Vol.1221 2024年5月25日 週刊あんばい一本勝負 No.1213

ついにアリが出た!

5月18日 今日は中岳。オーパス側からの登りになる。中岳山頂まで2時間10分。TVで富士山登山の渋滞行列登山を見ると、いったい何が楽しくて山に登ってるんだろう、と首をかしげてしまう。あんな山は頼まれても登りたくない。ヒメシャガはもう終わりに近づいていて、逆に緑が濃くなっていた。前回失敗したカツどんランチは、今回は事前にちゃんとチンした「のり弁」に変えたが、ご飯がボソボソで、これは2回連続のチョンボ。定番のおにぎりが正解なんだろうな。暑さはそれほどでもなく、気持ちいい風が吹いていて、汗もかかなかった。水の消費量も半分で済んだ。この山に身体が馴染みつつあるのかもしれない。

5月19日 朝、若者の大声で目覚めた。日曜日だ。家でカミさんの高校生のための朗読教室に通ってくる子たちだ。昨夜、寝たのは24時ころだから10時間近く寝ていた計算だ。後期高齢者の長時間睡眠はいいことばかりではないというが、前後不覚で爽快な朝の目覚めというのは、気分のいいものだ。

5月20日 毎日ランチを作って食べているのだが、ついに「悪魔」がやってきた。昨朝、突然、台所にアリがウジャウジャ動き回っていたのだ。3日ぐらい前、ソファーで横になっていたら身体にアリが一匹這い上がってきた。こいつは斥候だったのだ。台所に殺虫剤をまき1昼夜たったが、今日の朝もけっこうな数のアリがうごめいていた。アリって厄介だ。昼の料理を辞めるととたんにいなくなるのはわかっているけど……。週初めから、なんとなく気分はすぐれない。

5月21日 円安や戦争、少子高齢化や物価高、24年流通問題とAI技術革新……世の中の大きな変動と「出版」はどのように関わっていくのだろうか。こんな時、昔なら業界紙「出版ニュース」が答えを見つけるための、いろんな情報や知識を文字化し提供してくれた。その「出版ニュース」も数年前、突然70年余の歴史に幕を閉じた。なくなって専門情報誌のありがたさを実感している。長く編集長を務めた清田さんは雑誌廃刊後もお元気なので、いっそ個人的に直接電話をして、いろんなことをお聞きしたい衝動に駆られるのだが、もちろんそこまではしない。自分の頭でヨロヨロ考え続けるしかない問題なのだ。

5月22日 寝室のクーラーのリモコンがまったく作動しなくなった。家電量販店にリモコンを持ち込んだら「ちゃんと電波は出てます」といわれ、今度は個人の電気屋さんに本体修理をお願いすることに。電気屋さんはわざわざ土崎から駆けつけてくれ、点検をして一言、「ブレーカー落ちてません?」……あまりに想定外の答えに一瞬頭がクラっときた。今朝は今朝で洗濯機の排水溝が詰まった。これも急いで水道屋さんに診てもらうが、朝から、ああでもない、こうでもないと、声をからして家の周りを走り回ってばかりだ。何もかもが老朽化し、さびれて、崩壊寸前だ。仕事より生活のインフラを維持し守るのに手いっぱいの日々がやってきたようだ。

5月23日 台所に湧き出したアリの駆除に苦戦中。四六時中、注意深く観察しているのだが、少しずつ出没場所を特定していき、どうにか「隠れ家」の場所を突き止めた。地面から建物の壁を伝わり二階の換気扇にたどり着き、そこを出撃場所にして這い出して来るようなのだ。もちろん確証はない。最近の殺虫剤は化学成分ゼロを謳っている。それでも散布場所が台所なので、口に入るものばかりなので、散布にも気を遣う。なによりも臭いが強烈なのが問題だ。というわけで今週いっぱいはアリとの闘いが続きそうです。

5月24日 今年もまたクマ騒動の舞台は秋田が主役級の役割を果たしそうだ。その陰に隠れて秋田市近郊でもイノシシとニホンジカが頭数を増やしている、という。毎週のように山に登っているのに、カモシカ以外に目にすることはない。私だけが不幸にもシカに遭遇できないのだろうか。これは イノシシもニホンジカも山中にいるわけでなく、どちらかといえば里山や森の中に生息している。クマもこれに近い生態系になりつつあるのだが、このため遭えないだけのようだ。イノシシはともかくシカは群れて行動する。仁別周辺では4,5頭が一緒にいるのがよく目撃されている。いずれカモシカとエサの取り合いをするような事態が出現するかもしれない。そうなるとシカのほうがだんぜん優勢だ。カモシカのご先祖は牛、穏やかで小心ものだから、闘いには向いていない動物なのだ。  

(あ)

No.1213

同時代の肖像
(秋田書房)
袴田憲雄編
 4月に入って「憑かれたように」高校時代の担任だった加藤富夫先生の遺した小説を読み漁っている。妄想や幻影に取りつかれて、結局は実りのない作業に没頭する人間を描いたその多くの作品は半世紀たった今もまったく古びてはいない。小さな身近な話を、より大きなものの喩えとする寓話的な方法で、その短い作家生活の中で4回も芥川賞候補になっている(66回「玩具の兵隊」68回「酋長」69回「口髭と虱」74回「さらば、海軍」)。不慮の事故により49歳で亡くなっているので生前には1冊の著作しかない。死後、秋田書房から2巻本の「作品集」が刊行されているが、これらを合わせても9本の作品が今も読むことが可能な作品だ。10年間という短い創作期間に発表された先生の作品は18本。そのほとんどが「文學界」と「早稲田文学」に掲載されている。予科練の生き残りであり、戦後の瓦礫の風景のなかで、現代の不安と恐怖を、土俗的視座から描き続け、将来を嘱望された作家は、もっと評価されてもいい、と思うのは私の単なる身びいきだろうか。血族や鎮魂といったテーマの重苦しさを嫌う向きもあるだろうが、加藤文学の底に流れている「喜劇性」は、秋田大学時代に所属していた演劇サークルの活動の中ではぐくまれたもののようだ。そうした加藤文学の背景が、肝胆相照らす同志とも言える友人たち7名によって述べられている。加藤文学の奥深さがよく伝わってくる1冊である。

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