Vol.1206 2024年2月10日 週刊あんばい一本勝負 No.1198

サヤエンドウはオマーン産

2月3日 先日の事件のコンビニに寄るが、もう普通に戻っていた。家に帰ると半日ドックの健診結果が届いていた。「要再診」はなかったが、「診察所見」には、「異常なし」としながらも、いろいろと問題点が列挙されていた。ドック以降、体重増が気になって、またしても懲りないダイエットをしている。しばらくは味気ないランチになりそうだ。来年のドックには理想の体重で、自信満々、医者の前に立って健康論のうんちくでも垂れたい。いまはそれだけが希望だ。

2月4日 「ネットフリックス」の会員になった。夜はできるだけ自分の原稿を書く時間にとっておきたいので、映画やテレビはBSやBSプレミアムで番組録画して観ていた。そのBSプレミアムがいつの間にやら4Kナントカになり受信できなくなった。一挙に観たいコンテンツ量が減り戸惑ってしまった。ネットフリックスでは初日からずっと「深夜食堂」シリーズを見続けている。

2月5日 「セクシー田中さん」問題はテレビを観てないし、原作漫画も見ていないからわからない。映画「ドライブ・マイ・カー」は村上春樹の原作も映画も両方ちゃんとみた。映画と小説は全くの別物だった。映画のストーリーはほとんど原作の根っこの部分だけを借用しただけで、あとは監督の世界観が貫かれているのだ。特にラストの、ソウルのスーパーでの買い物シーンにはひっくり返りそうになった。原作には全くない場面だった。でも村上春樹から「原作と違う」とクレームが来たという話は聞かない。原作者と映像化する責任者の間でどのような話し合いがもたれたのか。「原作を超えたオリジナリティ」に命を削る映像制作者もいるのだから、一方的な結論の出ない問題なのかもしれない。

2月6日 夕食にサヤエンドウのゴマ和えが出た。カミさんがさりげなく「オマーン産だって」という。なぜサヤエンドウがオマーン産なの。慌てて調べると、日本の冬の端境期に、丸紅あたりの商社がドバイ経由の冷凍で輸入しているのだそうだ。そういえばあのネバネバ野菜「オクラ」が日本語ではなく、英語(アフリカ発祥の言葉のようだが)だったことにショックを受けたこともあったなあ。

2月7日 散歩の途中で目にする店にずっと「閉店中」の札がかかっている。そんな飲食店が3軒ほどある。病気療養中とか店内改装のためとか、都合により、とか表示があるのだが、たぶんもう再び店が開くことはないような気がする。駅前に用事があって夕食もその近辺でとったがアルバイト女性のやる気のなさそうな立ち振る舞いに一挙に食欲までも萎えてしまった。繁華街で飲んでも、タクシーが捕まらないから、歩いて帰れる範囲のところまでしか行けない。飲食店は厳しい、というのを部外者ながら肌で感じてしまった。今年は倒産が多くなりそうだ。

2月8日 秋田のクマ・ニュースが全国区だ。新しい年になっても毎日1,2件の目撃情報が途切れずにある。森の中で想定外の事態が起きているのではないのか。これまでの秋田では起こりえないことと言えば、「イノシシの増加」だ。10年前まで、ほとんどいないとされていた秋田の絶滅危惧種が、森の中で大きな顔でのさばりだし、エサを食い荒らし、その影響をクマが受けている。これはけっこう説得力があるなあ。

2月9日 朝のいつものルーチンの途中、冷蔵庫をきれいにしようと、突然思いついた。1時間ほどかけてきれいになかを掃除し、外の天気と同じように晴れ晴れとした気分になる。それにしても、わがシャチョー室の家具、備品の類はすべて20年以上も前に買ったものばかり。かなりくたびれてきたとはいえ、見た目はまだ現役感にあふれ貧相さは感じない。当時、大塚家具でまとめてそろえたもので、たぶん品質がいいのだろう。このまま買い替え不必要で乗り切れるかも、と考えると、わが身の行き末の方に不安を覚える。新しい家具に囲まれ老いさらばえるというのは、なんだかわびしすぎる。
(あ)

No.1198

ワンちゃん
(文藝春秋)
楊逸(ヤン・イー)
 今年初め、県北の村でたまたま会った中年男性は、「嫁が台湾人なので」と問わず語りに教えてくれた。ああそうか、農村ではすっかり外国からの花嫁が定着していたんだ、とあらためて気が付いた。フィリピンや中国からの花嫁は80年代後半から静かにゆっくりと村に溶け込み、もう過疎の村ではそれが「普通」で「日常」になっている。その現実を突然目の前に突きつけられ、本書を読みだした。著者は芥川賞候補になった中国人作家だ。64年、ハルビン生まれで、お茶の水女子大を卒業しているから、この物語は実体験ではなさそうだ。四国の独身男たちを中国に連れて行き、お見合いツアーを仕切る、たくましい中国人女性が主人公だ。でも物語の核心は、花嫁探しをする「貧相な」日本人ではなく、主人公自身の来日の過程のほうにあるところがミソだ。中国籍の若い女性が外国の言葉(日本語)で書いた小説なので、ちょっとぎこちない文体もある。それが逆にいいスパイスになっているような気がするのだが、本書で07年に文学界の新人賞を受賞している。当時は秋田でもフィリッピン花嫁の失踪事件などがあり、作家の山崎朋子さんがわざわざ取材に見え、親しく話させていただいたことなども思い出してしまった。

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