Vol.151 03年7月26日 週刊あんばい一本勝負 No.147


「岩田書院」の出版パーティ

 22日7時半から東京神保町(猿楽町かな)の焼き鳥屋「やき龍」3Fで小舎刊『ひとり出版社「岩田書院」の舞台裏』の出版パーティが開かれました。著者の岩田博さんは「出版パーティなんてイヤ」と固辞していたらしいのですが、地方・小の取引担当者である門野さんが無理やり音頭をとり、丸善やジュンク堂、三省堂といった大手書店の若手書店員らを中心に集めた、少人数ながらも楽しい会でした。

こんなメンバーのお祝いでした
 若い大手の書店員と話すというのも刺激的で新鮮な発見がたくさんあったのですが、小生も岩田さんも、こうした会ではもう高齢者の部類に入ってしまうことに気がつき、少し落ち込んでしまいました。つい先だってまで出版の世界で「若造」扱いされていたのが、今はともすれば「むかしばなしをするオヤジ」状態の「取り扱い」を受けるのは辛いものがあります。「毎日12時間労働できついんですけど、はじめてもらった給料に残業代が加算され、こんなにもらっていいの?って額で驚きました」というジュンク堂に今年入社したばかりのF君のことばがやけに印象的でした。岩田さんの本はこれから書評や広告がたくさん出る予定です。増刷の折は岩田さんと2人でひっそり祝う約束をしています。
(あ)

ご近所デジカメスケッチ・秋田篇

 ここ数日中に散歩の途中やスポーツクラブで見かけた、ヘンなもの、珍しいもの、懐かしいものなどをデジカメでスケッチしてみました。最初は、散歩の途中で通る道筋にある大きな(8畳はある)一戸立てのハト小屋です。いつも夜、この小屋の前を通るのですが、なかからハトの鳴き声らしきものが聞こえ、あっハト小屋だ、と気づいたのですが日中見に行くと何十羽どころではなく何百羽ものハトが小屋にひしめき合っているのをみて驚きました。こんなハト好きってどんな人なのだろうと、顔がみたくなってしまいました。もう一枚は事務所となりの家にきた、ご存じ黄金車です。この近辺もほとんど下水処理施設が完備され、昨今はなかなかこの車を見なくなって久しいのですが、まさかお隣さんに来るとは。懐かしかったのですが臭いのほうも「さすが」でした。3枚目はスポーツクラブに貼ってあったクラブ入会勧誘のダイエット広告です。同じ人間なのに身長が違うじゃないか、などと突っ込まないでください。これでも作った側は真剣なのですから。少しやりすぎじゃないの、とフロントの女性に半畳をいれると、さすが上場企業、次の日にはこのお笑いポスターは取り外されていました。いくらなんでもこれはないよね。
(あ)
ハト小屋、黄金車、ダイエット広告

ご近所デジカメスケッチ・東京篇

 今度は東京篇です。珍しい風景ではなく事務所の神楽坂周辺にあるごく日常的な風景スケッチです。先週は、坂の中腹にある毘沙門天のお祭りで、狭い道路は浴衣姿の若者や屋台が軒を並べ、東京情緒溢れるいい雰囲気でした。この毘沙門天のすぐそばにある喫茶店(名前はパウバウとかいうらしいのですが難しい漢字の当て字なのでよくわからない)でコーヒーを注文したら横のミルクポットに一欠けらの氷がついていました。このこころづかいは粋ですね。ところせましと美術品が店内に飾られたしゃれた2階建ての喫茶店なのですが、値段もさすがでコーヒーは650円でした。飯田橋の東口にはアンダーグランドな映画や名画を専門にかける小さな映画館があります。年に1万円の会費を払うと映画見放題の映画館です。小生もさっそく会員になったのですが、まだ一度も見に行っていません。早く余裕ができて、こんなところでぼんやり時間をつぶせるようになりたいものです。
(あ)
神楽坂祭り、ミルクポットにご注目、飯田橋の名画座です

今週の花

 今週の花はグリーンスケール、ひまわり、鶏頭、リンドウ、ミリオンアスパラ。グリーンスケールは雑草。イネ科コバンソウ属の植物です。コバンソウ(小判草)はタワラムギ(俵麦)とも呼ばれ、小判に似た穂をぶら下げることが名前の由来。色合いや節の印象が、小判というよりは昆虫をお腹側から見た時にそっくりです。実は帰化植物でもともとは地中海沿岸に自生していました。鑑賞用が野生化してしまったらしいです。と、コバンソウを紹介してしまいましたが、グリーンスケールの穂は植物図鑑に載っているコバンソウの穂とは微妙に異なっています。不自然なくらいに薄くペッタンコでやや縦長の穂が風に揺れています。手間が省けるので、押し花に最適かもしれません。
(富)

No.147

僕のなかの壊れていない部分(光文社)
白石一文

 小説の書評を書くのはむずかしい。ストーリーをどこまで書いていいのか、わざと複雑にしている心理を一言で斬ってみることにどんな価値があるのか、そして単純なストーリーを長大な物語にする作家側の事情は、単純にストーリーや内容のみでは片づけられない試みや思惑がある。それは読んだものにしかわからない。本書はまさしくそうした内容の本で、全体を読み終えて、はじめてある余韻のうちに「この本を読んでよかった」とおもわせる「なにか」がある。30代とおぼしき大手出版社の独身編集者(神楽坂の近くにある、といっているので新潮社だろう)が主人公で、絵に描いたような美人の恋人との出来事を軸に物語は進むのだが、主人公の周りにいるあきらかに病んだ少女や少年たちも、ほとんどすべて類型的といっていい登場人物たちである。彼等は、それなりの「事件」を起こしながらも不思議なことに物語はけっして浮つかず、沈まず、明るくも暗くもならず、ほとんど現代の若者たちのクールさとデタラメさを混在させながら、既成の価値観の彼岸に陽炎のように「今」という時代が浮かび上がらせる。力のある作家である。

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