Vol.1257 2025年2月1日 週刊あんばい一本勝負 No.1249

胸やけは肩掛けが原因だった

1月25日 西崎伸彦著『バブル兄弟』(文藝春秋)を読んでしまった。サブタイトルが「〈五輪を喰った兄〉高橋治之と〈長銀を潰した弟〉高橋治則」というのだから、バブル好きにはスルーは無理だ。バブルの時代を語る「王者」の登場である。この本のすごいところは、弟・治則はもう死んでいるので、彼の晩年をよく知る、若い愛人を取材していることだ。この愛人が悪びれることもなく、著者の知られざる一面を、冷静に感情的になることなく語る。さらに兄の治之に関しては、なんと本人が逃げ回ることなく著者の取材に堂々と応じている。それも詭弁やエキスキューズではなく、オリンピック汚職の舞台裏を、真面目に裏も表も赤裸々に語っている。この2名への直接取材が、本のリアルさを保証し、説得力のあるものに昇華させた。バブルを知る上には欠かせない労作である。

1月26日 ここ数週間、寝ていると胸やけのような、呼吸がちょっと浅くなる感覚がある。寝苦しくて目が覚める日も続いた。逆流性食道炎と診断されて以来、タケキャブ(10ミリグラム)という薬を処方され、それを欠かさず飲んでいるので胸やけとはすっかり無縁になったのだが、ここにきて薬が効かなくなくなった。再発したのだろうか……、原因が分かった。冬になると「肩掛け」を寝巻の上に着用するのだが、その結びヒモが寝ている間にちょうど首までずり上がってきて首を圧迫、それが原因だったのだ。昨夜ようやくそのことに気が付き、肩掛けを外したら、テキメンに胸やけは収まった。

1月27日 朝9時の事務所の温度はマイナス3度。寒いけどスカッとした青空が広がって、雪はほとんどない。ひと冬の間にこんな天気の時が数度ある。昨夜は「肩掛け」をやめたせいか熟睡できた。途中で違和感から目が覚めたりしなかったし、ヘンな夢も見なかった。「ヘンな夢」というのは旅先で迷子になってしまう夢だ。家に帰れなくなるものだが、最近よくこの手の夢を見るなあ、と思っていた。もしかするとこれも「肩掛け」=「圧迫感」の為せるいたずらだったのかもしれない。

1月28日 人間ドッグの結果報告書が届いた。この封書を開くのは勇気がいる。封書が膨らんでいると「再診用の医師の紹介状」が入っているから、いやな気分になる。封書の厚さが、問題のあることを表現しているのだ。今回は「薄っぺらな封書」、まずは一安心。中身をざっと見て、「診察所見」は「A」だが、「総合判定」は7つぐらい「注意」がゴチャゴチャ書かれていた。体重、血圧、尿酸値などの値が高い指摘なのだが、「要再診」の表記がないだけで、もう十分だ。それにしても数年前まで尿酸値は「7」を超えていたのだが、今回は「6」。そのことをもっと褒めてほしいのだが、医師はまずいところを指摘するのが仕事なので、褒めてはくれない。むなしいものだ。

1月29日 朝日新聞社の文章校正AIで、一度使ってみたいと思っている。タイポレスという名称で、その精度や簡便さがわかれば、充分戦力として期待できそうだ。いや、それよりさらにすごいニュースが飛び込んできた。「ディープシーク」だ。この格安AIの開発者は85年生まれだから40前か。あれほど世間を騒がせたチャットGPTの性能をはるかに上回り、開発費は10分の一というのだから驚いてしまう。これからは続々とこんな若いベンチャー起業家が出現し、世界を変えていくのだろう。すごい時代になったものだ。

1月30日 市などが主催する「老人大学」とか「高齢者ナントカ」に呼ばれて話する機会がある。今年からはそうした類はお断りすることにした。お話すること自体は楽しいのだが、終了後、かならず「質問コーナー」のようなもので、ここぞとばかり手を挙げて、延々と「自慢話」や「ご高説」をしゃべり続けるご仁がうっとうしい。彼らにとっては講演者など誰でもいいのだ。話が終わるやいなや、待ってましたとばかり手を挙げ、しゃべり続ける。やめると決めたら、気分はなんだか晴れ晴れした。

1月31日 雪のない日が続いていたが、今日は朝から一面の銀世界。なんだかホッとする。今週末は近所の岩谷山にスノーハイクの予定だ。雪がなければ困るという事情もある。友人のFさんがスノーシューを買い、この日が雪山デビューをする日なのである。この日に雪がないのではシャレにならない。まずはこの一面の雪景色、よかった、よかった。それが終われば、さっさと消えてほしい。
(あ)

No.1249

みんなの高校地学
(講談社ブルーブックス)
鎌田浩毅・蜷川雅晴
 今年もハタハタは食べられそうにない。漁獲量は禁漁明け(95年)以降で最低となった去年と同程度の漁獲量と報じられていた。海水温度の上昇による海洋環境の変化が原因なのだろうから、単に食文化といった域を超えた難題だ。同じ時期、山形の庄内の海で佐渡が北限のサンゴが見つかっている。こうした身近な「事件」で地球温暖化の現実を知ると、本当に背筋が寒くなる。ちゃんと地球温暖化のメカニズムを勉強しないと、と手に取ったのが本書だ。高校時代、まったく関心を持てなかった科目といえば「地学」だ。しかし今、自分や世界にとって最も必要な学問(知識)はあの高校時代の「地学」ではないのか。よし、今年は基礎から地学の勉強をしてみよう、と手に取った。さっそく読み始めたのだが、最初のページから全くついていけないことに気が付いた。気候変動の仕組み、宇宙の成り立ちと進化、日本列島と巨大地震、地球の46億年史……興味あるトピックスばかりなのに、理系の基礎的知識がないから、読み進めるのが苦痛だ。理系の基礎常識がないというのは、こんなにも無力なのか。ここで放り出すと、さらに理系嫌いに拍車がかかってしまう。とにもかくにも投げ出さない、という一念でこの本を机の上から片づけないことに決めた。

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