Vol.1215 2024年4月13日 週刊あんばい一本勝負 No.1207

山にはまだ雪がある

4月6日 この1週間ほどの間に3,4回、山に登っている。今年の春山はけっこう雪が多く、クマの出没情報は思ったほど多くない。花はまだ駄目で、もう少し先のようだ。それでも日当たりのいい斜面にはミスミソウ(雪割草)が派手に顔を出し始めていた。2月終わりごろからストレッチと筋トレに励んできたが、この年になると無理は必ず形となって出てしまう。今日は土曜日。いつもの時間通りに起きられなかった。やはりハードスケジュールに身体が悲鳴を上げ始めているのかもしれない。

4月7日 去年の猛暑が脳裏をよぎる。家と事務所あわせて6台のエアコンがある。うち家の2つはもう20年以上動かしていない。去年1台新しいものに買い替えた以外は10年選手の猛者ばかり。一度クリーニングをしなければ今年の夏は大騒動になりそうだ。ところが昨日、とつぜん家電修理の「一人親方」の方が来てくれた。そしてチャチャッとすべてを点検し廃棄処分まで済ませてくれた。カミさん自身も点検依頼をしていたことすら忘れていたぐらいだ。一番ひどかったエアコンは小生の寝室。10年間のホコリを掻き出したら、かなりの量のゴミだったのには恥じ入るばかり。

4月8日 ちょっとした手違いで朝5時半に起きてしまった。天気は良さそうなので、そのまま朝散歩。ルートもあえて普段とは違うコースを選んだ。大学病院裏手から下北手中学校に出て、明桜高校前を通って広面近隣公園経由というもの。家に帰ったらまだ8時前。もう1日の大半のエネルギーを使い果たした感じ。

4月9日 午後からヒマだったので、仕事場で宮部みゆき『火車』(新潮文庫)を読みだした。寝床でチョコチョコ読んでいたのだが、この手のミステリーは一気に読み終えるのがだいご味だ。寝床で読んでいると、時間的制約があり、いつまでも犯人が分からない。というわけで600ページ余りの長編を夜中までかかって読了。カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生を描いたものだが、面白かった。長編はやっぱり一気読みに限る。

4月10日 先日(3日)宇宙飛行士のことを書いたのだが、「若田光一」さんのことを「野口聡一」さんと書いてしまった。連日、県警調べの「クマの目撃」記事は欠かさず読んでいる。私の住む広面の堤敷地区(医学部の真裏)に体長50センチほどのクマがいて、その目撃情報が続いているからだ。この場所は休耕田で、その周りに広大な田んぼが続いている。山から出ると簡単に目撃可能な場所でもある。最近は白鳥の餌場にもなっているからアマチュアカメラマンがよく来る。仕事場から見える場所にクマがいるという事実は興奮するし、怖くもある。しばらくは近づかないほうがいいのかもしれない。

4月11日 今週は晴れの日が続く。軽装で春の花々を楽しむハイキングに行きたいのだが、冬装備の用意もしなければならないのが難儀なところだ。軽アイゼンやスパッツ、冬用ストックに厚手のグローブ……と野暮な格好のハイキングになってしまう。仕事はヒマだし時間もたっぷりある。旅行という手もあるが、これは宿が怖い。せま苦しいホテルの部屋では熟睡できない。暴飲暴食も心配だ。場所や環境を変えたところで、いまさら新鮮な感動に出会えるという幻想はもうない。驚天動地の「事件」が起きるとすれば、たぶん日々の暮らしの中だ。やっぱり事務所が一番かなあ。

4月12日 ちょっとでも時間があると料理を作る。常備菜のようなものを簡単に何品か作り、昼にひとりで食べたり、家に持ち込み晩酌の足しにする。家で料理しないのはカミさんがうるさいからだ。私にとって料理は実用ではなくあくまで趣味。昨日は久しぶりにジャージャー麺のソースを作った。今日のランチはジャージャー麺にしようか。でも上にのせるキューリがない。どうしたものか。  
(あ)

No.1207

吾輩は猫である
(文春文庫)
夏目漱石
 『罪と罰』同様に死ぬまでに読みたいと思っていた本だ。何度か過去にトライしたが、途中で挫折してやめてしまった。思っていたよりも長編なので読み通すのに根気がいる。物語自体は猫の視点で描いたくしゃみ先生の身辺雑記だ。猫の独白部分は改行がまったくなく、延々と古語まじりの先生たちの会話や引用があり、現代人にとれば昔の日本語のような文章が続くのだからやっかいだ。不思議とその文体に慣れてしまうと、まるでタイムスリップしたように、明治時代の失われた日本人の心意気に触れたような気分になり、そのリズムに身を任せると、スラスラと文章が頭に入ってくるから不思議だ。難解な日本語と言っても、舞台はシンプルで、かつ登場人物も限られている。ロシアの長大な小説のような複雑怪奇な表記や人名や行政制度に悩まされることはない。まるでCDで聴いたことのある志ん生の落語を聞いているような心地いいリズムと、明治時代ののんびりとした空気感に包み込まれ、リラックスしてべらんめぃ言葉に酔っている自分に気がつく。毎晩、寝床で数ページを読む生活をつづけて1カ月ほどで読了。著者がこの小説を書いた理由が少しは理解できたような気がした。友人たちの「おもしろおかしい行動」の逐一を、落語っぽい脚色で、楽しく笑いながら読んでもらいたい、というのが著者の執筆の動機としてあったのは間違いない。

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