Vol.157 03年9月6日 週刊あんばい一本勝負 No.153


決算前に新聞広告

 8月も押し迫った30,31日両日に東北6県の県紙に全3段の広告を出しました。いつもと違うのは各県別に広告内容を変えず、まったく同じ版下で6県を通しました。これにはいろんな理由があるのですが、ひとつには新刊中心になりがちな広告ラインナップに変化を出して新しい読者を開拓したかったこと。本よりも「無明舎は東北各地を平等に等価に見ている」というアピールをしたかったこと、決算月なので税務上の意味もあり、売上効果を気にする必要がなかったこと、などが上げられます。同じく30日には朝日新聞一面(全国版)に38広告も打ちました。こちらのほうは逆に「地方色」のまったくない本4冊の新刊で構成しました。下世話な話ですが広告代は7紙分で2百万円をかるく越します。このもとを取るためには本を2000冊売らなければなりません。売れる訳ないよね。
(あ)

朝日の広告

東北6県の全3段広告

送られてきた本を紹介します

 立て続けに面白そうなご本を著者や版元からいただいたので紹介します。
 最近は、書店で買ったと思ったら、ご本人から本が送られてくるケースも多く、そうした場合は舎員や出入りの業者で興味をお持ちの方に差し上げることにしています。殿谷みな子著『着地点』(れんが書房新社)は父の言葉をキーワードに自分の内面へと降りていく旅の物語。前の短編集『鬼の腕』が面白かったので読むのが楽しみなのだが、殿谷さんは評論家の石川好さんの奥さん。ライターズネットワークの友人であり無明舎の著者でもある金丸弘美著『本物を伝える 日本のスローフード』(岩波アクティブ新書)は画像がないが(東京の事務所においてあるため)タイムリーな本、売れそうでうらやましい。装丁のきれいな岩松了の戯曲集『夏ホテル』は松本幸四郎一家のために書き下ろした芝居で、いま東京で上演中のはず。これは岩松さんでなく版元であるポット出版からいただいたもの。秋田市の「キリン・太陽」の物語を書いた池田まき子さんは、ふだんオーストラリア在住で、この方からは『アボリジニのむかしばなし』(新読書社)という本が届きました。将来、ウチの著者になるかもしれない方です。『みかん畑に帰りたかった』(小学館)は、北極点徒歩単独横断中に不慮の事故でなくなった河野兵市の物語だが、この本はいただいたものでなく買ったもの。つい最近、河野氏の妻である順子さんからお電話と資料をいただいたので、その参考として載せました。河野氏については順子さんが書かれた『絆』(河出書房新社)という本が出ています。家族は「河野の夢」を実現するため、友人たちの協力もえて「リーチング・ホーム」という冒険プロジェクトを実践中である。あれっ、こうやって並べると女性作家の本が多いですね。どうしてかなあ。
(あ)

「環境方針」の細部までご覧いただけます

 弊社ホームページのトップ画面タイトル部分の横に「環境方針」という小さなボタンがあります。ここをクリックすると環境方針を画像と活字であらわした小舎のポスターがでてきます。ISO認証取得の重要な宣伝活動の一環でもあるのですが、それだけでは「それがどうした!」といわれるので、このたび、その文章からさらに細部のデータ(カミや電気の使用量から、どのように実践しているかの画像まで)にアクセスできるように作り直しました。こんな細部まで公表するの、というぐらい正確なデータ満載です。ぜひご笑覧いただければ幸いです。
(あ)

今週の花

 今週の花は4種類。紫のリンドウ、臙脂色のスプレーマム、緑の濃淡が涼しげな観葉植物のサンデリー、ピンクのクルクマ。クルクマはショウガ科の植物で東南アジアが原産。カレーの香辛料などに使われるウコン(ターメリック)の仲間です。蓮に似た花は、いかにもアジアっぽい雰囲気があって惹きつけられます。ピンクの部分は花びらではなく苞(ほう)。本物の花はこの苞の根元に咲きます。試しにつぼみの部分を撮影してみました。
(富)

No.153

日本人は何を食べてきたか(青春出版社)
永山久夫

 この著者は東北地方ではお馴染みで、仙台がキー局になっているテレビのレギュラーや、たぶん秋田だけだろうが納豆のコマーシャルにも出演している有名人である。東北では食文化に詳しいちょび髭の愛嬌あるローカルタレントといったイメージで捉えられている(私もそう思っていた)のだが、本書を読むとそんなレベルの御仁でないのがすぐに判明する。生まれは福島、日本の伝統的な食文化「史」研究では第一人者である。とにかくおどろかされるのは、食への文献的なアプローチが半端でないほど徹底していて、古文書から中国の原典まで文献の典拠がしっかりしている。米の源流や調味料の文化史、はては「食べ方」の系譜までを実証的で学問的な裏づけを明確にしながら論を進める方法は説得力満点。食の系譜から読み解く日本人論といってもいい濃い内容だが、お説教くさくないのが好感を持てる。日常の暮らしの中で空気のような存在になっている普通食を、これほど「愛を込めて」研究し、平易な言葉で伝えようとしている努力はすさまじい。本書は、古代から現代まで日本人がどのようなものを食べてきたか、がテーマになっているのだが、食を通してこれまで知りえなかった日本の文化や歴史が見えてくる労作である。

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