Vol.137 03年4月19日 週刊あんばい一本勝負 No.134


お隣の桃と初授業

 事務所のお隣の桃が満開である。無明舎側の庭には桜もあるのだが、一足先にきれいなピンク色の花をつける桃が先なので、春を知るバロメーターはこの桃である。周りが住宅地で派手な色が少ないせいか、桃はまさしくこの時期の文字通り花形である。この時期には非常勤講師を務めている近所の私立大学の授業も始まる。ここでもフレッシュな若者たちとの出会いがあるのだが、年々、こちらの元気は薄れるばかり。毎年同じようなことを講義し、来年こそやめよう、今年こそはと思いながら、桃が咲き、春を迎え、9年目の新学期である。若者を相手にするというのは必要以上に疲れるものだが、これもまあ春の通過儀式と割り切ってご奉公するしかあるまい。今年こそは何年もしたことのない「お花見」をするのが目下の一大目標である。
(あ)

お隣の桃

教室の風景

事務所の改装

  恒例のようになっている事務所の改装を、今年も行いました。今回は2階を集中的に模様替えをすることにし、今まで以上に「仕事の場」にすることに主眼を置いて、あれこれと皆の知恵を集めてみました。これまで大きな場所を占めていた社長の机や陶器などを並べていた棚、ソファーベッドなどを東京事務所に送ったので、そのスペースに3人用の長いデスクや書棚を並べ、集中して仕事が出来る環境を整えました。今はライターの藤原さんがこのデスクでパソコンを使って「東北の峠」や「甘く見るなよ」などの原稿を書いています。

あたらしくなった事務所で原稿を書く藤原さん
 今まで1階の事務所や資料や本を入れておく資料室に、散らばって置かれていた辞書や図鑑類などもここの書棚に集め、使い勝手を良くしました。仕事場らしくない雰囲気だった台所回りも整理し、近いうちにカーテンで囲うつもりです。
 部屋が以前に比べ広々として仕事に集中できる環境になったため、資料を多く使う仕事の時には私もこの部屋に引っ越そうと考えています。
(鐙)

防災訓練

 無明舎出版の創業以来初めて「防災訓練」を実施しました。参加したのは無明舎出版一同と、ライターの藤原さん、アルバイトの金谷さんなどを含め合計8人。訓練の内容は「避難訓練」「119番通報」「消火器の取扱い」で、事前に消防署に行って訓練のポイントなどを説明してもらい、それをもとに簡単なマニュアルを作りました。
 午後1時10分前に、消防士さんたちが消防車に乗ってさっそうと登場し、外で待機。みんななんとなくそわそわしていましたが、藤原さんが「逃げ遅れた役、やろうかなぁ」と言い出すなど、けっこう乗り気でした。

汚れ目がけて水の消火器
 1時ちょうどに訓練開始。今回は、「1階の台所のガスコンロから出火」という設定です。第一発見者の私が「火事です!」と言い、2階の人たちにも叫んで知らせ、すぐに全員が外へ避難。鐙がマニュアルどおりに119番通報をしてから最後に出てきて、あっという間に訓練は終わりました。消防士さんによると、火災の119番通報の時に「逃げ遅れた人がいるかどうか」を伝えることは、その後の対処につながるのでとても大事なことだそうです。今回は、藤原さんも逃げ遅れず、全員が避難できました。
 そのあと、粉末ではなく水が出てくる消火器の使用体験をしました。ピンを抜いてレバーを握ると、プシューッと勢いよく水が飛び出します。めったに出来ない体験なので、皆大はしゃぎ。壁の汚い部分を洗ったり、隣りにとめてある安倍の車に水をかけたり……。何はともあれ、訓練は大成功でした。これからは毎年1回、防災訓練をやるつもりです。
(島)

今週の花

 今週の花はリシアンサス、スプレーカーネーション、クラスペディア、レースフラワー、千日紅、天文草。リシアンサスはトルコキキョウのこと。今回のスプレーカーネーションは深紅です。いつものかわいいピンクと違って艶やかなので、照れくさくなります。クラスペディアは球状の黄色い花。触ると花粉か何かがボタボタッと落ちてくるので油断できません。天文草は水草のように柔らかい手触りのグリーンです。この草の名前の由来などを知りたくてインターネットや図鑑を調べましたが、ほとんど情報がありませんでした。フラワーアレンジの花材としては知られているようなのですが……。気になる植物がまた一つ増えてしまいました。
(富)

No.134

世界一わかりやすい
フロイト教授の精神分析の本
(三笠書房)

鈴木晶

 昨年は内田樹の本に救われた。〈救われた〉というのは宗教的な意味ではなく、夢中になれる作家に出会ったことで貴重な読書の時間を与えてもらった、というほどの意味。内田の影響を受け、彼との共著がある法政大学国際文化学部教授で精神分析家の著者の本書も読んでみた。内田のメル友であり、同じく大学の先生である。面白くないはずはないではないか。自らフロイト教授に成りすまして、学生たちの質問に答えながら〈身近な問題としての精神分析〉を語る入門書という形をとっている。今時の学生のオツムに合わせて、かなり幼稚な質問を堂々とさせているのは作為というよりも現実で、結果的にはこの〈質問の程度の低さ〉が本書をわかりやすい(表題を裏切らない)入門本として成功させている。夢は、異なる映像のモニターを何台も並べてみるように、いくつもの映像を同時に見ている、という状態らしい。そして目覚めるとき、それをストリートとして組み立てているだけなのだ。なぜそんなことをするのかというと、それをストーリーにしないと思い出せないからだ。

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