Vol.141 03年5月17日 週刊あんばい一本勝負 No.138


庄内日帰り紀行

 フリーライターの藤原優太郎さんと一緒に鶴岡・湯野浜海岸でおこなわれた「国際ノルディックウォーク」に参加してきた。砂浜や杉林を10キロ、ストックを使って歩く競技で 二人とも無事完歩。天気にも恵まれ気持ちいい汗をかいて来ました。9月には同じ山形の遊佐町で30キロウォークがあるので、それにも参加するつもりでいます。大会のキャッチフレーズが「歩かなければ、歩けなくなる」で、これはなかなかのコピーですね。
 ところで、こうしてたまには秋田を離れ他県に行くというのはいいもんですね。出不精ものとしては新鮮な発見がいっぱいありました。秋田と山形で決定的に違うのは旅館業やこうした観光イベントのサービスに対する考え方です。秋田に比べ山形は接客術が優れているは万人が認めるところです。それがよくわかりました。今回は昼には鶴岡の郊外で「麦きり」で有名な蕎麦屋で昼食をとったのですが、蕎麦レベルの高い山形にありながら、大変に不味い蕎麦でした。大会が終わったあとの夕食も酒田市郊外の蕎麦屋でとったのですが、こちらは何度か行っているところなのではずれはありませんでした。この蕎麦屋の名前は「大松家」といい農家をそのまま使った内装だけでも行く価値のあるところです。
(あ)
ウォーク会場と大松家の内部

裏紙を使った校正ゲラ

 ISO14001の認証取得に向けて、3月末から「電気使用量の削減」「紙の消費量・廃棄量の削減」「ガソリン使用量の削減」を中心に、環境にやさしい活動を始めました。
 このうち「紙の消費量・廃棄量の削減」に関しては、裏紙を利用し、両面使い終ったものだけ故紙として捨てる、という方法を取ることにしました。数値的な目標が必要なので、毎週、集まった裏紙の枚数と、使った裏紙の枚数をチェックし、「裏紙の使用率」を計算します。集まった裏紙をすべて使い切ると「使用率100%」というわけです。

左が本文を印刷した表側、右が裏側
 ところが、始めてみると裏紙はたまる一方で全然使い切れないのです。1冊の本を制作する過程で、文字校正3回、色校正1回というのが平均的な校正の回数ですが、その結果1冊の本を作るのに約1000枚ほどの裏紙が生まれることになります。何冊もの本を並行して作っているので、これを舎内の事務用紙だけで使い切るのは無理というものです。
 そこで、印刷所に協力してもらって、校正用ゲラを出力する時に裏紙を使うことにしました。裏の文字が透けて見えたり、裏に書き込まれている校正の赤字が強烈で、表の校正がしづらい、など、いくつか問題は出てきましたが、校正の時に裏に透けるようなペンを使わない、などの対策をすれば続けていけそうです。
 裏紙を利用し、紙を捨てる時は故紙としてきちんと分別して、リサイクルに回すようにしたら、会社から出るゴミが約3分の1に減りました。小さな会社ですが、継続してやっていけばきっと大きな効果があると思うので、これからも舎員皆で頑張っていきたいと思います。
(島)

人面魚がこんにちは!

 鶴岡市郊外、庄内浜砂丘のふもとに龍沢山善寶寺という古刹がある。庄内地方では羽黒山につぐ大きな寺院だが、訪れるのは初めてだった。古刹のスケールの大きさにおどろき、庄内の歴史の奥深さにまずは敬意をはらった。今日の目的はいっとき話題をさらった人面魚の撮影である。人面魚がいるという貝喰池は寺内の奥の院にあった。善寶寺のご本尊は薬師如来であるが、言い伝えによれば、貝喰池に姿を隠した二頭の龍が守護神であるといわれている。そのことから龍神信仰が栄え、北前船などの航海者や漁業関係者の厚い崇敬を受けてきたところである。寺院では大漁満足、海上安穏の祈祷札を出しているので今も全国から参詣者が絶えないという。
 さて人面魚である。山門や五重の塔を眺めつつ、本堂の前から奥の院に通じる歩道は山吹の花が盛りで新緑とあいまって美しい。貝喰池の下端に出ると鯉や亀が浮遊しているのが目に入った。「人面魚はどこだ! 出てコイ」と目を皿にして探す。ややあってあまり大きくない黄金色の鯉がゆらゆらと浮上してきた。見るとまさしく人面である。「やった!」と思いつつすぐカメラを向けるがそっぽを向いて水中に沈んでしまう。ここから執念の追っかけが始まった。 絶好のシャッターチャンスかと思えば太陽が水面に反射してNG。水上に出た人面魚はぼくの顔を見るとギョッという顔をしてまた沈む。ここで突然だが、山崎豊子の『沈まぬ太陽』の一節を思い出した。ニューヨークの有名な動物園のある檻に大きな鏡があってその下に何やら文字が書かれている。そこに顔を向けると、「世界でいちばん醜い動物」の文字の上の鏡に自分の顔が映っている。人面魚はもしかして魚面人を醜いなあと思っていつも観察しているのかも知れない。
(優)

今週の花

 今週の花は深紅のガーベラ、2種類のアルストロメリア、紫のチース、ピンクのワトソニアです。
 ワトソニアの和名はヒオウギスイセン(檜扇水仙)。たぶん、葉がヒオウギに似ていることからついた名前だろうと推理します。アヤメ科で南アフリカ原産。グラジオラスに似ていますが、グラジオラスほどゴージャスな雰囲気はありません。小さい花からは可憐でか弱い印象を受けますが、実は丈夫で雑草にも負けず、寒くない土地なら庭に放っておいても平気、と園芸ガイドにあります。驚いたことに、2m近くまで伸びるものまであるそうです。植物も外見で判断してはいけないということですね。
(富)

No.138

立花隆秘書日記(ポプラ社)
佐々木千賀子

 オビ文の「知の巨人の日常と知的生産の技術のヒミツに迫る!」というコピーは無難だが、なかみはそのオビ文を凌駕して面白い。オビ文より面白い本というのは珍しい。こちら(読者)も「知の巨人」の舞台裏を知りたいという思いだけで読み始めたのだが、著者は只者ではない。立花を出汁に自分の趣味(オペラ)や交友関係、生い立ちから独身生活までを効果的に書きちりばめ(それも出すぎずに)、自分のことを雄弁に語っているのが実に見事なのである。最後には、この本が単なる「知の巨人ヨイショ本」ではないことを、まるでミステリー小説のように種明かしする。この最後まで読んだものしか、本当のおもしろさは伝わらないように構成されているのが意識的だとすれば、いやはや大変にレベルの高いノンフィクションだと思う。最後のドンデンガエシのところで思わず本を落としそうになり、もう一度、前まで戻って読み返したくなる。こういう本はめったにあるものではない。以前に出た立花隆の批判本など、この本の前ではかすんでしまう。それほどのインパクトがある。ちなみに著者は立花隆の秘書を辞めた後、スタジオジブリに勤め、現在は沖縄に移住、映像プロデューサーである。

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