Vol.167 03年11月15日 | 週刊あんばい一本勝負 No.163 |
博物館めぐり週間 | |
11月の始めにいくつかの博物館に行く機会が重なり、それぞれに楽しんできました。まず最初に行ったのは青森市にある青森県立郷土館です。ここの展示場は古い銀行の本店をリニューアルしたもので、催事は「蝦夷錦と北方交易」。江戸時代に大陸からアイヌの人々を介して松前藩(北海道)や、本州に渡ってきた蝦夷錦という清王朝の官服を中心にした展示です。開館30周年を記念したというだけあって力の入った催しで、北海道各地や青森県内にある貴重な蝦夷錦やアイヌの人々を描いた絵が集められ見ごたえありました。 その日の午後は、青森市の青森近代文学館の「寺山修司展」で、寺山の没後20年という節目にあわせて催されたものです。同じ青森県三沢市にある「寺山修司記念館」が、寺山の世界をダイナミックな展示で再現していますが、そのことを思いながら見てしまったので、物足りないという印象が残りました。常設展示館と文学館での特別展を比べること自体、無理があることなので、しょうがないことなのでしょう。 | 郷土館の図録です。 |
その翌週は東京で印刷博物館に足を運んでみました。凸版印刷がつくった博物館で、舎主のあんばいが絶賛していたので見に行ったものです。凸版印刷のモダンな高層ビルの一階と地下に博物館があり、1階はライブラリーや特別展用のスペースで、開催していたのは「美しいドイツの本展」でした。地下のフロアは、世界の印刷文化の歴史を見せてくれる壁面展示に始まり、活字のつくり方、さまざまな刷りを見せてくれるスペースなどが、素晴らしい展示システムで展開されています。それぞれのコーナーにはパソコンが設置され、さらに詳しく見ることもできるようになっています。展示内容、デザイン、雰囲気どれをとっても最上のレベルで、丁寧に見ていたらあっという間に半日が経っていました。
(鐙) |
「一行樹」という料理屋さん | |
11月も半ばを過ぎたが、この2週間のうちに角館にある「一行樹」(かずゆき)という古い旅館を改造した料理屋さんに2度も行った。ほとんど外出(外食)しない私にはきわめて異例の事態だが、それもこれも初めて食べたここのお料理があまりに美味しく、「あれはもしかすると夢かも」との不安から、2度目はカミさんを同行して証人になってもらった。夢ではなかった。1万円のお任せコースしかない、40歳になったばかりの夫婦2人だけで切り盛りする小体な店だが、出てくる料理は素材は日本料理、食器や調理法は西洋料理、日本酒よりはワインと相性がいいヘルシーな和食である。うまい、まずいという以前にほとんど出てくる料理が生まれて初めて味わう味で、料理人の想像力にただただショックを受けた。
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実は、ここを切り盛りする女主人・由樹さんは私の隣の家のお嬢さんで高校生の時から顔なじみである。だからなんとなく行きにくくて、こうして誉めるのも身びいきのようで遠慮していたのだが、はっきりいってお店はそんなスケールで計れるレベルではなかった。全国の高級和食店を食べ歩いたことなどないから、とぼしい経験と想像力で比較しているだけなのだが、京都の草喰料理「なかひがし」やスペインの「エル・ブリ」といった料理屋さんと同じ流れに位置する「創作料理」なのかもしれない。2度行って同じ皿は1品のみ。近々もう1度行く予定。1ヶ月間に同じ店に3回行くというのは初めての経験である。 (あ) | この2人でお店を切り盛 |
藤庄印刷の渡辺さん | |
カラーものの印刷をお願いしている藤庄印刷秋田営業所のウチの担当者は元気のいい20代の女性・渡辺あきほさん。玄関で「こんにちは、藤庄です!」と大きな声で入ってくるので、その声で緩んでいた事務所の空気が一瞬引き締まる。
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入社したての頃は、失礼ながら「御用聞き」の域をでない仕事ぶりだったが、ここ数ヶ月で「化け」つつある。わざわざ所長が来なくても自分の判断で決定し、編集上の問題や印刷現場へのクレームも、ちゃんと一人でこなせるようになった。若い女性(それも他社の)に仕事を一生懸命教えても、すぐに辞められるので付かず離れずの関係が一番、という偏見がこちら側にもあったのだが、どうやら渡辺さんは厳しい職場の荒波を乗り越えてプロとしての自覚が芽生えつつあるようだ。ひとつのことに秀でた若い女性というのは見ていても気持ちがいいものだから、ぜひ頑張って欲しいものだ。 (あ) | 渡辺さん |
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