Vol.1172 2023年6月17日 週刊あんばい一本勝負 No.1164

Gメールが送れない

6月10日 今週の写真は近所にある「広面近隣公園」で牛肉弁当を食べるところ。なんだか都会の箱庭のようなおしゃれ公園にも見えますね。昨日は気分転換に河辺のユフォーレで昼風呂にはいってきました。帰り道でキツネに会いました。猫ほどの小さいやつで、年寄りなのか動作がのろく、いつまでもじっとこちらを見て、逃げません。ロードキルで死体のキツネやタヌキはよく見てるのですが、生きたキツネというのはめったに見ることがありません。なんだか得した気分になりましたが、じっとこちらを見つめて、「何とかしてよ」と自分の窮状を訴えているような哀れな目をしていました。どこか悪いのかもしれませんね。

6月11日 近所のスーパーで買い物をしながら、ぼんやりと買い物客を観察していたら、客の全員がマスクをしていた。まだ感染が怖いのか、それとも他者の目が気になるのか。たぶん後者なのだろう。コンビニでコーヒーを飲んでいたら、横のタバコ販売ブースにタバコを求める客が多くて忙しそうだった。それも女性客が多いのが意外だった。書を捨てて町に出て、人を観察するのは面白い。

6月12日 昨日は新聞紙面そのものがスカスカになるほど切り抜きの多い日だった。まずは「改正入管法成立」のニュース。じっくり読まないと意味がよくわからない記事はとりあえず切り抜いて、あとでじっくり読む。特集記事の「アフリカの巨大パイプライン・ビジネス」も知りたかったこと。さらに「図書館資料ネット送信 運用不透明」という文化欄の記事にも興味惹かれる。「ジャングルに墜落40日 子ども4人の生存確認」もビックリ。コロンビアのアマゾンの出来事だ。毎日ニュースになるチャットGPTはもう定番になりつつある。「折々のことば」も池内紀の「孤独でいるためには、まわりに人を必要とする」という言葉なので、ファンとしては切り抜いておくのが礼儀だ……とまだまだあるが、まあこのへんで。

6月13日 Gメールで送信されてきたアドレスに返信するとエラー表示される。そんな状態がここ数カ月続いていたことも遅ればせながら分かった。Gメールに限って受信はできるが、なぜか送信がダメなのだ。考えると、受信できないまま記録も残らず闇の中に吸い込まれていくメールも山ほどあるのかもしれない。そう思うと夜も怖くて寝られない。毎日メールのやりとりだけで仕事をしている安易な環境に不安を覚えた出来事だ。

6月14日 昼はもっぱらめん類だ。ソーメン、ジャージャー麺、冷やし中華にざるそば、といったメニューを日替わりで食べている。めん類の具材は、冷やし中華の具材が合う。キュウリにシナチク、卵焼きにハム、これらを準備しておけば十分だ。意外なところでは「カニカマ」がつかえる。これがめっぽうめん類と相性がいい。

6月15日 散歩の途中、例の広面近隣公園に立ち寄って、ベンチでボーっとする。周りは樹木、公園は平坦な草地で真ん中に土を固めたグラウンドのようなものがある。大きさや場所から考えるに、これは大学病院の緊急ヘリポートでは、と思ったりもする。公園に行くと、きまってその後は体がかゆくなるのが問題だ。トロロを食べると身体がかゆくなる、あの感じだ。毎日でもこの公園でボーっとしていたいのだが、このかゆみが問題だ。何かいい方法はないものだろうか。

6月16日 アマゾンからユーズドの本が届いたが……注文した記憶がない。他のことならともかくこと書籍に関しては著者や書名、版元名を見れば、「自分が注文したか、そうでないか」ぐらいはわかる。本は中澤日菜子という作家の『お願いおむらいす』(小学館)。都内で開催されている「グルメ・フェスティバル」を舞台にした連作小説集だ。まあこれも何かの縁、と読み始めたら、案外面白かった。ということはやっぱり自分がチョイスしたものなのかなあ。……認知症がはじまったのだろうか。
(あ)

No.1164

海の鬼
(三島書房)
伊藤永之介
 うちから『伊藤永之介童話作品集』を刊行しているSさんから電話があり、今年は永之介の生誕120周年なのだそうだ。そのこともあり市立図書館明徳館で永之介の著作コーナーをチェックしていたら、これまで見たことのない「薄っぺらで、粗末な、ボロボロの」永之介本を見つけた、という。Sさんも読むのは初めてだそうで、「山の人」である永之介が「ハタハタ漁」について書いた作品だそうだ。それは珍しい。さっそく明徳館に出向いた。作品はすぐに見つかった。持ち出し禁止本だった。8篇の短編からなる作品集で、その最初の「海の鬼」が該当作だった。戦後まもなく汽車の中で再開した若い漁師と女工の、淡い回想の恋物語である。とりたてて印象に残る作品ではなかったが、戦前のハタハタ漁のシーンはかなりの迫力だ。当時の男鹿の村の各家ではハタハタ漁だけのために舟を持っていたという。群来が来ると各家の舟が一斉に、まるで戦争のように、折り重なりながら港から海に出る。なかには舟同士が衝突し真っ二つに折れてしまう事故もあった。本が刊行されたのは昭和22年。版元も東京ではなく大阪で、造本は小冊子といったほうが当たっている。粗末な本文用紙に、印刷はかすれて判読不可能なタイプ印字、装丁はなんとあの恩地孝四郎なのだが、必要最低限の手しか加えていない。

このページの初めに戻る↑


backnumber
●vol.1168 5月20日号  ●vol.1169 5月27日号  ●vol.1170 6月3日号  ●vol.1171 6月10日号 
上記以前の号はアドレス欄のURLの数字部分を直接ご変更下さい。

Topへ