Vol.1197 2023年12月9日 週刊あんばい一本勝負 No.1189

外の空気を吸う

12月2日 今週のHP写真も説明が必要だ。家の玄関屋根なのだが、書斎の真下だ。よく見るとクルミの欠片がいっぱい降り積もっている。上空からカラスがここにクルミを落とし、割って食べていた「食べかす」だ。書斎の窓を開けることがないので気が付かなかった大発見である。久しぶりの好天の土曜日。横手でお話をする会があり、これから出かけるところ。このところずっと仕事場に閉じこもって原稿を書いていたんで、いい息抜きになりそうだ。目いっぱい楽しんでこよう。

12月3日 横手には一泊。おしゃべりとお酒の楽しいひと時を過ごしてきた。お昼はいつもの「居酒屋日本海」。ヒロシさん手打ちそばを食べてきた。講演会の後、おじゃました店は、横手の店なのに能代出身だという女将だった。同じ年ごろで40年ほど前の能代の話で盛り上がってしまった。当時、能代で雑誌をつくったり、文化活動していたメンバーとは全員知り合いだったが、彼女もその一員だったのだ。横手で能代の話で盛り上がるというのもヘンな話だが、楽しかった。

12月4日 週末に仕事とはいえ久し振りに外泊、外の空気をいっぱい吸い込んできた。そのせいもあり昨夜は熟睡、朝の目覚めもさわやか。やっぱり不定期でもいいから、外に出てシャバの空気を吸うのは大切だ。週はじまりにフレッシュな気持ちで仕事場に立つことができるのは、うれしい。そんなわけで、誘われれば、いつでも外に出ますのでよろしく。

12月5日 ハタハタが獲れずに一匹も食べなかった去年のような年があっても、もう驚かない。30年ほど前、秋の鳥取のホテルの朝食にハタハタが出て来た時は驚いた。秋にハタハタかよ、と。冬に秋田沿岸に産卵に押し寄せてくる季節ハタハタしか知らなかったのだ。ちなみにハタハタ漁獲量の日本一は鳥取か兵庫だったはず。80年代から漁獲量は但馬沿岸のほうが多いのだ。今年も秋田の季節ハタハタは口に入らない可能性が大きいようだ。

12月6日 朝に必ず新聞を読むのは「ラ・テ欄」でチェックをした番組予約するのが目的でもある。今日はBSP4K(これは初めて知ったチャンネルだ)で夜8時から「英雄たちの選択ー出羽庄内藩」がある。これは見逃せない。一押し予約だ、と張り切ったのだが、わがテレビの番組予約には、このBSP4Kなるチャンネルがどこにも表示されない。いろいろガチャガチャやっても、よくわからない。

12月7日 秋の大雨のために閉鎖工事中だった「近隣公園」は11月いっぱいで改修工事が終わった、はずなので、久しぶりに青空の広がった昨日、飲み物持参で出かけてみたら……まだ閉鎖中だった。芝養生のためだ。さらに入り口の柵に「クマのフンが発見された」ため、周辺散歩にも気を付けるよう看板が出ていた。昨日のブログのBSP4Kの件は、早速に友人から電話をもらい、「新しくチューナーを付けなければ見られません」と言われた。それがいやなら4Kや8Kの内蔵された新しいテレビを買うしかないのだそうだ。しばらくテレビを買い替える予定はないし、チューナーもつける気はない。 

12月8日 西木正明さんが亡くなった。まだ直木賞を獲る前(作家になる前)、平凡出版の社員時代に秋田市でお会いしたことがあった。名刺には「鈴木正昭」とあり、「平凡出版なので平凡な名前なのかな」と、愚にもつかないことを思ったのを、いまもはっきり覚えている。西木村の実家のそばを通るたび、彼の作品のあれこれを思い浮かべ、その取材力の深さに、尊敬の念を強くしたものだ。コロナ禍前の大曲の花火の会場でお会いしたのが最後。居丈高なところのまったくない、品格のある作家だった。ご冥福をお祈りしたい。
(あ)

No.1189

悪童日記
(堀茂樹訳・ハヤカワ文庫)
アゴタ・クリストフ
 もう20年ほど前、本書が読書界の話題になったころにミーハーとしてはさっそく読みだしたのだが、すぐに投げ出してしまった。舞台背景となる複雑なヨーロッパの状況がよく理解できなかったためだ。物語に入り込む前に投げ出してしまったのだ。いま少しは賢くなって、この小説の時代背景を理解できる。この歴史的知識があって読む本書は実に面白いのだ。物語の舞台は歴史的にも地理的にも特定されていないがハンガリーだ。20世紀中ごろの中部ヨーロッパの歴史的事実に対応している。戦禍はなはだしく飢饉のせまる都会から、母親が双子の息子2人を連れて、自分の母親である祖母の家に疎開するところから物語は始まる。この祖母が文盲、不潔、粗野で吝嗇、夫殺しの過去のある「魔女」だが、なんとなく憎めない存在だ。双子は持ち前の「天才」を発揮して一心同体で、たくましく、したたかに生きのびる。労働を覚え、自学自習して、冷酷をわがものにして、恐るべき成熟に達していく。兄弟は秘密のノートに日々の見聞と体験、非行の数々を作文の形で書きつけていく。そのノートが本書である。ヨーロッパの悲劇を子供の目で見つめた、大人の良識を破る、ハードボイルド痛快悪ガキ物語である。

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