Vol.172 03年12月20日 週刊あんばい一本勝負 No.168


盛況だった講演会

 2週間ほど前、あんばいがこの「週間ニュース」のコーナーで紹介した、秋田大学定期講演会「秋田再発見! 秋田大学発」の第1回講演会が12月13日(土)、秋田大学図書館で開催されました。講師が渡辺英夫先生と佐藤稔先生で、どちらも無明舎出版の著者でもあり、講演も興味深い内容だったので久し振りに秋田大学構内に足を運んでみました。会場として秋田大学付属図書館内でも一番大きな部屋を用意したそうですが、始まる15分ほど前に行ってみたらもう満員に近い状態になっていて、驚かされてしまいました。
 大学では入りきれない人たちのために急遽別室を用意して、ビデオを通して同時中継するという粋な対応をしたため、特に不満は出なかったようです。渡辺先生が「北前船と秋田」、佐藤先生が「秋田のことば」をテーマに講演しましたが、どちらの話しもわかりやすく、かつ面白かったものですから、終ると同時にあちこちから「この2人の先生の話しをもっと聞きたい」という声が出たほどです。特に佐藤先生がネイティブな秋田弁を駆使して事例をしゃべってみせたため、会場は笑いの渦に包まれていました。

渡辺先生の話しを聞きながら
熱心にメモをとる聴取者たち
 あんばいがこの講演会の立ち上げから運営会議に出席していたこともあり、終ってから図書館長の金児紘征先生とちょっと話しをしたのですが、「いやー、こんなに市民から好評を得るとは思わなかったし、講演内容も面白かった。」と大成功を多いに喜んでいました。講師を外部の人に頼らず、秋田大学内の人脈で行こうというのが功を奏したのだと思います。約200人の聴衆も皆、満足げな顔をして家路についていました。
(鐙)

東京で考えたこと

 神楽坂のいりくんだ小路に「大〆」という創業明治43年の大阪寿司の店がある。友人をたまに連れて行くことがあるのだが、おいしいのは無論、接客や落ち着いた雰囲気が気分いいお店である。寿司屋なのに店内はアールデコ風、アンティークな棚にワインが所狭しと置かれ、禁煙である。午後4時には売り切れ閉店、カードはきかないしカウンターもない。客席とガラスで仕切られたパン厨房のようなところで白衣を着た人たちが忙しそうに寿司を作っている。ここのメニューには「調子に乗って少し手を広げすぎたので初心にかえって店を小さくするから難しい注文には答えかねます」といった内容の「但し書き」が添えられている。全国にあまたの寿司屋があるが、ここの寿司はここでしか食べられない。その自信が言わせるセリフなのだろうが、生魚を酢飯の上にのせただけで高い金を取る慣習が市民権を得ているこの国で、それと正反対のやり方で孤塁を守る姿はりりしくて素敵だ。飯田橋の駅前ではホームレスの人が雑誌を売っている。「ビッグイシュー日本版」というタブロイド版30ページほどの雑誌である。ホームレスに収入を得る機会を提供する事業としてロンドンのジョン・バードという人が創立したものだが、新聞でそのことは知ってはいたが買うのは初めて。最初に販売者(ホームレス)は無料でこの雑誌10冊をもらい、その売り上げを元にして以後は1冊90円で仕入れて200円で売り、110円を自分の収入にしながら住まいを得る…という仕組みなのだが、ホームレスの仕事を作り自立を応援するために「出版」という手段が選ばれたことがうれしい。出版や活字文化にはまだまだ未来がある。まだまだ私が知らない可能性の芽がいくつも眠っている。
(あ)
大〆のメニューとホームレス自立のための雑誌

ヴィデオ映画は大型画面で

 東京の事務所暮らしで唯一自慢できるのは44インチの大型画面のプラズマテレビ。引っ越してまだ1年もたたないので余裕がなく、せいぜいニュース番組を見るぐらいだったのですが、ようやく少し余裕がでてきて、近所のヴィデオ屋に顔を出せるようになり、大きな出費の元を取れそうな態勢になりました。大型画面で見る映画は憧れだったのですが、やっぱり癖になりそうなほど迫力満点です。ヴィデオ屋も秋田とはちょっと違い映画を国別に分類していたり、マイナーな監督作品もちゃんと置いてあったり、狭いのには閉口しますすが、さすがと思わせる商品知識を持っているので助かります。もっぱら小生は好きなウディ・アレンと小津安二郎専門ですが、この2監督の作品は繰り返し何回も見ているので今回はDVD(アレンの新作「スコルピオンの恋まじない」)を奮発して買ってしまいました。アレンの作品では「結婚記念日」が大好きなのですが、この「スコルピオン」もそれに負けず劣らずの傑作(私の好みのなかで)です。これも大画面の効果でしょうか。何回も見たものもたぶんこの大型画面で見直すとまた違った感慨があるかもしれません。楽しみはつきません。
(あ)
これが大型テレビとアレンの新作DVD

今週の花

 今週の花はポピー、黄色のバラ、菜の花、ヒペリカム、ききょうらん。ポピーは色とりどりのものがあったのですが、もともと日持ちが悪いうえに暖房の効いた室内に置いていたため2〜3日でダメになってしまいました。暖房のせいで他の花もかなり乾燥ぎみです。ヒペリカムはオトギリソウ科。夏に黄色い花が咲きますが、主に鑑賞用となるのは花後の赤い実。一年中出回っていますが、今の時期ならクリスマスムードを盛り上げるのに役立ってくれそうです。花じゃないため特定の季節のイメージがなく、どんな時期にもマッチしてとても便利な花材です。
(富)

No.168

ナンバ走り(光文社新書)
矢野・金田・織田

 去年あたりから突然ブームの兆しを見せた(プロ野球・桑田投手の復活劇とともにクローズアップされた)古武術研究家・甲野善紀氏の著作や理論を、教育現場やコーチング理論の立場から実践し、科学的な最新スポーツ理論とあわせてわかりやすく解説した本である。甲野の本は何冊か読んだが、彼のいう「井桁崩し」というメーンになる理論が今一つよくわからなかったが、本書のおかげでよく理解できた。甲野が提唱する「捻らず、うねらず、ふんばらず」という基本動作を、うまく応用して実践に取り入れ成功したのが桑田投手であり、陸上の末讀だが、無意識のうちに実践している人物としてはイチローやマイケル・ジョーダンも挙げられると言う。本書では東京国立の桐朋高校のバスケットボール部で実際にこの甲野の古武術的身体操作をトレーニングにとりいれ、「ナンバ」といわれる独特の走行や肩甲骨の押し出しだけによるロングパスを試合で実践し、その効果と進歩を証明してきた。高校生クラブの実践記録といった側面もあり、それが説得力をあたえている。なぜスポーツの動作のなかで「うねり」や「ため」が良くないのか、走る、打つ、殴る、あたる、投げる、抜く、とぶ、立つ…といった動作別に章立てして解説している。こういう本好きを根性主義の高校野球の監督あたりが読むようになれば日本もいい国なのになあ。

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