月曜日、人生は思うように前には進んでくれない。週末は盛岡に出かけていろんな刺激を受けてきた。翌日は近場の、今年最後の、雪の降っていない、落ち葉の、気持ちいい山を歩いてきた。クマ棚とナラ枯れと新茶の香りのする山だった。

12月13日 今週はずっと「曇りのち雪」の天気が続く。毎日のように小さな用事が入っている。来客があり打ち合わせがある。読みたい本はたまる一方で、書く予定の原稿もほったらかし。とにかくその日の用事が最優先で、その周辺をグルグル回っているうちに一日が終わってしまう。午後は3時半ごろから、もう外は薄暗くなりはじめる。本格的な冬がはじまったのだ。

12月14日 今日あたりから10大ニュースを話題に書いていく予定だ。毎年、この時期になると役目を終える手帳の最後に「今年の10大ニュース」を記す。もう恒例になった習慣だが、過去の手帳を見返す時、この10大ニュースがことのほか役立つことに気が付いた。この手帳の最後を読むだけで、その年の舞台背景が浮かび上がってくるからだ。20年前、1年間の出来事を10項目に絞るのが大変だった。いまは逆に年間10本の「個人的事件」を探すのに四苦八苦している。

12月15日 予報通り昨日から大寒波襲来で路上はコチコチのアイスバーン。こうなると雪による車の事故が増えるのは必至。簡易アイゼンのはか小スコップ、けん引綱、手袋、バッテリー関連などの自動車雪用レスキュー用品も買い求めてきた。散歩の途中で派手に転倒して一瞬意識不明になった事件は今年の2月のことだ。そろそろ1年近くなろうというのに打撲した両手の親指の付け根あたりには、まだ歴然と痛みが残っている。今冬は「とにかく転ばない」ことが目標だ。両手の痛みが残っているのは、油断から自分を護る、いいお守りなのかもしれない。

12月16日 今年だけでコロナ・ワクチン4回、インフルエンザ・ワクチンも1回。胃カメラも2回のんだし歯医者には10回以上。でも、とりたてて健康に重大な問題があったわけではない。逆流性食道炎に罹患したのは大きかったが、他はまあ成り行きで、なんとなくの病院通い。よくいえば病院が身近になった、年とともに病院に行くことが苦痛ではなくなってきた。歯医者はもう普段使いの近所のスーパーだ。身体のちょっとした不快感への耐性が無くなっているのも原因なのだろう。
(あ)

No.1138

天路の旅人
(新潮社)
沢木耕太郎

 う〜ん、この本は評価が分かれるだろうなあ。もちろん面白いのだが、いつもの沢木の本が持っている「意外さ」や「驚き」「新鮮さ」や「ダイナミズム」がなんだか薄いのだ。第二次大戦末期に中国大陸の奥深くまで「密偵」として潜入した日本人の「旅の記録」である。徹底的にこの主人公の「旅の仕方」にこだわって、その旅程を丁寧になぞっていく。580ページの本文中、8割がただひたすらこの旅の「記録」だ。その背後の戦争や時代背景には(意識的にだろうが)ほとんど触れられず、ひたすら主人公の旅を几帳面に記録し続けるだけなのだ。名作「深夜特急」の戦争版青春記を期待した向きには、ちょっと外れだったかもしれない。プロローグとエピローグに当たる2章分は沢木個人の取材余話に充てられている。だからこの2章は興味深く面白いし、いつもの沢木の本である。沢木自身はこの部分にしか登場しないのだ。著者はこの本を書くために25年の歳月を費やしたという。でもこの年月の長さが良くも悪くも物語のダイナミズムをそいでいるのかもしれない。「新たな旅文学の金字塔」を期待していた沢木ファン(私もその一人)も多いが今回は評価が分かれるだろうな。

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