Vol.1166 2023年5月6日 週刊あんばい一本勝負 No.1158

「ChatGPT」をちゃんと知りたい!

4月29日 山の予定のない週末だ。もう自分の都合だけで事は運ばない。老後は、自分が思っていたものとはずいぶん違う。お金の問題、人間関係、健康と家族……何ひとつすんなりといかない。人間は死ぬまで重い荷を背負って生きていく動物なのだ。「老後はバラ色だ」などとほざいている御仁がいるとすれば、よっぽどおめでたい人物に違いない。人間の喜怒哀楽は実は年齢とは全く関係ない、と最近ようやく気が付いた。

4月30日 面白い本を読んだ。人気作家・堂場瞬一が2020年に出した小説『インタビューズ』(河出書房新社)だ。1989年から2019年まで、毎年年末に渋谷で「その年の一番印象的なことを聞いた」100人のインタビュー集といった体裁をとった「フィクション」である。ノンフィクションの手法を使って書く虚構というスタイルは予想外だ。昔インタビューに応じた人の子どもの親が、ひょっこり違うテーマで別の年に登場したりする遊びも可笑しい。

5月1日 GWがはじまった。年1回の雪山の鳥海山直登山行がこの時期の定番がだったので、このGWに合わせて体調を調整したものだが、もう体力的に鳥海山は無理。一緒に登ろうと誘ってくれる人もいない。目的を失ってしまったGWは「天気のいい間の抜けた長い休日」という意味しかなくなった。毎日机の前に垂れこめて、刊行する当てのない原稿を書くしか術はないのだが、これが人生だ。

5月2日 朝晩はまだ冷えるので晩酌は焼酎のお湯割り。カミさんはもっぱら日本酒でだ。共通で飲むのはワインだが、つまみを「選ぶ」難点がある。最近はもっぱらアヒージョだ。小さなフライパンにオリーブオイルを敷きニンニク、鷹の爪、塩味はアンチョビ。具材は冷蔵庫にある野菜、魚貝の缶詰、肉やチーズもOKだ。調理したフライパンごと食卓に出せるし、フランスパンがあれば言うことはない。もちろん作るのは私だが、まだ一度も敵からクレームが来たことはない。とにかく簡単でうまい。

5月3日 GWなので静かな環境でしっかり仕事をしようと出舎。ところが例の隣家の解体工事のキリン(ブルトーザ―)がここぞとばかりにフル稼働中だ。朝から震度3並の揺れが続き、仕事場は食器類の触れ合う音で音楽がいらないほど。たまらず駅前まで逃避し、喫茶店で仕事。帰りは駅弁(牛めし)を買い近所の公園で食べた。とにかく事務所に戻りたくない。牛めし弁当は1100円、ふだん口にすることのないペットボトルのお茶も買ったから、ずいぶん高いランチになった。これもあれも解体工事のせいだ。

5月4日 「週刊東洋経済」という雑誌を丸読みした。「ChatGPT」の特集で、AI時代の仕事術革命を徹底取材したものだ。もしかすればiPhoneの登場よりも私たち出版業界にはこのChatGPTのほうが大きな影響を与えるのかもしれない。私個人は環境的にスマホがなくてもパソコンで充分だが、ChatGPTを実装するかしないかで、仕事上の大きな格差が出てくるのは間違いないようだ。いやはやすごい時代になってしまった。

5月5日 GWも終盤。GWだからと言って張り切ってレジャーだ読書だグルメ三昧だと、大騒ぎしたのは昔のはなし。来客もメールもトラブルもなく、静かにいつのまにか去っていくGWというのが一番だ。年のせいだろうか、プロ野球がつまらなくなった。TVを見ていても途中でチャンネルを変えてしまうことが増えた。プレーする時間よりも何もしていない「間合い」が長すぎるのだ。息もつかせぬ展開という迫力が野球には欠けている。
(あ)

No.1158

流人道中記・上下
(中公文庫)
浅田次郎
 江戸時代末期、元旗本の犯罪者と与力の若者が江戸から奥州街道の果てにある青森・三厩までを旅をする物語である。旅をするのは「切腹を嫌がって」蝦夷地に流刑になる大身の旗本と、まだ20歳にもならない若き与力だ。一種のピカレスクロマンのようでもあるが、姦通の罪を犯したとされる旗本・青山玄蕃には「恥をさらしてまで生きる理由」があった。一方の見習与力の石川乙二郎には、その深い苦悩や思慮を窺う思慮はない。それぞれの人生の苦悩と複雑な事情が、旅と共に少しずつ明らかになるのだが、大好きな映画ジャンルの「ロードムービー」の時代小説版といったところか。道中で行き会うのは、父の仇を探す侍、無実の罪をかぶる少年、病を得て故郷の水が飲みたいと願う女……そうした難題を流罪になる犯罪人の玄蕃が、見捨てず、武士の心意気で、救いながら物語は進行する。その不可解な流人の振る舞いに翻弄されながら、もう一人の主人公である若き見習与力は「武士とは何か」を自問しながら、玄蕃に触発されて成長していく。そしてラストシーン。蝦夷松前藩へと玄蕃が引き渡されるところで物語は終わる。

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