Vol.174 04年1月3日 | 週刊あんばい一本勝負 No.170 |
新年明けましておめでとうございます | |
新年明けましておめでとうございます。 今年も変わらず「週刊ニュース」、よろしくお引き立てのほどお願い申し上げます。 新年だからといって特別更新日が変わったり、特集を組むといった器用なことはできませんが、ワンパターン、時代遅れ、ロートル&ローカルHPの持続と律儀さだけを武器に、今しばらくこのコーナーを続けていきたいと思っております。 昨年の反省や今年の抱負などに関してはトピックスをお読みいただけるとありがたいのですが、まあ、どうにか2003年も右往左往、東奔西走しながら切り抜け、いろんな意味でターニングポイントになる可能性の強い2004年をほろ酔い気分で迎えました。それでいいのか自分! と半畳をいれたい気分も重々ですが、まあ、そんな硬いことを言わずに、とこれまた色めく自分自身をとりなして、ダラダラと今年もこのコーナーは続いていく……予定です。 新年ですから、個人的なことよりも仕事のことを書いておきたいと思います。 いきなりで申し訳ないのですが、今年も書店、出版社、取次の倒産は静かに続くのは間違いないと思います。特に書店と出版社は、もう何年も前から言っているのですが今あるものの5分の一ぐらいまで減少するはずです(10年前に5年後に書店は半分になると予言したのですが)。なんとなくこちらの予想が外れて「持ち直し」傾向にみえるのは見せ掛けで、政府の低金利政策やアンチ不況キャンペーンが一時的な「あげぞこ」しているだけです。娯楽の多様化やIT(デジタル)化によるペーパーレス志向、消費意識の変化は、印刷物の限界性をはっきりと証明しつつあると思います。いまだに業界の一部では「景気が持ち直せば」とか「活字文化は普遍」云々の、強気というか無知というかオポチュニストが多いのですが、現場で仕事をしている立場として、この本の売れなさ加減は半端ではありません。10年前なら1万部は硬いと思われた本が3千部でぴたりと売れ行きが止まってしまいます。30年の経験からいうのですから信じてください。活字文化が消えることはないでしょうが、印刷文化の未来はけっして明るくはありません。これは間違いないと思います。 その危機感を私はよく喫茶店の存在にたとえて説明しています。 私どもが学生のころ、この人口30万の地方都市に書店の数倍もの喫茶店が存在しました。根無し草の若者には絶対不可欠の、本屋と双璧のそれは街のサロンのような存在でした。それほど重要な位置を占めていた喫茶店が今はほとんど見かけません。高級ホテルに行くか巨大企業のロビーにでも行かなければ「喫茶店」にはお目にかかれなくなってしまったのです。「ドトールやスターバックスがあるでしょう」と大都市の人はいうかもしれませんが、それは単なる無知というものです。30万人の人口を有する秋田市ですらスターバックスは1軒しかない、という現実を知らないのです。あんなもんは全国区ではないのです。蛇足ですが、スターバックスが進出してくれるかどうかで、その地域の「田舎度」を若者たちは判断しているのだそうです。 書店や出版社は30年前の喫茶店と同じような運命をたどるのではないか、という危惧が私たちには以前から強くありました。その問題意識は今も変わりません。書店は喫茶店と同じ運命をたどるのではないか、そのことが今、現実になろうとしているのだと思います。 このような時代に「活字文化」に身をおき、それを生計(たつき)にする人間に何ができ、何ができないのか、そのことを考え、突き詰め、実践し、いくばくかの答えのおこぼれをもらう「年」に今年はしたいと思っています。おめでたい場で後ろ向きな発言ばかりですみません。これが実感ですのでご海容ください。 厳しい年になりそうですが、どうぞ今年も変わらぬご鞭撻をお願い申し上げます。 敬具 (安倍 甲)
東京事務所からみた元旦の風景 |
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