Vol.1225 2024年6月22日 週刊あんばい一本勝負 No.1217

大敵の夏対策を

6月15日 30度を超えるというので、あえて前岳(金山滝)に挑戦。去年、まだ暑さが残る前岳に登り、体力的にはそこそこ自信があったのに登りで水を飲みつくし、女人堂までもたどり着けず、ヘロヘロになりながら帰ってきた。この時のトラウマを払拭したい。9時半から登り始めた。暑くて今日は無理そうだなあ、といち早く諦めモードに入ったが、ここでやめれば去年に戻ってしまう。休憩をはさみながらゆっくりゆっくり女人堂まで取り付いた。女人堂には山仲間のF女史がいて、ここで休憩しながらおしゃべり、これで息を吹き返した。前岳山頂まで一挙に駆け上がり、帰りはいつものペースで下りてきた。暑さ対策は「休憩」を30分に一回は入れること。休んでる間にエネルギー補給して身体を蘇らせる。

6月16日 昨日は下山後、家でシャワーを浴び、山の用具の後片付けをしようとしたが疲労困憊、その気力がわいてこなかった。ソファーに横になったら3時間(!)、起き上がれなかった。夕飯は簡単に肉を焼いてステーキ。夜の9時には早々と寝床に入った。今日の朝起きたのは7時。10時間余りコンコンと寝ていた計算だ。大敵「暑さ」の前ではこのていたらくだ。朝一番でシャワーを浴び、少しはシャンとしたのだが、身体にこれだけの疲労が蓄積されていたことのショックは大きい。少しの希望は、かなりの微弱な「風」でも、身体が感知できるようになったことか。風を身体が感じると、そのぶん水を飲む回数が減る。山での風というのは「水分」でもあるのだ。

6月17日 デブの汗っかきに夏は大敵だ。でも散歩や仕事をしていても、わずかな風を感知できるようになりつつある。仕事場のデスク横の窓から吹いてくる西風。この風があればクーラー入らず。散歩で立ち寄る広面近隣公園の木陰のベンチもいい。ここは周りに建物がなく、緑の森の息吹が直接吹きつけてくる清涼感がたまらない。もう一カ所は前岳の山頂。奥岳が正面に見えるベンチに座っていると、その奥岳から直接吹き付けてくるような風が登りの疲れを一挙に癒してくれる。もう2カ所ほど自分だけの極上の「風の居場所」を見つければ、夏は怖くない。

6月18日 いつも行く近隣公園のベンチに野球の硬式ボールが捨てられていた。仕事場に持ち帰り、きれいに洗い、机の前に飾った。小学生のころは野球小僧で、中学で野球部に入ってユニフォームを着て野球をするのが夢だった。足が遅かったので、その夢はかなえられなかったが、ユニフォームやスパイク、硬式ボールなどへの「憧れ」は、今も心の底にくすぶっている。先日は「燃えないゴミ」に真っ赤な野球用ヘルメットが捨てられていた。拾った硬式ボールは汚れがひどく、洗っても汚れは落ちなかったが、握ったり撫でたりして、その感触を確かめている。中学で野球部に入っていれば、自分の人生はどう変わっていただろうか。自分よりヘタな同級生たちがユニフォーム姿で女子にキャーキャー言われていた、あの忌まわしい過去を、いまだに思い出す。

6月19日 第2次世界大戦後の昭和21年(私が生まれる3年前)、満州で捕虜となり、ハバロフスクの日本新聞社に移送された一人の日本人の反乱を描いたのが、井上ひさしの遺作『一週間』(新潮文庫)だ。シベリア抑留という言葉は知っていたが、収容された関東軍などの軍属は60万人もいて、彼らのために部数20万部のタブロイド判の日本語新聞が週三回も発行されていたというのには驚いた。さらに抑留された関東軍には戦時中の階級序列がそっくり残っていて、収容所でもずっとえばり腐ったままだったという。知らないことばかりで驚きの連続だったが、よくこれだけのソ連の日常を事細かく調べあげたものだ。井上の奥さんはソ連通の料理研究家だし、その姉は米原真理さんだ。昨日、録画して観たNHKTV「映像の世紀」で、「史上最大の作戦」と言われるノルマンディの戦いのドキュメンタリーを観た。作戦決行のために会談したスターリン、チャーチル、ルーズベルトの三者はスターリンの提案を受け入れる代わりに、ソ連に「日本叩き」を約束させた、というくだりがあった。この作戦決行が日本人のシベリア抑留を生み出したわけである。映像と本がようやくつながった。

6月20日 意識的に魔法瓶に入れたお茶を飲む習慣はほぼ定着した。おかげで寝床の「こうらがえし」はなくなった。筋肉は楽になったが、かわりに頻尿になった。夜3回は尿意で目が覚める。昨夜は4回も尿意で目が覚めた。頻尿で熱中症になった、という記事を読んだことがあるから心配だ。お茶はカフェインが含まれているから、尿意が起きやすいのだそうだ。

6月21日 尿意の続きだが「ビールを飲まない」というのもかなり特異な「体質」かもしれない。カミさんが炭酸系飲料を受け入れず、冷蔵庫にビールを入れていても、いつの間にか外に出されているという家庭内事情が原因だ。普段はほとんどビールを飲まない身体になってしまったのだが、そのかわりホッピーが好きになった。焼酎に混ぜる麦芽飲料だ。秋田は酒処だが、こうした酒の新興勢力に対してはきわめて保守的だ。だから酒屋さんでホッピーを置いている店は少ない。低カロリーでプリン体もゼロ,泡も出るのでビール代わりにはうってつけ。量は飲めないけど夏場はいつもこれ1杯で大満足。安上がりの体質だ。
(あ)

No.1217

夜と霧
(みすず書房)
V・E・フランクル・池田香代子訳
 ユダヤ人ら約110万人が殺害されたアウシュビッツ等の強制収容所での体験をもとに、人間の偉大さと悲惨を余すことなく描いたウイーンの精神科医の体験記だ。1956年に初版が出たのだが、もともとは「或る心理学者の強制収容所体験」という粗末な紙の書物だ。ユダヤ人精神医学者である著者は、ナチスのオーストリア併合で一家がともに逮捕され、アウシュビッツに送られる。彼の両親と妻はガス室で殺され、餓死している。ナチやアウシュビッツの歴史的背景や個々の事実には触れず、個人の体験した事象を精神科医として冷静に分析することにその情熱は注がれている。不思議に思ったのは「ユダヤ」という言葉が本文にはほぼ見当たらないことだ。記録に普遍性を持たせたかったから、一民族の悲劇ではなく、人類そのものの悲劇として、自らの体験を提示したかったのだろう。ナチの強制収容所にはユダヤ人だけでなく、ジプシー(ロマ)、同性愛者、社会主義者といった様々な人も収容されていた。書名の由来は、夜陰に乗じ、霧に紛れて人々がいずこともなく連れ去られ、消え去った歴史的事実を表現する言い回しから付けられたもの。これとは逆に「アメリカの夜」(人工的な夜を指す映画用語)という情報操作を言い表す言葉も役者の後が気に紹介されている。

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