Vol.126 03年2月1日 週刊あんばい一本勝負 No.123


東京と仙台の青空

 月曜日から金曜日まで丸5日間、出張で事務所を留守にしていた。帰ってみると秋田はものすごい雪で、数時間前まで東京や仙台で見た青空が、ほとんど外国のように思えてしまいました。今回の出張はかなりの人と会い、夜は酒を飲み、小さな展覧会をはしごしてしまいました。ふだんは事務所と家を往復するだけの生活で、おまけにずっとダイエット中なのでお酒も控えていましたから、身体が突然の環境の変化に戸惑ったかもしれません。外の空気に(それも都市の)触れて思うのは、道ゆく人たちのマナーというか、ちょっとしたしぐさなどに見られるジコチューぶりが、年々ひどくなってきて不快な思いをすることが多くなったことでしょう。道路にウンコ座りしたり、薄汚い格好のだらしない若者はなるべく見てみないふりをしているので問題外ですが、一見紳士風に見える大人までもが突然電車で携帯電話をかけだしたり、歩きながら物を食べる姿を見るに及んで、即席ですが憂国の士になって天誅をくわえたくなったりもしてしまいます。不況を隠れ蓑にしてモラルや品性は落ちるところまで落ちていくのでしょうか。それにしても気分が落ち込んでも東京や仙台は、朝目覚めるといつもきれいな青空が見え、心を穏やかにしてくれます。この冬の青空はいつ見てもうらやましいなあ、思ってしまいます。
(あ)
右は神保町の空、左は仙台の空

3枚の絵

 今回の東京出張で3点、絵の小品を買いました。1枚は毎年神保町の欅画廊で個展を開いている吉永直子さんの風景画で2万円。もう一枚は銀座の路上でポストカード大の自作の版画を売っていた20代の野崎義成さんの作品(800円)です。もう一枚は、武満徹全集の挿画を描いたマドリット在住の堀越千秋さんの個展を京橋まで見に行き、偶然その会場隣で個展を開いていた高下せい子さんという方の小品(3万8千円)を買いました。3枚とも飾るためではなく、出産祝いや就職祝いなどの贈り物として使うために買ったものです(肝心の堀越さんの作品は高くて手が出なかったのですが)。下の画像は買った作品ではなく案内のポストカードです。なんとなく作品の雰囲気はわかっていただけると思います。
(あ)
左から吉永さん、野崎さん、高下さんの作品

写真の撮影者発見

 2ヶ月ほど前から無明舎のホームペイジ上などで、撮影者不明の4点の写真を掲示して撮影した人を探していましたが、うまく見つかりました。この写真は無明舎が20年程前に秋田県内各地で複写した、数万枚のプリントの中に入っていたもので、旧秋田大橋の解体を期して国土交通省から制作依頼を受けたパンフレットのなかに使用したり、パネルを作ったりするため探していたものです。手違いで一部撮影者名記録がなくなってしまい、記憶を頼りに確認作業をしていたものです。最終的に1人に絞り込み、本人が高齢のため代わりに息子さんに写真を見せたのですが、「親父の写真ではない」の一言でチョン。パンフレットも完成したのでいいかげん探すのをあきらめて、新しい企画『昭和回顧写真集』全5巻(仮題)に取り掛かっていました。この写真集の編集を機会に、数人の「秋田の木村伊兵衛」たちが写した膨大な量の作品を見せてもらっていましたら、見事探していたあの写真が見つかったのです。
 撮影者はやはり、あんばいがあの人ではないかと推測し、息子さんに違うと言われた本間栄太郎さんでした。4点の写真のほかにも秋田大橋やその周辺の写真が多数見つかり我々は大喜び。これらは解体中の旧秋田大橋の姿を後世に伝えてくれる、永久保存の価値がある貴重な写真です。
(鐙)

これらが探していた写真の一部。ちょうど50年前の昭和28年撮影

今週の観葉植物

 今回はオリヅルランの鉢植えについて。ランの名前がついていますがランではなく、ユリ科の植物です。長い葉の先から茎が伸びて小さな株をつけます。それが折り鶴のように見えることからこの名前がついたようです。地面に植えると、この小株が根をはって増えていく仕組みなのでしょうか。事務所のオリヅルランはまだ株も小さくて葉も短いので、かわいい折り鶴を見られるまでには、まだしばらく時間がかかりそうです。この鉢植えが届いたとき、アルバイトの柴田さんが過去のちょっとした事件を披露してくれました。彼女はネコを一匹飼っています。もらってきたオリヅルランの鉢植えを部屋に置いていたところ、ネコにすべて食べられてしまったそうです。お腹が減っていたのでしょうか、それとも完食してしまうほど美味しかったのでしょうか。そのネコにインタビューしてみたいものです。
(富)

No.123

寝ながら学べる構造主義(文春新書)
内田樹

 2002年は本当に本を読まない1年だった。ダイエットをはじめたせいもあり散歩やエアロビに精を出し、英語日記を書いたりHPの執筆に多くの時間をとられた。毎年150冊ほどの本を読むのだが、この年は60冊程度。半分以下まで減っている。救いは内田樹という書き手と出会いで、この一年余で出た彼の4,5冊(もっとでているのかな)の本をすべて読んだことぐらいか。この著者はもう絶筆宣言をしたので、これ以上彼の新刊を読むことは不可能だが、これまでの本を何回か読み直す悦びは保証されている。内田の本の中で何度も読み返したい本のベストワンが本書かもしれない。ヘーゲルからマルクス、ニーチェ、ソシュール、フーコー、バルトからストロース、ラカンといずれもお経よりも読むのが難しい学者たちを丁寧に料理して、誰でも挑戦可能な簡単レシピを作り上げている。これなら「私にもつくれます」というやつだ。とにかく目からうろこが落ちるとはこのことだ。この人たちはこんなことを説いていたのか。頭の中がようやくスッキリした。

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