Vol.162 03年10月11日 週刊あんばい一本勝負 No.158


今年も匂ってきました

 毎年稲刈りが終るこの時期になると、煙とほんのりとした香りが無明舎の周辺に漂ってきます。脱穀した籾殻などを田んぼで焼く作業が、あちこちで行われるためです。一般に「稲わら焼き」と言われていますが、良く見ると燃やされているのはほとんどが籾殻のようです。
 籾殻は中に入っている米を守るため大変腐りにくいという性質を持っています。そのため稲わらなどと一緒にして堆肥にしようとしても、まず腐ってくれません。昔はリンゴ箱に入れて緩衝材にしたり、長芋などの箱に入れて保温材したりして使い道があったのですが、近頃ではほとんど出番がないようです。そのため最近は大量に出た籾殻に手を焼いた農家の人が、田んぼで焼くようになったものです。ですから私たちの子供の頃はこの籾殻焼きの煙はありませんでした。

盛んに煙を吐く籾殻の山
 風のない火などはこの煙が平野や盆地にたまって視界が利かなくなったり、煙で喉が痛くなったりするため、いまでは野焼きは禁止されていますが、無明舎の奥には田んぼが多いので、どこかでこっそり焼く人がいるようです。なんとなく漂ってくるこの匂いをかぐと「ああ秋も深まってきたなあ」と毎年しみじみ感じます。
(鐙)

湯沢・思い出の場所へ

 自分が生まれ育った(高校まで)町に今も老親が健在なので湯沢へ出かけることが多くなった。私の住む秋田市から高速道で50分、老親に何があってもすぐに駆けつけられる距離と時間である。先週の土曜日も時間が出来たので行ってきた。なんとなく小中学校時代のグラウンドと通学路を見たくなり散歩をかねて小学校時代の市役所裏にあるグラウンドやよく遊んだ学校山(城址公園)に登り、そこから名所になった力水を通り中学校のあったグラウンドまで足を伸ばした。校舎は既になくなっているがグラウンドは当時のまま。野球少年だったので校舎よりグラウンドのほうが思い出は詰まっている。学校山は自然を生かした環境のままきれいに整備されていて気持ちよかった。ここからは町を一望できる。自分の生まれた場所を誉めるのは身びいきに過ぎるが、県内他町村に比べて湯沢の町並みは断然シンプルで垢抜けているように思う。年をとるとだんだんと好きになっていく町なのである。
(あ)

小学校のグラウンド跡

中学校のグラウンド跡

学校山から市街を一望

同級生たちの店

 中仙町は「ドンパン節」発祥の地として有名なところだが、ここにうまい蕎麦屋として評判の「若竹」が10月1日オープンした。県南各地を転々とした店主の藤原さんから「ここが最後の店になる。ぜひ来てほしい」と電話をもらい行ってきた。町の有力者の後ろ盾もあり破格の条件でオープンにこぎつけたという。蕎麦屋用に古い民家を改造した明るくて風情のある店で、かつ蕎麦打ちの腕も錆びておらず(実はこの半年間ブランクがあった)とてもおいしかった。藤原さんは高校時代の同窓生である。湯沢には、行くと必ず寄る中学の時同級生だった柳沢さんの「ラ・シュエット」という喫茶店がある。ここはコーヒーを飲ませる場所としては味も雰囲気も秋田県で間違いなく1,2だろう。最近も湯沢を訪れた作家の常盤新平や小嵐九十郎がこの店を絶賛していた。湯沢にはもうひとつ、中学の同級生が経営する店がある。夜の7時からオープンするカクテルバー「ポテンヒット」で、ここにもはじめて顔を出してきた。マスターの兼子さんは県バーテンダー協会の要職にある人で、今回はカウンターで場違いなハタギ(イナゴの佃煮)と濁り酒をご馳走になった。緊張しながらお店で飲食するのは真っ平な年になったので、こうしたリラックスできるお店をいくつ持っているかが、老後の明暗を分けるような気がする昨今である。
(あ)

若竹店内

ラ・シュエット

ホテンヒット

造園部長大活躍

 無明舎の事務所と倉庫周りには、樹木がびっしりと植わっています。イチョウ、ビックリグミ、モミジ、クロマツなどです。名前のわからない木もまじっていますが、無明舎が移ってきた20年以上前からここで育っている樹木たちです。
 夏には西日をさえぎる緑のカーテンとなり、秋はあざやかな紅葉が窓越しに映え、事務所で仕事をしている我々の心をなごませてくれます。ただ、定期的な剪定を欠かすと、事務所の窓が枝葉でふさがれ真っ暗になってしまいます。

様になる岩城造園部長
 そこで、普段は営業部長をしている岩城の出番です。着替えを済ませると、造園部長に早変わり。事務所をおおっている枝を、「そんなに切っていいの」と思うぐらいバンバン払って、あっという間にすっきりとした樹木にまとめました。さすが。
(七)

今週の花

 今週の花は紅葉雪柳、レッドアスター、オレンジのガーベラ、黄小菊、マトリカリア。紅葉雪柳はズバリ、紅葉した雪柳。春、真っ白な花を咲かせた雪柳も見ごたえ充分ですが、秋の赤い葉っぱも風情があります。さて、今回初耳のマトリカリアの和名は夏白菊。見た目はハーブのカモミールにソックリです。それもそのはず、ジャーマンカモミールはキク科マトリカリア属なのです。ちなみにカモミールには他にローマン種、ダイヤーズ種がありますが、これらはマトリカリア属ではありません。ちなみに、カモミールの側に植えた玉葱やキャベツは、おいしさが増したり収穫量が増えるといいます。このようにお互いに相性の良い植物同志を「コンパニオン・プランツ(共栄植物)」というそうです。無農薬栽培の手段の一つということでしょうか。
(富)

No.158

ドスコイ警備保障(アーティストハウス)
室積光

 『都立水商!』はハチャメチャだけれども痛快で後味のいい小説だった。2作目はどんなムチャクチャを考えてくれるか楽しみにしていたら、落ちこぼれ相撲取りたちが警備会社を作る話である。なるほど、これは前作よりリアリティがある。わくわくしながら読み始めたがリアリティがある分、逆になかなか物語の中に入っていくことが出来ない。これはどうしたことか。小説のリアリティと現実とはまた別物なのか。それが、3分の一を過ぎたあたりからストーリー展開に荒唐無稽さが出始めると、見事にムロズミワールドが動き出した。奇想天外さのほうにリアリティがある不思議な作家なのだ。ハラハラドキドキ、一挙に物語世界に放り込まれ、読者は身動きできなくなってしまう。後は一気呵成、エンデングまで余計なことを考える余裕を与えず楽しませてくれる。これは芝居の方法論に近い。蛇足になるが、本書は発売元が角川書店で、発行所とは別。このへんはちょっと事情がわからない。角川はこの本をどう評価したのだろうか。編集者としてだけでなく出版経営者のはしくれとして気になるところだが、業界外の人にとっては関係ないか。

このページの初めに戻る↑


backnumber
●vol.158 9月13日号  ●vol.159 9月20日号  ●vol.160 9月27日号  ●vol.161 10月4日号 
上記以前の号はアドレス欄のURLの数字部分を直接ご変更下さい。

Topへ