Vol.127 03年2月8日 週刊あんばい一本勝負 No.124


神保町に雑誌専門書店オープン!

 東京・神保町のすずらん通りに雑誌とムックの専門店「ふくろうブックステーション」が2月5日オープンしました。社長は岩波ブックセンター信山社の柴田信さん。私の尊敬する先輩なのでオープンに駆けつけたかったのですが、先週もそして来週も東京出張がはいっているためやむなく断念。でも神保町の会社で働く高校の同級生の佐藤彰さんにオープンしたお店の内と外をデジカメで撮って送ってもらいました。数年前、広告業界で働いている友人と神保町で待ち合わせをしたとき、「神保町って本の街っていうけど雑誌の揃えが悪くて利用がってが悪いんだよね」とわれたことがありました。あえて本が売れないこの時代に、70歳をこえている柴田さんが神保町に、書店に、そして出版界に新しい火を灯そうという前向きな情熱と若さに敬意を表するとともに、微力ながらも雪国から応援を続けていきたいと思っています。
(あ)

このごろ古書店が気になりだした

 本はほとんどネット書店(アマゾン)で買うのだが、最近は書店で平積みされている本でも「在庫切れ」表示がやけに多く、注文した本もゆうに1、2週間かかるようになっている。怠慢なアマゾンにはもう感動がなくなってしまったが、同じネットの「日本の古本屋」の利用頻度がかわって高くなっている。本のコレクションや稀覯本には興味がないし、本屋のくせに書斎や事務所にできるだけ本を置かない(目障りで気になるから)方針なので、仕事の資料以外には古本屋を利用することはほとんどなかった。それが新刊より昔の本を買うようになったのは読書傾向にちょっぴり変化が出てきた、という微妙な心の揺らぎなのだが、「彷書月刊」や「sumus」といったデイープな古書関係雑誌が送られてくると端から端までじっくり読むようになった。これがまたおもしろいんだよねえ。身の回りにものを蓄えるのが苦手なのでとても古本のコレクターにはなれそうもないが、いい客にはなれるかも、などと考えているこのごろです。
(あ)
どちらもメチャおもしろい

前期新刊30点という異常!

 今年の前半は創業以来といっていい新刊ラッシュになっています。2月10日現在まだ1冊の新刊しかないのですが、5月頃までに刊行予定の本は20本をこえ、現在制作中の本だけでも30点をこえます!
 こんな数は創業以来経験がないのですが、不思議なことに事務所にはむちゃくちゃな「いそがし感」(こんな言葉あるの)はありません。でも土日はほとんど休めません。2階で作業中の「昭和回顧写真集全6巻」班は資料の山に埋まって昼夜土日なく奮闘中です。自費出版がほとんどないのも大きな特徴かもしれません。この目いっぱいな時期に重要な戦力である柴田真紀子をISO14001認証取得のためにとられてしまっているのも大きなダメージです。なんとか現行勢力でアウトソーシングをうまく使いながら乗り切っていこうと思います。最大の敵はなんといってもインフルエンザです。コホンといえば即休んでもらう、ことを今朝全員で確認しました。去年、コホンコホンしながら仕事を続け全員に風邪を移したSの例があるので、そこには異常にナーバスになっています。
(あ)

原稿進行棚はもう空きがない

ギャングから生まれたアメリカ

 1月に娘に誘われて観に行ってきた「ギャング・オブ・ニューヨーク」は、学校で習うアメリカの正史とは違う一面を見せてくれる映画で、大いに楽しんできました。舞台は19世紀半ばのマンハッタン。ネイティブ・アメリカンと称する、アメリカ生まれでプロテスタントを信仰するギャングと、アイルランド系カソリックの移民集団が、利権や教会の存続をかけて血で血を洗う抗争を繰り広げる物語。時代背景は南北戦争の真っ只中で、徴兵に応じることでアメリカ国籍を与えると、移民船から降りたったアイルランド人にそのまま軍服を着せる横で、金持ちが200ドルを払い徴兵免除を得る様子が描かれています。あまり表面に出ることがなかった奴隷解放のための南北戦争に対して、大都市では徴兵に反対する人々の反乱、それを圧倒的な武力で鎮圧する軍隊。主役のギャング団同士の抗争にそれらがオーバーラップしてダイナミックな映像となっていました。
 移民から成り立つアメリカは多国籍、多人種国家を標榜し、自由の国と喧伝していますが、反面、暴力や排斥の歴史の上に成り立っている国家とも言えます。それが20世紀になると国外にまで広がり、宗教や思想を異にし、自らの利益を危うくする存在に対する好戦的なアメリカの元凶になっているような気がします。イタリア系のマーティン・スコセッシ監督の手になるこの映画の、草ぼうぼうのマンハッタン島がコンピューターグラフィックによって、見る見る21世紀の姿に変貌するラストシーンが象徴的ですが、まだニューヨークの世界貿易センタービルは2棟、マンハッタンのシンボルとして誇らしげに建っていました。
(鐙)

映画のパンフレット

No.124

ハッピー・バースディ(角川書店)
新井素子

 久しぶりに小説を読んだ。確かかなり前に『おしまいの日』というこの著者の小説が面白かった印象がある。今回も何かの書評を見て、もしかすればこれが小説を読む「ひきがね」になってくれるのではという下心(?)もあり、読んでみようと思ったわけである。主人公は賞をもらった若い女性作家と、ふとしたことで彼女にストーカー行為をすることになる若者の二人。この2人が交互に語り部になる。小説には珍しく最後に著者の「あとがき」があって、この小説が賞を取ったこと、作家を主人公にしたため逆に難しさを抱えこんで何年も執筆にかかってしまったことが書かれている。帯には「新井素子の金字塔となるべき作品が誕生した」と謳われているし、出版社も著者本人もこの作品には特別な思い入れがあるのはわかるが、私にはほとんど楽しめなかった。よく意味がわからない部分があるし、主人公に感情移入できないのが辛かった(読み通すのが)。私が小説を読むのは自分の知らない世界や時代や人物を「うまく理解したい」と思うからである。ここには知りたいと思うことがほとんどなかった。

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