Vol.1219 2024年5月11日 週刊あんばい一本勝負 No.1211

今年のGWは充実の日々

5月4日 今日は前岳。金山滝コースだ。テーマは「ゆっくり」と「水をセーブ」の2つ。山は思ったほど暑くはなく、前回のように虫に悩まされることもなかった。休憩も3回とり、できるだけ息が上がらないよう、慎重に登った。下山時にテンポよく降りてくるために脚力を残しておく、というのも重要なテーマだ。途中、また大きなカモシカにあった。山頂までは2時間、ゆっくり上ったせいだが疲れを感じな登りができた。下山は1時間20分ほど。まあこんなものだろう。GW中にもう一度山に行きたいが、無理かなあ。

5月5日 昨日の前岳の疲労はない。今日もオーパス口から中岳まで登ってきた。さすがバテたが理由は朝ごはんなしで登ったせい。GW中の好天なのに登山者は多くない。今回の失敗は「中岳で豪華ランチ」をもくろみ、コンビニで「かつ丼」を買い込んだのだが、冷凍でカチカチ、食べられなかったこと。チンしないとダメなんだね、知らなかった。

5月6日 連日登山お終えて一夜たった。筋肉痛も疲労感もない。私はスーパーマンになったのだろうか。しかし昨日の中岳は、いろんな人と出会い、話ができて収穫が大きかった。山で人と会話するのはけっこう珍しいのだ。読書のほうはもっぱら古典ばかり。新刊本に興味が持てず、太宰の「斜陽」や漱石の「こころ」、スイフトの「ガリバー旅行記」といったものばかりだ。

5月7日 GWが終わったとたん雨。GW中に3回山に登ることができた。前岳1回、中岳2回、遠出をしない近場の山だからできた芸当だ。暑さにも対応できる体力がついていたことがわかったのも収穫だった。山以外はひたすら料理と本と映画、身の回りの整理・片付けもこまめにできた。GWはこんなふうに時間を遣えば退屈しないのか。昔からGWを「特別な休日」と思ったことはない。世間が休むからしょうがなく自分もそれに従う、という感じだ。仕事はできなくなるし、混雑する外には出たくない。時間の潰し方がわからず、いやだなあ、といつも思っていた。

5月8日 地元新聞に名門大学の要職に就いた人物のインタビューが載っていた。顔写真を見てすぐ「あッT教授だ」と気がついた。もう何十年も会っていない。秋田大学医学部教授で研究者としても有名な方だった。でも、ちょっと変だ。T先生は年齢的にはもう90歳をこえているはず。なのに顔写真は当時のまま。40年以上前、先生は広面の近所に住んでいて、私は先生の息子さんの家庭教師のようなことを頼まれ、先生と懇意になった。その後、先生は別の大学に転勤し……ということはこの人物は先生ではなく、息子さんのほうではないか。当時、息子さんは15,6歳、それ以後まったく会ったことはない。10代の少年が突然60代の、父親そっくりの大学教授として、目の前に現れたのだ。いやぁ驚いた。

5月9日 先日、ある市立図書館に調べ物があって訪れたのだが、休館日だった。日曜のお昼である。図書館というのはけっこう休みの多い公共施設なのだ。この市立図書館もホームページによれば、毎月最初の平日、毎月第3日曜日、国民の祝日、年末年始、年1回10日間の特別図書整理期間が、休館日になっている。なんとなく図書館というのは1年365日、朝から晩まで自由にいける「無料の開かれた学校」のよう向光的なイメージを持っていたが、もうそんな時代ではないようだ。

5月10日 ここ半年ほどですっかり読む本の傾向が変った。新刊本に興味が失せ、古典や名作と言われる過去の本を読むのが主流になってしまった。それでも現代ものも読む。いまは塩田武士『罪の声』。グリコ・森永事件を「ノンフィクション」を軸に脚色した小説だが、すぐに「一度読んでいる!」と気がついた。でも次の展開がまったくわからない。ということで最後まで読み通してしまった。まあ楽しめたらそれでいい。「損をした」と思わなければいいだけの話だ。

(あ)

No.1211

宇宙からの帰還
(中公文庫)
立花隆
 宇宙飛行士の若田光一さんがJAXAを60歳で定年退職、という記事を読んだ。ちょうど本書を読んだばかりだったので、宇宙飛行士の定年退職というニュースに過剰に反応してしまった。本書は、宇宙から地球を見るという、極めて特異な体験をした人間の内面にいかなる変化がもたらされるか、12名の宇宙飛行士の衝撃に満ちた内的体験を、卓抜したインタビューより描き出した著者の代表作だ。アメリカのとりわけ初期の宇宙飛行士たちの多くは、宇宙で一種の意識の変容体験をしている。宇宙に触れて精神に異常をきたしたり、超能力の伝道者になった人など、「神を見た」宇宙飛行士の姿が多く描かれている。著者自身もその異常体験にはシンパシーをもって描いている。本書が書かれた後、日本からも多くの宇宙飛行士が生まれているわけだが、その代表格といっていいのが先の定年退職した若田さんだ。明るく健康的で、宇宙体験の豊富な若田さんを見ていると、「宇宙から帰って宗教家になった日本人飛行士」という話は聞いたことがないな、と気がついた。アメリカと日本では宗教的風土、一神教と多神教、環境や人種の違いなど、いろんな要素があるのだろうが、「経験」という時間の蓄積によって、宇宙の神秘性や特異性は徐々に消えていく。これからの宇宙飛行士は月に行っても世界観が変ってしまう、などという現象は難しいのかもしれない。

このページの初めに戻る↑


backnumber
●vol.1215 4月13日号  ●vol.1216 4月20日号  ●vol.1217 4月27日号  ●vol.1218 5月4日号 
上記以前の号はアドレス欄のURLの数字部分を直接ご変更下さい。

Topへ