Vol.155 03年8月23日 週刊あんばい一本勝負 No.151


たな卸しもISO基準で、たいへんです

 年度末恒例のたな卸しが始まりました。今回のコンセプトは「ISOの審査に受かるような倉庫にしよう!」です。8月8日に、ISO14001のステージ1審査があり、最初に審査員を事務所や倉庫に案内したのですが、倉庫を一目見た審査員に「保管状態が悪いですね」と言われてしまいました。確かに、新刊ラッシュで棚からあふれた本が通路にも積み上げられ、安定の悪い本は他の本に寄りかかって斜めになっていたり、通路に落ちていたりと、見るも無残な状態でした。保管方法が悪いせいで、表紙を取り替えなければならなくなったものもありました。
 そこで、ISOの審査をきっかけに在庫本の管理を見直そうと決めたのです。たな卸しの重要戦力である金谷さんと話し合い、返品本はもう一度クラフト紙で包んで棚に上げる、本の列の間にダンボールをはさみ、列が崩れないようにするなどの取り組みを始めることにしました。実は、列の間にダンボールをはさむのは、金谷さんが一部の区画ですでに実行していて、この前の地震で思ったより本が崩れなかったのはそのおかげのようです。製造業に携わる人から、「5S(整理・整頓・清潔・清掃・躾)は管理の始まり」という言葉を聞いたことがあります。整理、整頓することで本をいつまでも新品のまま保管することができ、スペースができれば掃除も行き届き、清潔な状態にしておけると思います。
 これを機に改善したことを維持していくことが「躾」かもしれません。たな卸しのスピードは少し落ちてしまいましたが、きちんと管理することの効果をプラスしたら十分おつりが来るでしょう。今後は、この状態を維持できるように努力したいと思います。
(島)

徳川家康とアレクサンドロス大王

 後学のため「丸ビル」も「六本木ヒルズ」も「汐留サイト」ものこのこと出かけて見学してきた。余りの人出で、ゆっくり食事をしたりする雰囲気ではないので早々と退散してきた。バブル期の地方都市のテーマパークと似た「流行箱もの」イメージが強くて、オジサンにはなじめなかった。東京は建築バブルなのだろう。 ブランド服などのショッピングと高級レストランで人集めを競っているふうにしかみえないし、行列を作って食事したり、同じ洋服を競って着ることに、新しいこれからのライフスタイルとクロスする価値があるのだろうか。アナクロな祭り騒ぎにしかおもえないのだが。そこへ行くと両国の江戸東京博物館の企画展「徳川将軍家展」と上野・東京国立博物館の「アレクサンドロス大王と東西文明の交流展」はなかなか味のある催しで勉強になった。テレビ局の節度のない商業戦略に踊らないものこそが良質のものと心得たほうがいい。江戸東京博物館は9月13日から「東京流行生活展」という企画展示を11月まで開催予定で、これも興味深い。江戸東京博物館はショップも充実していて、本屋コーナーには小舎の『伊能隊、東日本を行く』まであった。
(あ)
それぞれの企画点のチラシ

事務所の「脇役」たち

 とにかく東京のマンションというのは一方にしか窓がないためか閉塞感が強い。仕事をしていても息苦しくなって外に出たくなる。秋田の田んぼの中で半世紀のびやかに育ち仕事をしてきた身にはつらすぎる環境である。そこでそんな閉塞感を少しでも打破してくれる「小物」が飾られている。小物というには失礼だが和室にはごらんのような掛け軸がある。与謝野蕪村の作である。友人のM氏が「自分の家にはスペースがないので、絵がかわいそう。掛けさせてもらえないだろうか」と逆レンタルのような按配で一時的に持ち込まれた「大作」で、今後も四季替わりでM氏が持ってきてくれるそうだ。ありがたいが、これも東京の住環境ならではの事情である。トイレも狭い。そこで家からカミさんに内緒でもってきたミニチュアのカラフルな土人形が飾られている。トイレで暮らす明るい農民一家である。事務所内にはステレオ上に小さなガラス細工の汽車のミニチュアがあり愉しませてくれる。岩波ブックセンターの柴田信さんご夫婦からいただいたものである。この小さな汽車を眺めていると部屋の狭さが気にならなくなるから不思議だ。
(あ)

今週の花

 今週の花はオリエンタルユリ、リオン、ダリア、スプレーマム、オミナエシ。リオンは薄桃色の花で、ケローネとかゴマノハグサなどともいいます。「リオン」は「亀」のギリシャ語。つぼみが亀の頭に似ているのがその理由だそうで、そう言われればどことなくそんな雰囲気があります。「女郎花」と書くオミナエシは秋の七草の一つで、小さな黄色い花がたくさん集まって出来ています。「男郎花」と書く「オトコエシ」という花もあるそうで、こちらの花は白くて、やはり小さい花がたくさん集まっています。無病息災を願って食べる「春の七草」はほとんどの人が言えると思いますが、「秋の七草」を言える人は少ないのではないでしょうか。秋の七草は眺めて楽しむものです。萩、葛、尾花(ススキ)、ナデシコ、オミナエシ、桔梗、藤袴。実は私も全部言えません。
(富)

No.151

一号線を北上せよ(講談社)
沢木耕太郎

 このところ「はずれ」の多かった著者の本だが、この紀行文を集成した短編ノンフィクションは久しぶりに読むことの快楽を思い出させてくれた。もっとも「はずれ」とはいっても、この著者の本は特別に面白いという先入観が強すぎるせいなのだが。訪ねた先はヴェトナム,パリ、アトランタ、ヨーロッパ各地だが、「象が飛んだ」と題されたホリフィールドとフォアマンのボクシング・ヘビー級タイトルマッチの観戦記が皮肉なことに秀逸だ。フォアマンの心理描写にまで踏み込んだ重層的で深みのあるスポーツルポで、やはり得意な分野というのは誰にでもあるというのがよくわかる。著者はめったに取材対象者を批判したり悪口雑言を吐かない人だが気になる(珍しい)フレーズもある。ヨーロッパに競輪の取材に行った折の話しだ。世界スプリント選手権で10連覇かをした中野選手は「自転車競技の盛んなヨーロッパでは英雄」といった「日本の神話」をうそっぽいといっている。ロードレースは確かに人気があるが競輪はマイナーで、世界で一番強いのは共産圏のアマチュアというのが常識で、そこを除外し大会のチャンピオンなど問題外というのである。これは目から鱗。やはりこの著者の本格的スポーツノンフィクションを年に一回は読みたい。

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