Vol.179 04年2月7日 週刊あんばい一本勝負 No.175


2月は忙しくなりそう銀世界

 あいかわらず外は大荒れで、しんしんと時には猛然と雪が降り続ける日がつづいています。1月はほとんど新刊もなくヒマだったのですが、2月にはいるとがぜん忙しくなってきました。1月のヒマは昨年中に無理やり仕事を片づけてしまったためで予定通りなのですが、仕事はやっぱり忙しくないと緊張感を維持するのが難しくなりますね。ちなみに2月中に出る本は次の通りです。
 2月5日  『歌枕とうほく紀行』
 2月20日 『宮沢賢治「春と修羅 第2集」の風景』
 2月25日 『入門・東大宇宙線研究所』
 2月29日 『東北の峠歩き』
 外は吹雪で大荒れ、中は忙しく立ち振る舞う人たちでホット、というのが北国の仕事場には似合っているようです。もう三十年近くこんなドタバタを繰り返しているのですが、それでも1年先は真っ暗闇、よく生き残ってきたなあ、と時々自分を褒めてやりたいこともありますが、そんな自己陶酔も資金繰りの日(10日にいっぺん支払いを月3等分して振り込んでおく仕組みです)がくると、どこか遠くに飛んでいってしまいます。とにもかくにもゆっくりと今年も動き始めました。マイペースで行きたいと思っています。
(あ)

応接室から見える銀世界は寒そう

風邪とコンビニと方言

 2月に入ったとたん体調を崩してしまいました。私の場合は調子に乗りすぎてスポーツクラブに通いつめ挙句の果てに過労でダウン。幸いなことに大事に至る前に「これは休んでおいたほうが後々大事にいたらないな」と珍しく自制がきいて散歩も晩酌もやめて部屋でおとなしくしていました。それでも1週間あまり体調はもとに戻らず、これはあきらかによる年波のせいでしょう。富山も風邪で3日間休みました。4日目に出舎、まだ本当ではないようです。家にずっといて発見したのはコンビニの便利さです。さして食欲はなかったのですが身体が熱っぽいと水分や甘いものがほしくなり、近所のコンビニによく行きました(普段はほとんど行かない)。甘酒や鍋焼きうどん、グレープフルーツ・ジュースにカリントウ…もう何でもそろうんですね。おでんもと思ったのですが、おでんは味の濃い関西の「関東だき」(ややこしい)のほうが好きなので、関西系料理屋「和食みなみ」のおでん以外食べる気がしません。
 コンビニのおやつを食べながらビデオ映画と本を読んで1週間が過ぎました。ビデオは沖縄を舞台にした『ホテル・ハイビスカス』や原作がマンガの『ピンポン』といった明るい邦画中心、本は秋田の院内銀山を舞台にした西木正明『養安先生、呼ばれ!』(恒文社)や沢木耕太郎の新刊。ベタな沖縄や秋田の方言にひかれたのは身体が弱っていることと関係あるのかも知れんません。ま、いい休養にはなりました。
(あ)

近所のコンビニで

今週の花

 今週の花は白いカラー、赤いガーベラ、紫のチース、菜の花。それに加えてまだ元気で残っているのが若松。ギリシャ神話では人が花に姿をかえられる話がありますが、実は松に変えられた人もいるのです。ある女神が羊飼いに恋をします。しかし、羊飼いには恋人がいたので、その女神には見向きもしません。悔しさのあまり女神は羊飼いを松の木に変えてしまうのですが、すぐに後悔し、その松の木の下で泣き暮らしたという話です。この神話を知った時、なぜマツなのか、どのマツなのかが不思議でならなかったのですが、まだこの疑問は解明されていません。
(富)

No.175

あかん(小学館文庫)
山本甲士

 大阪の裏街をちょろちょろ動き回っている「ヤクザにもなれないボンクラ達」を主人公にした連作短編集。「たたき」「兄貴」「ヒットマン」「身代わり」かまし」「おもり」という6篇の作品の主人公はそれぞれ別で独立しているのだが、「たたき」の脇役のチンピラが「おもり」では主人公として登場したり、その描く世界が根っこのところで通底しているから長編小説としても十分読み応えがある。大阪弁の面白さや、独特の風土、恐ろしいヤクザの世界も「情けない」「ユーモラス」「ほのぼの優しい」切り口で提示されると、とんでもなくチンピラたちがいとおしく魅力的である。ふだんは暴力的なシーンが出てくる小説はパスなのだが、この本は例外。本当に面白いし、こんな書き手がいたことを知らなかったのは不覚。2003年、わが読書ベストスリーにはいる傑作である。ちなみに後の2冊は、沢木耕太郎『無名』、川上健一『翼よ、いつまでも』である。読み終わって、もっと続けて欲しい、連作をシリーズ化するべきだ、と出版社に電話を入れたくなったほど。インターネットで著者のことを調べるとかなりの著作がある。とりあえず同じ版元から出ている『かび』を買った。大企業相手に主婦が一人で戦う物語だという。早く読みたい。

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