Vol.135 03年4月5日 週刊あんばい一本勝負 No.132


引越し騒動記

 ようやく東京への引越しもおおどころをこえました。私とアルバイトの山岡くん、それにこの事務所に住むことになる息子の3人での作業は困難を極めました。事務所関係の備品は秋田で使っていたものをほとんど持ち込んだので簡単にすんだのですが、その同じ事務所で寝泊りするための生活用品の調達はいやはや大変でした。爪楊枝からトイレペーパーまで、とにかく揃えても揃えても必要なものが出てきて、いっこうにまともに三食食べて普通に暮らせる状態にはならないのです。常駐するわけではないので行った時にすべてをやってしまわないと仕事に差しさわりがあります。あせってもあせっても片がつかないこのイラダチ。引越し2日目には上京中の鐙編集長も来てくれ(手伝いではなく冷やかしに)、いきなり仕事上の難題を持ち込んで急遽新事務所で打ち合わせを持ちました。これが仕事始めになりました。3日目にはA新聞の月刊誌J編集長と築地で一献。これが仕事第2弾です。せっかく花の都にいるのに5日間まったくといっていいほど(買い物以外は)外に出られません。いつになったら優雅な東京ライフを送れるのでしょうか。帰りの飛行機では爆睡してしまいました。4月一杯は引越しの「余波」に振り回されそうです。
(あ)

これが事務所

ベランダから見える風景

郵便ポストが懐かしい

 Eメールやインターネットの普及で、ほんらいの郵便というものの存在感が薄れてしまっている。確かに早くて便利、手軽という意味ではたしかに電子手段が手っ取り早い。でも本当にそうだろうか。
 私、「無明舎あまもの担当」の藤原は、なにを隠そう肩身の狭い100パーセント手紙派なのです。それに加えて今、「昭和の写真帖」シリーズを編集している中で、その写真集の中に「郵便ポスト」の章があり今昔を比較している。中年以上の人には馴染みの深い、あの赤くて丸い郵便ポスト、なんと秋田市では現在たった2個だけが現役でがんばっているとのこと。ポストに手紙を入れるとき、中にポトンと落ちるあの音に、ある種のいわくいいがたい期待感や幸福感が湧いた記憶はありませんか。
 音といえば郵便配達人のバイクの音にも期待と不安が入り混じります。なぜか、あの音とヘルメットを被った郵便屋さんの姿が全国どこへ行っても共通なのも面白いですね。アンバイ舎長の言では「ロンドンには赤いポストがまだ現役でたくさんある」とのことです。もともと明治政府は英国の真似をしてあの赤い郵便ポストをつくったのだそうです。4月1日から郵政事業は民営化の第一歩として「日本郵政公社」に変わりました。メールではなく手紙を書いてみよう、と強く思う昨今です。
(優)

歴史的勝負!どっちが勝った?
越前屋潔さん写真提供

いよいよ出ます、『CD-ROM版秋田のことば』

 発行が延びていた『CD-ROM版秋田のことば』(秋田県教育委員会編)の制作状況をご報告します。録音や取材などは去年すべて終了し、現在は画面デザインの細かい修正、データチェックなどの作業が進められています。見やすく、分かりやすく、使いやすい画面にするため、デザイナーの皆さんが頑張って最終段階のみがきをかけているところです。これらの作業が完了し、「動作チェック」をクリアすれば、書店に出まわる予定です。画像は、杉浦康平プラスアイズが制作した表紙のデザインです。見てるだけでたのしい気分になってきませんか?
(富)

No.132

ひらひら(集英社)
池永陽

 「本の雑誌」のベストワンだという『コンビニ・ララバイ』がテーマ設定も面白そうなので読んでみたが、最後まで主人公のコンビニ店主や周辺の登場人物に感情移入ができなかった。文庫本になった『走るジイサン』も同じで、私の心には何一つ響いてこない絵空事のような〈日常〉だった。う〜ん、今ひとつ壁を超えてないなあ、というもどかしさを同年代のこの作家に感じていたのだが、表題作はすばらしい出来栄えでアタリ。これは面白かった。常巳といううでっぷしの弱いチンピラが主人公で、周辺の人物の造型描写もうまい。前2作とは比べものにならない完成度である(と私は勝手に思っている)。私自身、平々凡々とした生活をしているから、普通の老人やコンビニ主人の物語といった〈普通の話〉に強く惹かれるし、大好きなのだが、逆に、こうした下っ端ヤクザの〈異常さのなかの日常〉という設定も興味津々である。主人公をどのように設定するか、それが小説の面白さを決定付ける大きなファクターで、落ちこぼれヤクザの日常がこれほど心温まる人間賛歌に変わる、といういい見本のような作品である。

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